夢叶たちの歌唱
美奈さんに「後ろ向いてて」と言われ、ソファーに座ったまま身を捩って壁を見つめる。その間にデンモクを操作して曲を入れたようだ。
それより先に一人で歌う曲を1曲ずつ、計4曲入れていたので各々歌う。
最初は美奈さんが歌う『芽吹くとき』(原曲∶yonige)。やたら僕と森崎さんに目配せをしながら歌っていた。美奈さんの声質に合っていて、彼女自身の歌唱力も澄明な中に少しの淀みがあって聴く者を惹きつける。
2曲目は舞さんが歌う『美しければそれでいい』(原曲∶石川智晶)。本人の歌声より澄んでいるが、歌詞が彼女の心情とマッチしているのか、世俗に汚された少女が心の底から叫ぶような強い訴求力があった。
二人とも歌が上手だ。
3曲目は森崎さんが『おジャ魔女カーニバル!!』(原曲∶MAHO堂)を歌った。酒がリミッターを外しているのかとても楽しそうだった。
ちなみに僕は『HAPPY BIRTHDAY』(原曲∶back number)を歌った。美奈さんが「おお」と瞳を潤ませていたがどういう意味だろうか。悟られたか。本人にはどうだろう。
続いて5曲目である。森崎さんは緊張の面持ちだが、3人で眼を合わせ頷くと、引き締まった。
楽曲は『storia』原曲は3人組歌唱ユニットのKalafina。
森崎さんの歌声は、美奈さんよりもアルト、なのに蒼穹へ突き抜けてゆくように澄明。天使というよりは、強さとやさしさを併せ持つ神の声だ。
心より晴れやかに、愉しそうに歌う彼女たち。たった一人の観客に視線を向けて、音楽の世界へ誘う。
3分少々の、心の清浄。
僕は聴き惚れて、放心した。
「いやあ、良かった良かった! 無事に歌えた! 歌うって楽しい!」
「あの〜、ちょっと質問よろしいでしょうか」
歌い終えて早々、森崎が恐る恐る右手を上げた。




