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円満離婚に持ち込むはずが。~『冷酷皇帝の最愛妃』  作者: みこと。@ゆるゆる活動中*´꒳`ฅ
本編

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14/19

14.彼の本心

「ルーイは私の子で、父親はあなたです! 私はシュテファン様以外の誰かと、寝所を共にしたことなんてありません!」


「──え?」


「私が知る"男性"は、シュテファン様だけです」

 

 他の異性とそういう関係になったことは一度もないと、彼に届くようしっかりと言う。


「……俺が、父親?」


 冷酷皇帝の、こんなにポカンとした表情(かお)を見たのは、後にも先にも私くらいじゃなかろうか。


「そうです」


 勢いのまま、伝えてしまった。もう後戻りはできない。

 固唾を飲んで、反応を待つ。


「つまり……俺に子どもがいる。俺と、エリザの子……」


 脳にじわりと沁み広がるように、彼は自分の言葉をなぞって、そして。


 意味が、行き渡ったらしい。

 一気に天を仰いだシュテファンは、手で顔を覆って呻くような声を漏らした。


「どうして……、教えてくれなかったんだ」


「っつ」


 罪悪感から、思わず目を伏せてしまう。

 と、シュテファンは自分を責め始めた。


「いや、俺のせいだ……。俺が最初に"子どもを望まない"と告げてしまったから、エリザを追い詰めてしまった……。なのにこの五年、何も知らずに今頃ノコノコと……」


 そしてハッとしたようにこちらを見ると、私の両腕を掴みながら、切迫した声で尋ねて来た。


「か、身体は大丈夫なのか!?」


「え、あっ、はい。この通り元気です」


 迫力に気圧(けお)されながらも答えると、シュテファンはまじまじと私の様子を探り、そして。深く長い吐息を漏らした。


「良かった……」


 安堵から下がった頭が、そっと私の肩に触れる。

 ささやかな接触なのに、服越しに、ほわりと彼の温かさが伝わってきた。


(いま、私の心配をしてくれたの……?)

 痺れるような感覚が、胸に突き上げてくる。


 シュテファンが顔を上げると、やるせなさを(たたえ)えた金紫の双眸が、私をとらえた。


「俺の母は、俺を産んで亡くなってしまったから……」

「あ……っ」


「あなたに子を望むことは、あなたの命を奪う行為だと、ずっと恐れてた」

「!」


「最初の夜は、言葉選びを間違えたんだ。だがそのことに気づいてからも、俺は臆病な自分を隠すため、あなたに謝りもせずに──」


 彼が落とす言葉が、ひとつ、ひとつ、私の耳殻を震わせていく。


(そうだわ……。シュテファンの母親は、彼を産んだ時に亡くなった。彼自身も母に会えず辛い思いをしたのに、父親からは責められながら育ったのよね……)


 小説で読んだ時は"設定"としか思わなかった冷酷皇帝の過去。


 だけど、生身の彼を前にした今、その事実はあまりに残酷で、痛切で。


 私との子を作らないのは、リーネル家絡みのせいだとばかり思っていた。

 事実、それは大きいはずだが。


 でも彼の心により強くあったのは。

 鎧のように固い態度の内側に、そっと隠されていた柔らかな本心は。


(私の命を、案じてくれてたの──?)


 ふいに、目頭が熱くなる。


(そうか……。そうだったんだ……)


 思い至りもしなかった。

 彼が不器用だけど優しい人だと、気づいていたはずなのに。


 初夜では私も、思い込みのまま彼に取り引きを持ち掛けた。

 きっと鼻持ちならない花嫁だっただろうに、彼は話を聞いて、契約と言うカタチで私を安心させてくれた。


 私に触れている彼が、微かに震えている。

 どうにか慰めたくて、そして詫びたくて、そっとその背に手を回しかけた時、シュテファンが言った。


「あなたに対し、酷い侮辱をしてしまった。俺は──、夫として失格だ……! こんなに失敗ばかり繰り返して、見限られても仕方がない……!」


 違うの、シュテファン。


「臆病だったのは私です、シュテファン様。黙って消えた、私がいけなかったのです。あなたに相談するべきだったのに……」


 何のかんのと理由をつけて、逃げてしまった自分が恥ずかしい。


 彼をこんなにも傷つけた。

 そんな私に、彼が言う。


「やっとわかった。あなたが姿を消したのは、子どもを守るためだったんだな……。それに、俺を」

「──っっ」


 私の頬を、涙が伝う。

 

 私の父、リーネル公爵は子どもを利用しようとしていた。


 私ひとりの力では妊娠を隠し切れず、しかもシュテファンは戦場という、常に命の危機に(さら)される場所にあった。


 もし私の妊娠を公爵が知ったら?

 遠征先で、不測の事態を仕組まれるかも知れない。


 そして公爵は皇帝唯一の赤子を帝位につけ、当然のようにその隣に座っただろう。


 不安だったのだ、私は。

 初めて恋した相手には生きて欲しいと願ったし、子どもを利用されるのも、その子が望まぬ人生を強いられるのも嫌だった。


(その気持ちに彼が、気づいてくれた──)


 たまらずぎゅっと、彼の背中を包み込む。

 すぐに熱く、抱き返された。あたたかな腕と厚い胸に包まれて、彼の脈打つ鼓動が、私と一つになる。


 訥々(とつとつ)と、彼が言葉をつなぐ。


「遠征から戻り、あなたの姿がなくて置き手紙だけが残されてあった時、俺は心臓を握りつぶされた思いがした。あなたを失って、信じられないほどの喪失感に戸惑って。それでやっと気づいた。あなたが俺にとって、どれほどかけがえのない存在になっていたかと」


(シュテファン、まだ震えてる……?)


「すぐに国中を探したけれど、見つけることが出来なくて。どんどん不安になって」


(私の腕が回りきらないほど大きな身体なのに。なんて哀しい声……)


 彼の背をゆっくりと撫でさする。


「手紙に手がかりがないかと、何度も読み返した。そして……、あなたを苦しめたリーネル公爵家を片づけることが出来たなら、戻ってきてくれるのではないかと、そう考えた」


 なのに、公爵家を縮小しても、一向に戻る気配がない。

 もうどんな手がかりでも拾っていこうと、それらしい報告が届くたび、直接現地に駆けつけて私を探したと、彼は言った。


 シュテファンが私から少し身体を離し、顔を見て言う。


「あなたの父親に対して、こう言うのは何だが、公爵は中枢から除いた。あなたが残した政策の数々も、可能な限り実現させた。これからもあなたが過ごしやすいよう、出来る限り心を配る。だから──どうか皇宮に戻ってきて欲しい。俺の……子どもと一緒に」




 刻んでいって申し訳ないのですが、シュテファンとエリザの間にはもうひとつ、解かないといけない誤解が残っています。

 というわけで会話回が続いております(;´∀`)

 月末は予定が込み入っておりまして、更新日がマチマチになるのすみません!

 いつもお読みくださりありがとうございます♪ヾ(*´∀`*)ノ ブクマ、評価は嬉しく、感想欄、いいね等々大変励みになっております!

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ええ話しやぁ〜。
よかったよかった( ˘ω˘ )
もう一つって何だろうと考えながら続きお待ちしてますー
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