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第七章 雪の外界②



三人は一歩外へ出る。


地面は凍っている。


靴の下で雪がきしむ音がした。


ソウタが呟く。


「外だ……」


その声は震えていた。


タケルが振り返る。


研究所。


巨大な建物が雪の中に立っていた。


まるで巨大な病院のような構造。


だが周囲には


高いフェンス。

監視塔。

サーチライト。


完全な隔離施設だった。


ユウは言った。


「とにかく離れる」


三人は走り出した。


雪道を全力で走る。


足が滑る。


冷たい空気が肺を刺す。


息が白く広がる。


だが止まれない。


研究所から離れる。


森を抜ける。


木々の間を走る。


枝が顔に当たる。


そして――


道路に出た。


ソウタが息を切らす。


「……人いるかな」


ユウは携帯を取り出した。


電源を入れる。


画面が光る。


だが。


圏外。


タケルが小さく言った。


「やっぱりか」


ソウタが震える声で言う。


「どうする?」


ユウは道路の先を見た。


遠くに――


小さな街の灯りが見えた。


「行くぞ」


三人は再び走った。



しばらく走ると。


前方に人影が見えた。


女性が二人。

そして小さな子供。


三人は顔を見合わせる。


ソウタが言った。


「助かった……」


三人は近づく。


ユウが声をかけた。


「すみません!」


女性たちが振り向く。


その瞬間――


一瞬、顔を見合わせた。


ためらい。

警戒。


だが。


「どうしたの?」


優しい声だった。


女性は三人を見て驚いた。


「こんな寒いのに……」


「そんな服で」


三人は研究所の服のままだった。


ユウは言った。


「助けてください」


「俺たち……」


言葉を選ぶ。


「閉じ込められてました」


女性たちは再び顔を見合わせる。


そして言った。


「……とりあえず家に来なさい」


「寒いでしょ」


ソウタが小さく笑った。


「やっと……」


タケルはまだ警戒していた。


だが空腹と寒さが限界だった。


三人は女性たちの後をついていった。



家。


木造の小さな家だった。


暖炉の火がゆらゆら揺れている。


部屋の中は暖かい。


冷えきった体がゆっくりと戻っていく。


女性たちは料理を作ってくれた。


パン。

そしてシチュー。


湯気が立っている。


三人は夢中で食べた。


スプーンを持つ手が止まらない。


ソウタが笑った。


「うまい……」


本当に久しぶりの


普通の食事だった。



食事のあと。


女性が静かに言った。


「それで」


「何があったの?」


ユウは事情を話した。


研究所。

ゲーム。

人体実験。

石化。


女性たちは黙って聞いていた。


そして。


「……やっぱり」


ユウが聞く。


「やっぱり?」


女性は静かに言った。


「あなたたち」


わずかな間。


「迷い子ね」


ユウの心臓が一瞬止まりそうになる。


「知ってるんですか」


女性は頷いた。


「この街では有名よ」


「突然いなくなる子供たち」


「軍に連れて行かれる子」


ソウタが震える。


「軍……?」


女性は続けた。


「あなたたちを匿うと」


「罰せられる」


ユウは言葉を失った。


つまり


この街は


それを知っている。



女性は言った。


「この街から出るには」


「南のトンネルを抜けて」


「橋を渡るしかない」


タケルが聞く。


「警備は?」


女性は答えた。


「軍がいる」


部屋が静かになる。


ユウはゆっくり立ち上がった。


「行こう」


ソウタが驚く。


「今?」


ユウは頷いた。


「ここにいたら」


「この人たちが危ない」


女性たちは何も言えなかった。


三人は家を出た。



雪の夜。


道路を走る。


その時。


遠くから


車の音が聞こえた。


エンジン音。


ライト。


そして


三台の車。


タケルが言った。


「まずい」


ユウも気づく。


その車は


研究所の車だった。


三人は走った。


全力で。


だが――


車の方が速い。


ライトが近づく。


キキィィ!!


車が三人を囲んだ。


ドアが開く。


軍人たちが降りてくる。


その瞬間。


ユウは理解した。


逃げられない。


次の瞬間。


鈍い衝撃。


ユウの視界が大きく揺れた。


頬に熱が走る。


地面に叩きつけられる。


雪の冷たさが顔に広がった。


ソウタの悲鳴。


タケルが倒れる音。


ユウの意識が遠のく。


最後に見えたのは


雪の空だった。


そして――


ユウは再び


研究所に連れ戻された。

第七章まで読んでいただきありがとうございます。


ついに研究所の外へ出ることができましたが、

そこにあったのは「自由」ではなく、

さらに大きな制限と監視の世界でした。


この章では、外の世界の違和感や、

「迷い子」という存在が社会にどう認識されているのかを描いています。


そして、希望が見えた直後に再び絶望へ引き戻される形になりました。


ここから物語は「脱出」だけでなく、

この世界そのものに対する戦いへと変わっていきます。


次章では、再び研究所に戻されたユウたちの状況と、

そこからの変化を描いていきます。


引き続き読んでいただけたら嬉しいです

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