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森崎夢叶の18きっぷ  作者: おじぃ
出場

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打ち合わせと加筆訂正

 ガラス張りなので、出版社のビルの中が外からもよく見える。黒いスーツの男たちが数名立っている。何か挙動不審な行動をしたら身柄を拘束されそう。


 中に入って良いのだろうか。まだ待ち合わせ時間まで40分あるので、雲雀沢ひばりさわさんに到着した旨のメッセージを送って外で待機する。


「おっ、お待たせしましたぁ」


 坂やコンビニ、谷間から見上げたビルをスマホで撮影したりウロチョロしたりしていると、ビルの中から雲雀沢さんが息を切らして出てきた。


 案内されたのは、エントランス目の前の応接用テーブル。原稿を広げ、文字数調整のためにあそこを削ろう、ここはいくらか加筆しようと、まだまだ出版までは遠そうな、鉄道でいえば前橋まえばし始発の普通列車沼津(ぬまづ)行が茅ケ崎駅辺りにいるような感じ。片道2百キロ以上のうち残り70キロくらい。これを助力を得ながらも全区間通して運転するのが作家、この場合わたしである。


 今回の打ち合わせは雑談を大いに交えつつ2時間で終わった。ほとんど好きなアニメの話をしていた気がする……。


 何気に面倒な注文だったのは、楽曲にはメロディーを付けておいてほしいと。楽曲なので当たり前ではあるけれど、例え小説の中という物理的無音の空間でも、楽譜を公開しなくても、ライブの臨場感を出すためにはメロディーは決めておいたほうが良いとのことだった。


 まあまあイメージはできてはいるけれども、寝不足が加速しそうである。


 予感は当たった。イヤな予感は大体当たる。心配事の9割は起こらない? いやいやもっと起きるって。


 13万字以上ある原稿の加筆、訂正を行い、車両所に通勤して、休日は出版社に出向いたり雲雀沢さんが茅ヶ崎に来てカフェで打ち合わせをしたりという日々が1ヶ月続いた。生き地獄であった。ふひ〜とか言っている余裕はなかった。


 その間、舞ちゃんことまるたんやんまさんからの表紙、巻頭カラー、本文中の白黒イラストが全て上がってきた。


「次はいよいよ、製本ですね」


 すっかり馴染んだ出版社の応接テーブル。雲雀沢さんが言った。


 そうか、もう絵は上がっているし、たったいま文が完成したところで、いよいよ製本作業に入るんだ。

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