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〈12〉意思確認

海斗とさやかは、目黒駅の改札口で待ち合わせをして、ホテルのバーに行った。そのホテルは海斗が良く使うホテルだ。バーには何人かのカップルが寄り添うようにして静かに話しをしていた。その中に海斗とさやかも溶け込んでいた。二人はバーカウンターに座り、眼下に広がるネオンの明かりを眺めながら話しをしていた。

「メールありがとう。なんか気使わせちゃったみたいでさ」

さやかは首を振り、

「こっちこそ、会社の人と口論してまで助けてくれて、ほんと悪いなぁと思って」

「そんなこと、別に気使わなくていいのに。さやかちゃんって、ほんと優しいんだね」

さやかは頬を赤らめ、首を振り、そして、照れを誤魔化すかのように、目の前のカクテルグラスをいじくり始めた。海斗はそんなさやかの横顔を見ながら、顔を寄せて甘えるように囁いた。

「なんか、もっとさやかちゃんと一緒にいたくてさ。そう思ったら無性に会いたくなっちゃって。ムリいってごめんね」

さやかは相変わらずカクテルグラスをいじくりながら首を振ってみせた。さやかは好きな人を前にして緊張しているのだ。それは海斗にも重々分かっていた。だから、遠回りする必要はない、単刀直入に言えばいいと思い、海斗はおでこをさやかのこめかみにこすりつけて、じゃれ合うようにして、そっと囁いた。

「さやかちゃん。ほんと、さやかちゃんのことが好きだよ。だから今日はさやかちゃんの傍を離れないからね」

海斗はカクテルグラスをいじっているさやかの手の甲に手を合わせた。さやかのカクテルグラスをいじる手が止まった。さやかの手がわなないていた。しかし、さやか以上にわなないているものがいた。ミカリである。

ミカリは人間になりすまして、バーの片隅から一人、二人の後ろ姿を見ていたのだ。そして、ミカリは携帯電話を取り出し、海斗のメル友になりすました。なりすましはキューピッドのもつ特殊能力である。そして、ミカリは海斗にメールを送った。それはミカリの海斗への意思確認でもあった。海斗はバイブレーターで振動している携帯電話をポケットから取り出して、さやかの背中に手を回して寄り添いながら、ミカリから送信されてきたメールを見た。

[さやかちゃんとは、どうなった?]

海斗は片手でさやかの腰を抱き、そして、携帯電話をもっている手で、ミカリにメールを打って送信した。

[さやか、今、傍にいるよ]

[え、マジ!じゃぁ、冴子さんはどうなるんだよ]

[冴子?もういいよ]

[じゃぁ、さやかちゃんと本気で付き合うのか?]

[さぁ、そこまでは考えてないな。とりあえず今は、メチャメチャ疲れたからさ、彼女にたっぷり、癒してもらうことにするよ。せっかく合コンで親しくなって、意気投合したからさ、今度はホテルのベッドの上で結合するよ(笑)]

ミカリは、思わず頭の中が真っ白になって目眩を感じた。そして意識が遠のいていき、ミカリはそのままイスから崩れ落ちると同時にキューピッドに戻って宙に浮いた。

海斗は携帯電話をポケットにしまって、さやかに呟いた。

「部屋とってあるんだ。行こうか」

 さやかは小さく頷いた。

二人は、バーを出て、海斗が予約してある部屋へと向かいはじめた。

ミカリも動揺しながらも、キューピッドとなってフラフラと右往左往飛びながら、二人の跡を追った。そして思った。

〈どうしよう。このままでは、さやかがもてあそばれてしまう。一体どうすればいいんだ。辺り構わず海斗以外の男に金の矢を撃ってさやかを好きにすればいいのか?〉

しかし、あいにく通路には海斗とさやかの二人しかいなかった。

〈どうすればいいんだ?〉

そうこうしているうちに、海斗のとった部屋につき、そして、二人は部屋の中へ入っていった。

ミカリも二人の入った部屋の中にフラフラ飛びながらドアを通り抜けて入っていった。



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