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森崎夢叶の18きっぷ  作者: おじぃ
3月、江ノ島お出かけ

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ソルティドッグ

 焦った。江ノ島でエスカレーターに乗りたいと希望したときから警戒はしていたけれど、焦った。


 あれは体力のない子アピールというよりは、体力の程度がわからない猫島くんへの配慮だったと思う。しかし彼女は普段の集団行動で男子を遠ざけるために、彼らを凌駕するほどの体力自慢をそこかしこでする。なのに今回は違った。


 舞ちゃんと男子が同行イコール、その男子がほぼ舞ちゃんに惚れる……!


 色気話は聞いたことないが、社内で舞ちゃんに惚れた男は数多。30歳を過ぎても未婚が当たり前になった現代では尚更だ。


 そして認知している限り、告白した全員が玉砕している。


 社内恋愛はしたくないな。


 女子社員の間で恋バナになると、よくそう言っていた。自身が有名イラストレーター『まるたんやんま』であることを社内では口外していない彼女はきっと、その身分を明かしたくないのだろう。


 わたしも作家『もりさきゆめか』であることは秘匿としている。とてもバレそうなハンドルネームではあるけれど。


 そんな彼女、先ほどの藤沢の居酒屋のように社内の飲み会でも男子から視線をもらうことは多々ある。しかし普段はそれに対して気付かないフリをしている。


 それが今回はどうだ。


 指先の動きを見つめられるまではいつもと同じ。しかし、微笑み返したではないか!


 エスカレーターのことも鑑みてそれはつまり、私は猫島くんを気に入っているよ、ということだ。


 胸が破裂するような焦燥感が込み上げたわたしは至極冷静なフリをして、猫島くんに腕や肘を当てた。


 美奈ちゃんがそれを大変興味深そうに見守っていた。


 そして現在、茅ヶ崎のバーに至る。


 正面には、物思いに耽るような猫島くん。彼はいつもこうで、何か考えているかもしれないし、いないかもしれない。


 童顔なりに彼の感情を掻き乱せないかと、わたしは視線を捉え、真っ直ぐ見詰めた。


「おまたせしました〜ソルティドッグです〜」


 お姉さん(お婆ちゃん)が盆に載せて運んできた。


「「ありがとうございます〜」」


 最初に来たソルティドッグで「おつかれさま〜」と盃を交わし、塩の付いたグラスに口をつける。

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