■ コンテナでお腹空いたな
日が差し始めた頃、貨物船内にも動きがみられた。
昨夜コンテナから脱出したまま見つからずにいたのは、やはり殺す気があるためか、結果、水とパンが最後の晩餐だったからだ。
その証拠にそれ以来一度たりともコンテナの扉が開かれることはなかった。
これはこっちにしてみたら好都合だ。
逃げたということがバレテいない。
あの外国人たちもコンテナの中を開けるのが怖いってのもあるんだろう。
なんせ、金で雇われているだけなの素人チンピラ崩れのようなもんだ、できるだけ臭い物には蓋をしたいはずだ。
そしてさっさと仕事を終えてここから1分でも早く立ち去りたいという気持ちなんだろう。
今頃は田ノ木がこちらをGPS検索でもして探し出してくれているはずだと根上は考え、これから助けがくるまでの間、どこに身を潜めるのかを周りのコンテナを確認しながら策を練った。
日が上がるまでに、まだ相手が動き出す前にセットアップしなければならないと思い、顔を太陽の方へ向ける。
まだ、時間は十分にある。
もしかしたら他の荷物を乗せるのに一度どこかの港に近づくはずだ。
コンテナを積み込む余地がこの貨物船にはまだ十分にある。
いろいろなことを考えてみるとその可能性は捨てきれない。
それが神戸なんだか九州なんだか、韓国か中国か台湾かは根上には分からなかった。
この船に何人の乗組員が乗っていて、敵が何人いるのかを想像することすら出来ない状況では、早く見つけ出してくれとひたすらに願うばかりだ。
桜坂の携帯電話を確認しながら辺りに神経を集中させた。
「お腹空いたな・・・」
皆が思っている事を言葉としてするりと口から滑り出したのは、悟だ。
一番始めにその空気を敏感に感じ取ったのは根上で、無言で睨みつける。
そんな根上に気付いて庇うのは白戸。
王はその辺を確認してくると言って出ているのでこの場にはいない。
桜坂は何も聞かなかったとばかりに違う方を見つめ、眩しそうに手で朝日を避けていた。
「今度言ったら、一瞬で海に投げ捨てる・・・か、撃つ」
悟の目を捉えて人指し指を悟の額の真ん中に押しつける根上に冗談は通じない。
悟はぶるりと震え、肩を縮こまらせた。
そんな怖いことを言って怖がらせないで下さいよと白戸が眉間に皺を寄せるが、そんなのんびりしたことをしている場合ではなくなった。
すぐ先には小さくだが黒い塊、港が見えてきはじめた。
「あの港に上がれればいいんだけど」
根上は独り言を言いながら辺りを確認し始めたが、陸に降りられそうなものは今いるこの場所の付近には何一つ無かった。
もしかしたら・・・この船は何かを待っているだけで港に入るわけではないかもしれないという不安が根上の心の中を駆け巡った。
「5人ですね」
偵察から帰ってきた王は根上に今調べてきたざっとの人数を告げた。
「少ない」
「全員アジア系の外国人だったので、金で雇われたんでしょう」
「ってことは、大元はどこに・・・」
「・・・さぁ」
「こうなるとやはり確実にその辺で投げ捨てられるってことね」
「ええ、そんなところでしょう」
何がなんだか分かっていない大人女子二人の為に王がざっと説明をした。
なんせ根上は自分が分かったいるんだから、他の人も分かっているに違いないという、なんとも言いようのない思考の持ち主なので、さらさらに説明をする気が無かったからだ。その辺のところは野本とうり二つか。
つまり、この船はアフリカには行くがその途中、まだまだ日本の領海内で目的のコンテナをポトンと、もしくは全部を海に捨てられる確率が高まったということだ。
乗組員は5人全てがアジア人ということならば、船が港に着くまでに荷物を落として、目的地は中国か台湾かはたまたベトナムなんだかは分からないけれど、そこで船から降りるはずというのが、根上と王が推測した結果だ。
それを聞いた桜坂と白戸の顔からは見てわかるように血の気が引いて真っ白くなっていた。




