〈19〉ヨークとアルベルトたち同期。
ミカリは、キュートピアで『掟破りのミカリ』『翼のないキューピッド』と揶揄されていた。そんなミカリの同期たちは、そんなミカリの存在を恥じていた。
ミカリの同期は、ヨーク、アルベルト、フランツ、セイベルである。ミカリを失った今、四人はミカリのことについて話していた。
「同期から掟破りが出るなんて、最悪だ」とフランツが嘆いた。
それにセイベルが続いた。
「しかも、ミカリだもんなぁ。考えられないよ。ロビアン先生だって一目置いていたんだぜ」
フランツが言った。
「いい気になっていたのさ。初うちなんだから何も考えずに適当に撃てばいいんだよ、撃てば。似合いの者同士の人間をくっつけておけば、何の問題も起きなかったんだ。それを『闇が見えた』とか言ってカッコつけちゃってさ。自業自得だよ。なぁ~、ヨーク」
フランツはヨークに冷ややかな目線を送った。ヨークは、ずっと沈黙していた。いや、ヨークは悔しかった。なぜならヨークはミカリの大の親友で、ミカリと同期であることを誇りに思い、憧れさえ感じていたのだ。そして、いつかミカリがキュートピアの先導師になったとき、自分がその補佐役として役に立てれば、という夢を抱いていたのだ。フランツはそれを知っていてヨークを挑発したのだ。
ヨークは、小声で反論した。
「ミカリは違う。ミカリは僕たちとは違うんだ」
フランツが言った。
「そうだよ、翼をもがれたんだから」
フランツとセイベルは顔を見合わせて笑った。
その笑い声をかき消すような大きな声でヨークがしゃべった。
「そうじゃない!ミカリは僕たちとは比べものにならないほどの才能を持っているんだ!才能があったからミカリは、ミカリは、」
フランツがヨークに迫った。
「どうした?ミカリはどうしたんだ?ヨーク?」
セイベルが後に続いた。
「才能があったから、掟を破って翼をもがれたのか?」
フランツとセイベルはまた笑った。ヨークは悔しかった。悔しさのあまり何も言い返せなかった。そして、笑い終わった後にフランツが皮肉たっぷりにミカリを中傷した。
「全く何が未来が見える、だよ!自分の未来は見えなかったのかね」
セイベルが続けざまに言った。
「ミカリも分相応の恋を作っていればよかったんだよ。そうすれば翼をもがれることもなかったのに」
ヨークはその言葉を聞いて吐き捨てるようにぼやいた。
「分相応の恋を作って、何が愛の神キューピッドだ」
するとセイベルがヨークに噛みついてきた。
「なんだと!」
ヨークは、はっきり言った。
「そんなありきたりの恋をわざわざキューピッドが作る必要があるのか?」
「なに!」と、セイベルは怒りを露わにした。
すると、さっきからずっと沈黙していたアルベルトがヨークに詰め寄った。
「なら、お前はありきたりの恋ではなく、意義ある恋を作ったのか?そういう初うちをしたのか?」
ヨークは答えられなかった。なぜなら、ヨークにはミカリのように人を見抜く能力もなく、また、初うちのプレッシャーから似合いの者同士を結びつけたからだ。
アルベルトは鼻で笑い、
「どうやら、たいした矢を撃っていないようだな」
ヨークは沈黙したまま。それに追い打ちをかけるようにアルベルトが言った。
「ヨーク、そんなにミカリが好きなら、お前の翼をミカリにくれてやったらどうだ?」
ヨークは、俯き、なにも言えなくなった。
それを聞いたフランツが、アルベルトを称えた。
「さすがはアルベルト。何事も的確に捉える。サンタローザ先導師が期待するのも無理はない」
しかし、アルベルトはいたって冷静だった。いや、アルベルトは頭の中で違うことを思っていた。
〈ロビアン先生がいけないんだ。先生がミカリばかり見ていなければ・・・〉
アルベルトはロビアンの期待を一心に受けていたミカリに嫉妬していたのだった。




