〈17〉勝ち誇る現実派
モーザックは、サンタローザの前に現れ、一礼してから裁きの結果の報告をした。
「ミカリは、翼を捥がれました」
サンタローザは、それを目を閉じたまま沈黙して聞いた。モーザックはサンタローザの顔を伺いながらサンタローザに問うた。
「よろしいのですか?生かしておいても」
サンタローザは静かに目を開け、そして、口を開いた。
「モーザック、何を恐れる?そもそもミカリは、ロマン派を一掃するための生贄のようなものだ。恐れることはない。それに我々にはグラシアーノがいる。グラシアーノの報告では、赤子の手をひねるようなもので造作もないことだったらしい。まるで相手にならん。いや、このキュートピアでグラシアーノに勝てるものがいるか」
「確かに」
「あとはこの機に乗じて一気にロマン派に攻勢をしかける」
サンタローザの頭の中には、既に次なる一手を考えていた。
「では、ミカリはこのまま放っておいてよろしいのですか?ミカリにはまだキューピッドとして生きる道が残されていますが?」
サンタローザは笑いながら、
「モーザック。お前は随分ミカリを高く買っているのだな。まるでロマン派のように」
「いえ、そういうわけでは」
「ミカリなど捨て置け。それよりミカリを見せしめに、もっと現実思想をキューピッドたちに植え付けろ」
「はい」
「それに、それにだ。もし、ミカリが邪魔になればグラシアーノに葬らせればいい」
モーザックは、一礼して下がっていった。
それと入れ替わるように、サンタローザの背後からミカリと同期のアルベルトが現れ、サンタローザの脇に立った。
サンタローザはアルベルトに言った。
「人間界を良くしようなんて思う必要はない。人の幸せなど我々にはどうでもいいこと。ただ似合いの者同士を結びつけていればそれでいい。そうすれば矢を撃つのに迷うことなどない」
「はい」
「お前の友達は、ロマン派にそそのかされ、変な夢を見たからこんな目に遭うんだ」
「ミカリは友達ではありません」
「そうかそうか」
サンタローザは思わず微笑んだ。そして、サンタローザはアルベルトの髪を撫でながら、
「アルベルト。お前はいずれ若いものたちを率いていかなければいけない。よいか?」
「はい、先導師」
アルベルトは伏し目がちである。




