第八章 奪われた自由②
クロードはゆっくりとユウの顔を覗き込んだ。
その目は――
まるで新しい玩具を見つけた子供のようだった。
「素晴らしい」
ユウは睨み返した。
クロードは微笑む。
「君は特別だ」
「神城ユウ」
ユウの背筋が凍る。
クロードは続けた。
「君は」
「人間兵器の完成形に最も近い」
研究員たちに命じる。
「この個体は特別管理だ」
「戦闘訓練にも回せ」
ユウは荒い息を吐く。
クロードは振り返りながら言った。
「壊れるなよ」
「貴重な材料なんだからな」
⸻
その後。
ユウたちは部屋へ戻された。
部屋の中には
レン。
ナナ。
アヤがいた。
レンはユウを見るなり怒鳴った。
「お前ら!!」
「死ぬかと思ったぞ!!」
「……勝手に死ぬなよ!!」
ユウは壁にもたれた。
体がまだ震えている。
腕には石化の跡が残っていた。
ナナがそれを見る。
「それ……」
灰色の線。
皮膚に残った傷跡。
アヤが静かに言った。
「石化実験」
ユウは頷いた。
ソウタはベッドに座っていた。
顔色がまだ悪い。
「もう無理だ……」
弱々しい声だった。
「ここ地獄だ」
タケルが静かに言う。
「そうだな」
レンは拳を握った。
「でもよ」
「死ぬ気はねえ」
ナナも言う。
「私も」
アヤはユウを見る。
「ユウ」
ユウは答えた。
「逃げる」
レンがニヤッと笑った。
「だよな」
ユウは続けた。
「でも今は無理だ」
「力が足りない」
タケルが頷く。
「情報も足りない」
部屋に沈黙が落ちた。
重く、長い沈黙。
――その時。
レンがユウの腕を掴んだ。
「これ……どこまでいった」
低い声。
怒りを押し殺している。
ユウは少しだけ目を伏せる。
「途中で止まった」
レンが舌打ちする。
「止まった、じゃねえだろ」
「止めたんだろ、お前が」
ユウは何も言わない。
だが否定もしなかった。
ナナが静かに言う。
「……普通じゃない」
「普通なら、そのまま石で終わり」
アヤが小さく続ける。
「体、ちゃんと動く?」
ユウは腕を少し動かす。
まだ重い。
鈍い痛みが残っている。
「問題ない」
だが、わずかに動きが遅れていた。
アヤはそれを見逃さなかった。
「……無理してる」
ユウは目を逸らす。
ソウタが震えた声で言う。
「なあ……」
全員の視線が向く。
「これ、ずっと続くのかな」
「実験……」
「何回もやられるのかな……」
空気が重くなる。
誰もすぐには答えられない。
タケルが静かに口を開いた。
「可能性は高い」
「むしろ一回で終わるとは思えない」
ソウタの顔が引きつる。
「じゃあ……」
「みんな……ああなるのかよ……」
ユウが言う。
「ならない」
短い言葉だった。
だが、はっきりしていた。
「させない」
その一言で空気が変わる。
レンが笑う。
「いいね」
「そういうの待ってた」
ナナが息を吐く。
「じゃあやること決まってるでしょ」
アヤが続ける。
「情報を集める」
タケルが言う。
「行動のタイミングを待つ」
ソウタが小さく言う。
「……ぼくもやる」
少し間があった。
だが、その声はさっきより強かった。
ユウは頷いた。
「全員で出る」
その言葉に、全員が反応する。
レンが拳を軽く打ち鳴らす。
「今度は失敗しねえ」
ナナが言う。
「その前に生き残ること」
アヤが静かに言う。
「ユウ」
ユウが見る。
「……絶対、死なないで」
その言葉は小さかった。
だが、一番重かった。
ユウは短く答えた。
「……ああ」
誰も口には出さなかった。
だが全員が分かっていた。
ここで止まれば、終わりだと。
⸻
ユウは窓のない壁を見つめた。
この施設。
この世界。
全部壊す。
そのために――
まずは
生き残る。
その日から。
六人は変わった。
そして――
それから
十年の時間が流れる。
第八章まで読んでいただきありがとうございます。
この章では、脱出に失敗した代償と、
研究所という場所の本質をより強く描きました。
ユウの能力が明確になり、
同時に「人間として扱われていない現実」も浮き彫りになっています。
また、この章のラストで物語は大きく動きます。
ここから先は、時間が進み、
ユウたちの関係や立場も大きく変化していきます。
次章では十年後――
彼らがどのように変わったのかを描いていきます。
引き続き読んでいただけたら嬉しいです




