表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
9/11

第9話 壊していいよ

 祝福熱は、風邪とは違い発熱以外の症状が出ない。ノーチェが眠るのに飽きてきた頃、アルバは「あ、そうだ。これ、渡しておくね」と革でできたクッションを手渡した。


「これは?」

「分厚い革でできたクッションだよ。革の厚さと抱き心地にこだわったんだ。でさ、その。一個お願いがあるんだけど、いいかな?」

「……お願い?」


 何だろう。できることだといいんだけどな。そう考え出したノーチェに、アルバは笑って続ける。


「ちょっと暴走しそうだな、って時。それに祝福を向けて欲しいなって」

「……壊しちゃうよ」


 ノーチェは震える声でそう答えた。


「わたしの祝福、暴走したら……物なんて、簡単に壊れる」


 視線を落としたまま、彼女は呟く。アルバは笑って続けた。


「うん。そのために作らせたものだから」


 ノーチェは視線を伏せ、クッションを見つめる。その手は、かすかだが震えていた。その瞬間、闇の雷がばちばちと音を立て始めた。


「大丈夫。クッション、壊していいよ」

「……分かった」


 ノーチェはクッションを抱えたまま、祝福の矛先をそちらへ向けた。闇の雷が、ほとばしる。分厚い革が裂け、中の綿が顔を出した。


「……うん。上手。ちょっともらうね」


 アルバはクッションを受け取ると、「はい、新しいの」と別のを手渡す。


「……新しいの?」

「うん。いっぱいあるから、いくらでも壊していいよ」


 ノーチェは困惑したようにクッションを見つめる。そんな彼女を、アルバはにこにこと見守っていた。




 ノーチェの熱は、二日目の昼には下がった。アルバは彼女の額に手を当てて「うん、下がったね」ということを確認する。そして、真剣な表情を作った。


「ノーチェ。もし、よかったらなんだけどさ。先にディーアに向けて出発してくれると助かるんだけど、どうかな?」

「……先に?」

「うん。正妃が君に何かしないか、心配なんだ。……だめ、かな?」


 彼はこてん、と首を傾げる。ノーチェはしばらく考えたあと、おそるおそる「……絶対、追いかけてくれる? 連れて帰ってくれる?」と聞いた。


「もちろん。港で待ち合わせだよ」

「……分かった」


 彼女は不安げにクッションを抱きしめながらも、こくんと頷く。アルバはその手をそっと包み込むと、優しく微笑んだ。


「大丈夫。ノーチェは、絶対守るよ。みんなでディーアに帰ろうね」

読んでくださりありがとうございました。評価、いいね、ブックマークをしてくださると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ