創と美奈、夢叶と骸骨男
それから僕らは窮屈なバスタブに入浴し、身を清めた。衣類は備え付けの洗濯乾燥機に入れまとめて洗濯。ガウンはS、M、L、XLが用意されていて、僕はL、美奈さんはMを纏った。
水分やミネラルを失った僕らはベッドの縁に腰掛け、冷蔵庫に入っていた缶入りのイオン飲料を一気飲みし、からだを潤した。
「あー、整った〜。あとはぐっすり眠れば3大欲求がすべて満たされる」
そう宣う美奈さんの目を見て会話するつもりが、どうしてもはだけた胸元に視線を遣ってしまう。
「ふふ、たった3分前まで見てたものを、もう見たくなっちゃったんだ」
「ガウンの構造がいけないんです」
胸元がV字に開いている。それすなわち視線の誘導である。矢印や道路の合流地点を注視するのと本質的には同じである。付加要素があるのは否めないが。
「私は明日休みだから、いいけど」
現在21時。僕が眠り堕ちたのは、3時を過ぎていたと思う。美奈さんはその少し前。ホテルを出たのは朝6時前だった。
それじゃあねと横浜駅のコンコースで美奈さんと別れ、僕は普通列車グリーン車の階下席で茅ヶ崎へ戻った。早朝の下り列車なのに座席は半分以上埋まっていた。沼津行きだから、遠方へ通勤する客も多いのだろうか。
列車を降り、ホームの狭い茅ケ崎駅は人が溢れて線路に転落しそうなほど混み合っていた。6時台後半、通勤ラッシュの真っ只中だ。
急いでもいないのにいそいそと階段を上がり、改札口へ向かう。
擦れ違う無数の人々の殆どが出勤途上であろう。
「んっ……?」
そんな中に僕が見つけたのは、グレーのスーツ姿を纏った森崎さんと、骸骨柄の黒いシャツを纏った若い男の姿だった。
僕は瞬時に諦観した。
そうだよな、僕だってついさっきまで。
だけど、その男はないだろう、森崎さん。




