■ 結びつき始める真実とは
「田ノ木さん、もしかして安西さんってあのライブハウスに落ちてきた血まみれの女性ですか?」
幸元の問いかけに田ノ木は頷いた。
野本に仕掛けてあった小型のマイクから会話は全部拾われていた。
ヘリの中で待機している3人も船の上でのやりとりを今までのことは勿論のこと、一部始終、聞き逃すことなく耳に入れていた。
「だから、どんなに洗っても出て来なかったんだな」
田ノ木は安西が日本で生活できるように上手に細工されていた事を知り、苦虫を噛みつぶしたような顔をし、ここが船の上だったら、ヨーコに突進しているのではないかと幸元は感じた。
「野本さんの旦那さんは今どこにいるんでしょうか」
幸元旦那が田ノ木に言うと、田ノ木はさっき船から逃げてった小型船が怪しいだろうと言い、逃がしてしまったことを今更ながら悔やんだ。
「ってことは、あの船から出ている大砲のようなものは・・・」
「飾りだ。爆発物かなんかのカムフラージュのためだろう」
「じゃ早く船にいる人たちを助けないと」
時間が無い!
ヘリは甲板にいる人の救出に向かおうとしたが、
「申し訳ありませんがこのヘリは救助用には作られていません」
本当に申し訳なさそうに幸元旦那は田ノ木に打ち明けた。
「じゃぁなんの為の・・・おい、まさか、違うと言えよ」
「・・・言えなくも・・・ありませんが・・・」
答えのない答えを言う幸元旦那にその答えが自分の思い描くものだと悟ると、「一体お前達はなんなんだよ!」と半ば呆れた声で言葉を押し出した。
「あぁ・・・ええと、もういっか・・・彼は私の夫です」
仕方なく幸元が田ノ木に教えてやると、お前の旦那はミャンマーにいるんじゃないのか?と至極真面目な解答を持って来た。
「だから田ノ木さん、世の中には出ていない答えだってたくさんあるんですってば」
言い切って真っ白い歯を見せて笑う幸元は、子供のような笑みをわざと浮かべた。
幸元はこの笑顔を見せれば大抵の男は押し黙るということを、昔から心得ていた。
貨物船は根上に任せて逃げて行った小型のボートを追えと操縦士に言うと、田ノ木は電話を操作し部下に連絡を取った。
逆探知した野本の旦那の居場所が分かったかどうかの確認のための電話だったが、そんなことはもうこちらで全部調べたじゃない。
と、幸元は今更何をしてるわけ?と、振り返りざまに田ノ木の顔を覗き込んだ。
「野本さんの旦那様は例の施設から電話をしてきていましたよ」
「日本にいても、ある一定の場所からだと外国からかかってきているように通知圏外になるからな」
「迷惑な話ですよね」
「あいつを逃がすわけには行かない」
「遠隔操作でぱーんとやりそうですものね」
幸元が何気なく言った一言に減りの中が静まりかえる。
「それだ」
田ノ木は急いで桜坂の電話番号を携帯の画面に叩きだした。
「逃げろって言われても田ノ木さんね、こっちはこっちで忙しいんですよ!」
電話に出た根上は動かなくなったヨーコと転がって騒ぎ立てている男二人をどうするか、まだ他に共犯者がいるのかどうかを聞き出すのに忙しかった。
「共犯者はいない!そこからさっさと脱出しろ!」
「だから!」
「これは命令だ!」
こう言われては何も言い返せないのが上下関係の激しい警察組織だ。
この船はそのうちに沈められる。そこら中に爆弾が仕掛けられているだろうと見解を言った。
まさかと眉間に皺を寄せる根上にの横から王が早口に、この船にはもう誰もいないということをまくし立てた。
速い。
貨物船の進む速度が速くなっている。
「遠隔操作」
独り言は田ノ木の耳に入り、その通りだが、やはりお前は少し感が鈍いと嫌みを言われた。
すぐに救命ボートを海に降ろし、遠くへ逃げろと指示を出し、俺は野本の旦那のボートを追うと言うと一方的に電話を切った。
根上が見ている中、ヘリは違う方向へと飛び去って行った。
救命ボートは確か4艘あったはずだ。
爆破されるとしたら遙か沖に出てからだろうと読み、ここから一刻も早く脱出することが先決だと考えた根上はコンテナの後ろでおとなしくしている3人にこっちに来い!と叫んだ。
「根上さん、桜坂さんをここに!」
野本が意識を失いつつある安西を抱きかかえながら根上に桜坂をここへ呼んでくれと頼み、
根上は安西の様子が危ないことを察知すると、いまだ大事そうに胸の前でバッグを抱えている桜坂にさっさとこっちに来るようにと手招きをした。
王は救命ボートを降ろしに行き、白戸も悟も手伝いに着いて行った。




