彼女の正体と満更でもない夢叶
森崎さんは美奈さんのほうを向いて
「間違ってたらごめんなんだけど、もしかして美奈ちゃんって、VTuberの松風美波さん?」
と、口を噤みながら恐る恐る訊ねた。
「うん、そうだよ」
対して美奈さんはケロッと答えた。
「え、ていうか、夢叶、松風美波知ってたんだ!」
「つい最近ではありますが、お歌が上手だなって」
「茅ヶ崎市民にお歌が上手ってほざかれるとなんだか卑猥に感じる〜」
「あ、いや、それはわたしの国民的先輩が言ったことで……」
森崎さんは慌てて否定したが実際、彼女の‘お歌’は上手だった。それは墓場まで持って行こう。
松風美波といえば、ハスキーボイスの高い歌唱力と、自作楽曲、ときにDJもやるマルチエンターテイナー。
実は僕も声質が似ているとは思っていた。
美奈さんは「ふふ」と息を漏らして微睡むように微笑み
「私、夢叶とだったら寝てもいいよ」
と、森崎さんを誘った。
「えー、美奈ちゃんズルい、私も夢叶ちゃんと寝る!」
「え、え、えええっ!?」
言い寄られながら、森崎さんは二人の指先で執拗に身体を撫でられている。いまにも首筋を舐められそうだ。
いい歳して視線を固定できない僕は、俯いてデンモクのリモコンを見たり彼女らに眼を向けたりと、挙動不審。
「たっ、助けて〜」
狼狽しながら僕に助けを求めている森崎さんだが、どこか満更でもなさそうな感じがする。




