友と言い切る自信がない
僕はアイスのローズヒップハニーティー、美奈さんは桜のフラペチーノを注文し、パラソルが差されたテラス席に着いた。入り江の向こうにランドマークタワーが聳えている。
生暖かい海風と乾いたビル風が混じり合い、少しベタついている。客の多くは店内で飲食しているが、僕が吐くリスクを考慮するとテラス席が適切である。
そもそも吐くリスクを抱えてカフェに来るなという話だが。
「んふふふふー、うまいうまい。そっちは美味しい?」
「はい」
「良かった良かった」
美奈さんはストローで桜のフラペチーノを吸い上げながら「ふふふふふー」と楽しそうに笑っている。
「猫島くんはさー、夢叶のこと好きだよね」
唐突な問い。だが思春期の子どもではあるまいし、変な誤魔化しはしない。よって「はい」と答え、続けて、
「でも、どうやって距離を縮めたらいいかわからなくて」
「あー、そうだね、まずはたまにご飯でも食べに行ったら?」
「それができたら……。そもそも同級生ではありますけど、友だちになれているかどうか」
「え、それはさすがに、夢叶傷つくよ?」
本気で引かれた。ドン引きされている。表情が強張っている。
「すみません……」
学校でも家庭でも否定をされながら育った僕を友と思ってくれる人がいる。それを未だ、確信に変えられない。そもそも森崎さんとだって滅多に会わない。よく会う門沢さんだって、僕を子分としては見ているようだが、友と言い切る自信がない。
僕は根底で、人を信用していない。
「でも、猫島くんは夢叶を友だちだと思ってるよね?」
ストローから口を放し、やさしい笑みで僕を見る。直視しなくていいよと、視線は僕をロックしていない。
「そう、思いたいです」
「ならこうしよう! 私は猫島くんの友だち。私の友だちの夢叶も友だち」
「そんな無理くりな」
その理屈だと青山さんの友はみな僕の友になる。
でも、言わんとしていることは理解できる。僕と森崎さんは僕と美奈さんが知り合う以前から交流があり、仲も良いから友だちとして認識して良いと、そういうことだろう。
少しずつドリンクを吸い上げながら、僕らは憩いのひとときを過ごし、再び取材へ繰り出した。




