全く潔白ではなかった
僕らは全くもって潔白ではなかった。
ふーう、ふーう……。
両者仰向けになり、鏡に映る姿に命が滾ってまた繰り返し、そうして何時間経っただろう。乱れたままの呼吸は未だ整わない。
先に口を開いたのは、美奈さんだった。
「やるじゃん猫島くん」
身を捩り、僕のほうを向いて微笑んでいる。
「不全だったので、自分でも驚きました。乱暴にしてしまってすみません」
「乱暴なのに、ちゃんと心を通わせてくれたね、ふふ」
「美奈さんも凄かったです」
「ふたりの相乗効果で猫島くんの機能不全を治しちゃったか」
過去、そのような関係を持った女性は何名かいた。しかし20代半ばころになるといざというときに何も起きなくて、最後までは至らなかった。
内心に引っかかる大きなモヤを抱えながら、僕らは笑った。美奈さんもそう、だと信じたい。
「あの、僕、責任は取りますので……」
「あー、はは……そうだね、もしもがあったらね……」
「それで、いいんですか?」
「え? うん、何もなければそれでヨシ。次からはちゃんとね」
こういうことは、これまでもあった。僕のいままでがすべてこうだった。恋人関係ではない相手と、健康のために。だが、蓋をしなかったのは初めてだった。
「次もあるんですか?」
「夢叶と付き合うまでだよ? それまでは健康のお手伝いをしてあげる。私に彼氏ができなければね」
貞操観念はしっかりしてるんだ。
「でも、もし森崎さんと付き合えたとして、あんなふうにしてしまったら……」
彼女の尊厳を、自我を、僕は損壊させてしまうだろう。
「ああ、それ? それはね、心配ないよ、きっと。夢叶はそういう願望強いと思う」
ごくり、胸が詰まって、唾を嚥下する。
「女の人って、やっぱり恐いですね」
いちばん恐いのは、ここに入るまでそんな素振りを一切見せず、あっさり僕を取り込んだ美奈さんだ。
「そうだよーお、女は恐いよ〜、こわいこわ〜い。ひひひっ」
彼女は無邪気に、僕に笑ってみせた。




