〈24〉ロマン派の歓喜と現実派の動揺
ジャックマンことミカリの活躍、それは紛れもなくロマン派に歓喜をもたらした。マクシミリアンたちもミカリの予想以上の活躍に沸いていた。ミカリの素質を疑っていたアルフォンソまでもが手放しで喜んだ。
「まさか、ここまでやってくれるとはな。正直驚いたよ」
「アルフォンソはミカリの能力を疑っていたからな」と、マティアスがいうと、それに反論するかのようにアルフォンソがいった。
「お前だって、半信半疑だったんじゃないか?」
「まぁな」
アルフォンソは笑みをこぼしながら、
「奴らの慌てふためく顔が目に浮かぶわ」
マティアスも笑いながら、
「このままいったら、あいつらが我々を一掃するのではなく、我々があいつらを一掃するのではないか」
それを引き締めるかのようにエルンストが言った。
「しかし、そう浮かれてばかりはいられんぞ。奴らがこのまま黙っていると思うか?必ずミカリを潰しにかかる」
それにマクシミリアンが補足するかのように言った。
「その通りだ。確かにここまでは予想以上の出来だ。出来過ぎといってもいい。しかし、奴らはまだ何もしてきてない。何らかの手を必ず打ってくるはずだ」
アルフォンソが、警戒するように言った。
「グラシアーノか?」
「おそらく」と、マクシミリアンが締めくくった。
一方、現実派の間では、結びつけたカップルが次から次へと破綻していくことに動揺が広がりつつあった。そして、なぜ破綻していくのか、その原因さえも分かっていなかった。しかし、モーザックの調査によって、その原因が分かり、サンタローザはモーザックの報告を受けていた。
「では、ミカリはこのキュートピアから堕天したというのか?」
「はい」
「堕天して我々の行動を妨げているといいたいのか?」
「はい、私の調査では、どうやらそのようです。ミカリはジャックマンと名乗って次から次へと我々が結びつけた恋を破壊しています」
「堕天したのなら、奴はもうキューピッドではない。何も持っていないはずだ。それなのになぜ破壊出来る?」
「ミカリは何も持たずとも、眼差しだけで、キューピッドの矢の効力を破壊し、そして、女を落としていくのです」
「それを奴は、自分のもてる力だけでやっているとでも言いたいのか?」
「そうとしか考えられません」
モーザックは動揺を押し殺してそう答えた。それを聞いたサンタローザはしばらく沈黙した。そして、何かを思い出すかのように、思わずほくそ笑んだ。
「なるほど。ミカリを堕天させるとはな。こういう使い方もあったということか。ロマン派が期待していただけのことはあったというわけだな」
サンタローザは笑った。そして、モーザックが言った。
「これはロマン派がアルバリヨークを証人喚問にかけたことへの報復かと」
「間違いないな」
「いかがなさいますか?みなが動揺しております」
「ロマン派に宣戦布告したのは我々の方だ。奴らとて一掃されるのを黙って見ているはずがない」
「しかし、ミカリをこのまま野放しにするわけには」
「そう、奴をこのまま野放しにするわけにはいかん」
「では」と、モーザックの顔が明るくなる。
「グラシアーノを使う。それで今度こそロマン派の希望も悪あがきも、全てお終いにする。そして、奴らの息の根を止める」
サンタローザは、冷たい表情を浮かべながら断言した。




