原稿チェックの東海道線
緑とオレンジの塗装が施された湘南電車が引退して幾星霜、ステンレスの車体に緑とオレンジの帯が貼り付けられた2階建てグリーン車の階下席に座って都内へ向かっている。
過去最高の、緊張である……!
行き先はなんと、出版社……!
11時47分、曇り空の湘南を颯爽と走る東海道線の高崎行き。これに東京駅まで乗って中央線に乗り換える。
頭上の読書灯を点けてプリントアウトした原稿をチェックする。文字数は少し多めにしてあるので、どこを削るか、削って空いたところに作品の質を高める文章を挿入するか、削ったままにしておくかと、検討の余地は何通りかある。
茅ケ崎の隣、平塚始発の電車を選び、乗車時点ではわたし一人のフロアだったものの、辻堂、藤沢、大船と進むごとに徐々に席が埋まり、横浜駅では窓側がほぼ全て埋まった。横浜から女連れで乗ってきたやかましいトーンで喋るネチネチ気持ち悪い感じの男もいて気が散るが、原稿チェックの手は止めない。
ウザいなキモいなうるさいな、悶々としていると、多摩川を渡ったところで急停車。窓の外は河川敷。ホームレス同士だろうか、テントの前で小汚い2人の男が会話しているのが見下ろせる。
原稿の出来もだが、前提として待ち合わせ時間に遅れてはならない。人身事故や信号機故障等を見越して2時間余裕を見て家を出たものの、出版社に無事到着するまでは不安は解けない。
急停車の理由は踏切直前横断とのことで、すぐに運転再開。3分遅延。わたしは2時間余裕を見ているが、人によってはこの3分が明暗を分ける。
件の男女は品川で下車し、静粛のグリーン車が戻った。乗り換えの東京駅まで残り10分は瞼を閉じて過ごした。




