表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
森崎夢叶の18きっぷ  作者: おじぃ
3月、江ノ島お出かけ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/69

藤沢飲み会と国鉄カマ

 左富士に沈む陽光を臨みつつ本土へ戻り、僕らは藤沢駅近くの大手居酒屋チェーンに入った。まずは生ビール中ジョッキで乾杯。


 四人同時にぐびぐびと流し込む。


 酒の席は人間の本性が露呈するというが、青山さんと御城さんはどうだろうか。森崎さんはフラつきやすくなったりぐでぐで具合が少し増す程度で、飲酒しても普段とあまり変わらない。


 現時点で、一般的なワイワイガヤガヤした集団との飲み会で異なる点がある。


 全員がもずく酢を注文したのだ。


 言い出しっぺは僕の正面に座る青山さんの「私もずく酢食べるー!」であった。僕も食べたかったので続き、森崎さんと御城さんも実はということで揃った。小皿メニューを一人分だけ注文しても構わない空気感がここにはある。


「うーん、もずく酢うまい! ねぇ聞いてよ! 私さ、会社入ったばっかのとき同期飲みで◯◯(同期社員の苗字と思われる)にもずく酢頼むなって言われてさ〜」


「◯◯くんって、カマ好きのやんちゃっぽい子?」


「カマ?」


 御城さんの言葉に、僕は反射的に疑問を吐露して話の腰を折ってしまった。


 カマとは、米などを炊く釜? 身体はオトコ、心はオンナのオカマ? それとも草を刈り取る鎌?


「カマっていうのはね、機関車のことだよ。客車とか貨車を牽引けんいんする車両で、昔は石炭を焚べる罐焚かまたきっていう担当があって、その名残だとかなんとか」


 隣に座る森崎さんが解説してくれた。


「へえ、そうなんだ。一つ知見が増えたよ。ありがとう」


「へへへ〜、もっと褒めて〜」


「すごい、知性のかたまり。賢い、頭いい」


 思いつく限りの言葉で、僕は森崎さんを褒め讃えた。


「そう、結局担当線区が両◯と埼◯になって、老い先短い国鉄カマに乗る機会はなさそうだけど」


 民営化後に登場した新型の機関車や牽引用車両は現在も製造されているというが、彼はそれには無関心らしい。民営化前の1986年以前、国鉄時代の車両は素人目でも稀少なのはわかる。子どものころはよく見かけたが、最近はめっきり。それに乗れる職場に転勤させてくれと懇願しても、簡単に首を縦に振らないのが会社というものだろう。


「まあ、ワリカンだしアイツの言うこともわからんではないけど、私は好きなものを食べたい! 誰かが苦手な大皿メニューだって誰かは頼むんだから」


 言われてみれば確かにそうだ。僕は甲殻類アレルギーだが、学校の同窓会で生エビを大量に注文した者がいた。セロリが苦手な人もいるなかで、セロリスティックを注文した者も。結局ありきたりな集団の行動原理は多数派マジョリティ基準なのである。


 余談だが、青山さんと御城さんも機関車を運転する機会のある乗務員職場の所属らしい。


 更に余談だが、森崎さんは機関車を綺麗に磨き上げるプロなのだとか。機関車といえば蒸気機関車を思い浮かべる僕だが、確かに普通の電車の比べると光沢があるように思える。


 絵描きの参考にもなるし、今後は鉄道にも関心を持ってみよう。もとよりイラストレーターとして視野を広く持っていたいから色んなものに目を向けてきたつもりだが、その道の人に言われて気付く視点は多々ある。


 僕もまだまだ伸びしろがあると、改めて実感した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ