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森崎夢叶の18きっぷ  作者: おじぃ
3月、江ノ島お出かけ

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舞の元カレ

 これはオリオン座が綺麗な少し前の日曜夜、互いの勤務解放後、居酒屋チェーンの個室で舞とサシ飲みしたときに聞いた話。基本的に土日休みで月曜から出勤の夢叶には負担になるので誘わなかった。


 鉄道会社は勤務体系がバラバラなので、仲良し全員集合は稀有である。


 私に全然、何年も彼氏ができず、舞はモテていいな〜、取っ替え引っ替えできるもんな〜、なんて冗談めかしたときだった。



 ◇◇◇



「私、26のときからずっと彼氏いないよ」


 26歳のときにはいたんかい! とツッコミたくなったが心の内に引っ込めて続きを促す。


「8年前か。どんな人だったの?」


「2つ上で、鉄道が好きできっぷを集めてたよ。普段のお出かけはICカードだけど、特急とか新幹線に乗るときは高くても必ず磁気券だし、硬券集めもしてた」


 新幹線や在来線特急も登録すればICカードで利用できる。新幹線、在来線特急も指定席ならICカードのほうが磁気券、つまり紙のきっぷより安い。新幹線の自由席は説明すると長くなる運賃計算上の仕組みに基づきICカードのほうが高くなる区間があるため、紙のきっぷと比べどちらが安価か調べてからの利用がおすすめ。


「コテコテの鉄オタやん。もしかして社内恋愛?」


「ううん、社外。初めて会ったのは乗務中の急病人救護で、そのあと何回か朝の乗務中に乗ってきて、今度は非番で電車に乗ったときにまた急病人救護でバッタリ。それでインスタ教えてほしいって言われてプライベートで会うようになって……。困ってる人がいないと放っておけない性格で、よくお年寄りの荷物持ちを手伝ったり、街頭募金は必ず入れてた」


「へぇ、そんな善人、逃がしちゃって良かったの?」


「そうだね、でも彼、純粋すぎて私が疲れちゃってたから、あなたは案外冷たいですねってフラれちゃったけど、ちょうど良かったかな」


「そっか」


「過度な募金とクラファン支援が家計を逼迫してたみたいで、寸借詐欺にもお金を渡しちゃうくらいだから、そういうのを避ける私には重たかった。ともに生きるうえで私にはそれを許容できる度量もないから」


 切なげに語るも、別れて後悔はしていない困った笑顔を私に向けた。ちなみに交際期間は3ヶ月だったらしい。


「いまごろその彼、どうしてるんだろうね」


「インスタに、『お嫁さんにきっぷのコレクションを捨てられた。僕にはもう生きる希望がありません。世間のために尽くしてきたつもりでしたが間違いだったのでしょうか、神様』って書き込みしてた」


「え! それダメじゃん!」


 大切なものを捨てる人、ダメ、ゼッタイ!


「それで病んじゃったみたい。インスタを見たら、救いを求めて宗教団体に入って、そこが運営する慈善団体の職員として働いてるって投稿してた」


「ふむ、それはそれは」



 ◇◇◇



 そんな過去もあり、舞は純粋過ぎる人との付き合いは懲り懲りなのだ。その点、猫島くんは慈善の取捨選択ができそうと、舞も私も踏んでいる。


 むしゃむしゃ、ナゲットうまい。マスタードソースが苦手な人をけっこう見かけるけど、私は好きだな。

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