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第八章 奪われた自由①

目を覚ました時。


ユウの視界はぼやけていた。


光が滲む。

焦点が合わない。


天井のライトが白く揺れている。

強い光が目に刺さる。


ここがどこなのか、すぐには分からなかった。


体が動かない。

手足が重い。


まるで体が自分のものではないようだった。


「……ここは」


声がかすれる。

喉が乾いていた。


その瞬間。


横から声が聞こえた。


「起きたか」


低く、冷たい声。


ユウはゆっくり顔を向ける。


そこに立っていたのは――


Dr.クロードだった。


白衣を着た男。

整った髪。

冷たい目。


クロードは瞬き一つせずにユウを見ていた。


その表情には、感情の揺れがほとんどない。

まるで人形のようだった。


ユウは自分の体を見る。


胸、腕、足。


すべてがベルトで固定されている。


金属の台。


まるで手術台のような設備だった。


クロードは淡々と言った。


「逃亡は失敗だ」


その言葉と同時に――


ユウの記憶が一気に戻る。


雪の夜。

研究所を抜け出したこと。

森を走ったこと。

街の灯り。

女性の家。


そして――


車。

殴られた衝撃。

ソウタの叫び声。

タケルが倒れる音。


ユウは歯を食いしばった。


「……仲間は」


クロードは興味なさそうに答えた。


「生きている」

「今のところは」


その言葉を聞いた瞬間。


胸の奥の緊張が、ほんの少しだけ緩んだ。


だが――


次の言葉で空気が凍る。


「だが」


クロードは静かに言った。


「罰は必要だ」


その声には、怒りも苛立ちもない。

ただの事実を述べるような口調だった。


クロードは研究員たちに目を向ける。


「準備しろ」


白衣の研究員が近づく。


その手には注射器があった。


中には――


黒い液体。


不気味な色だった。


ユウの背筋が冷える。


研究員が腕を掴む。


ユウは体をよじった。


「やめろ!!」


だが拘束具はびくともしない。


逃げられない。


プスッ。


針が腕に刺さった。


冷たい感触。


黒い液体が体内に流れ込む。


数秒。


何も起きない。


だが――


その直後。


体の奥で何かが爆発した。


「ぐあああああ!!」


激痛。


骨の奥が燃える。

血が沸騰するような熱。


皮膚の下で何かが暴れている。


ミシ……


小さな音がした。


ユウの腕の皮膚が――


ゆっくりと


灰色に変わっていく。


石の色だった。


皮膚の質感も変わる。

硬い。

冷たい。


指が動かない。


研究員が声を上げた。


「石化反応確認!」

「進行率40%!」


クロードは腕を組み、興味深そうに観察している。


「やはり適合する」


ユウは必死に呼吸する。


肺が焼けるように熱い。


視界が揺れる。


意識が遠のきそうだった。


その時。


頭の中に


一つの光景が浮かんだ。


橘ミサキ。


ホーム。

銃声。

倒れる姿。


「ごめん」


あの一言。


ユウの胸の奥で


何かが燃えた。


怒り。

絶望。

悔しさ。


全部が混ざり合う。


(あのまま終われるかよ)


「……まだ……」


ユウは震える声で言った。


「終われない」


石化した腕が


わずかに震えた。


研究員が驚く。


「反応変化!」


灰色の石が


少しずつ


戻っていく。


クロードの目が細くなる。


「ほう」


石化が止まった。


それ以上広がらない。


そして――


ゆっくりと


皮膚が元に戻る。


研究員たちがざわめいた。


「石化停止!」

「自己回復しています!」

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