国鉄の名残?
「ふひ〜呑んだ呑んだ〜。梅酒はいいのお〜」
「夢叶ちゃ〜ん、終電なくなっちゃったあ〜ふふふ〜」
「今夜は私たちと濃密な夜を過ごそー!」
仕事上がりの飲み会に誘われた僕、猫島創。ハンドルネーム『風天の猫』。職業、イラストレーター。夜型の僕はこのために昼間に仕事を進めた。
女性陣もまた仕事上がり。森崎さんは日勤職場、乗務員の美奈さんと舞さんは日勤上がり。
19時に鎌倉駅付近の料亭で飲食が始まり、刺身や玉子焼きなどをつまみながら各々好きな酒を流し込んだ。その後なぜか茅ヶ崎の隠れ家バーに移動してベロンベロンになり、終電の時刻など業務知識の範疇である人たちがそれを逃し、深夜のエメロード商店街で森崎さんに抱き着いたりはしゃいだりしている。
遠い昔の国鉄時代、職員は徹夜勤務明けで新橋の酒場へ向かい、夕方までひたすら酒を呑み、代金は全額先輩が持つ。その代わり後輩に更に後輩ができれば奢る。そんな組織だとどこかで聞いたが、現代も酒呑み気質は残っているようだ。
彼女たちは初電までオールナイトをするつもりのようで、僕は絶望している。ここで女性だけを残して帰るのも気が引けるし、付き合うしかないか。
茅ケ崎駅付近でオールナイトといえばカラオケということで、カラオケ店に入ってドリンクバーを頼み個室に入った。
「ねえねえ、猫島くんいるし、3人で聴かせてあげない?」
美奈さんが舞さんと森崎さんに何かを提案した。
「私はいいけど……」
舞さんは了承しているが……。
森崎さんがビクッとして眼をパチクリし始めた。どんな曲を歌うつもりなのだろう。




