表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
16/24

第16話 ドレス選び

 ブリッサとアルバに連れられて、ノーチェはブティックに訪れた。

 白を基調とした店内には、色とりどりのドレスが並んでいる。淡い花のような色合いのものから、夜空を切り取ったような深い色のものまで、どれもが美しく輝いていた。


「わぁ……」


 こんなにたくさんの“きれいなもの”に囲まれるのは、いつ以来だろうか。そう考えたノーチェは無意識に一歩後ずさる。


「遠慮しなくていいのよ。今日は好きなだけ見てちょうだい」


 ブリッサはそう言って、楽しそうに棚へと歩み寄った。


「ほら、これなんてどう? この淡いピンク、ノーチェちゃんに似合いそうじゃない?」


 ふわりと広げられたドレスは、春に咲く花のような柔らかな色をしていた。


「……きれい、です……。でも……」


 そう答えながらも、ノーチェの手は伸びない。アルバはそれを見て、ブリッサからドレスを受け取った。


「着てみよっか」

「え、あ、でも……」


 慌てるノーチェをよそに、アルバは店員を呼んだ。


「大丈夫だよ。似合わなかったら、笑って終わりにすればいいだけだし」


 軽い調子で言うその声に、ほんの少しだけ肩の力が抜ける。結局、ノーチェは試着室へと押し込まれるように入った。

 店員に手伝ってもらって、ドレスに腕を通す。鏡に映った自分を見て、彼女はぽつりとつぶやいた。


「……これが、わたし……?」

「ノーチェ、着れた? 入ってもいい?」

「……あ、うん……」


 アルバが試着室のカーテンを開ける。彼はノーチェを一目見て、「すごくかわいい。よく似合ってるよ!」と笑った。


「……似合って……る……?」

「うん」


 ノーチェは鏡をもう一度見る。そこにいたのは、呪われた姫ではなかった。見たこともないお姫さまだった。


「気に入った?」

「……よく、分からない……」


 ノーチェは視線を落とす。アルバは笑って口を開いた。


「じゃあ、買っちゃおうか。気に入らなかったら着なかったらいいだけだ」

「え?」


 ぽかんとするノーチェをよそに、アルバは店員に「これ、購入で。他のも持ってきて」とお願いした。


「ま、まって。もったいないよ」

「いいの。ノーチェ、次はどのドレス見る?」

「えっと……黒とか、紫とか?」

「黒か。確かにノーチェに似合いそう!」

「この紫なんてどう? かわいい色だから、気分も華やかになると思うわ」


 ノーチェが混乱しているうちに、二人はどんどん購入するドレスを決めていく。明るい色のドレス、暗い色のドレス、オーガンジーがメインの軽いドレスや、しっかりした重厚な生地でできたドレス。ノーチェが少しでも良さそうな反応を示したドレスは、すぐに購入予定となる。


「ま、まって。そんなにいらない……」

「でも、その日の気分に合う着たいドレスがなかったらだめでしょ?」


 ブリッサの言葉に、ノーチェは目をぱちくりとさせる。


「……その日の気分……?」

「そう。今日は気分を上げたいから明るい色、今日は強そうに見せたいからかっこいいドレス、みたいな」

「……そんなので、選んだことない……」

「選んでいいのよ。そういうので。ねえ、ノーチェちゃんが着たいのは、どんなドレス?」


 ブリッサは微笑む。ノーチェはアルバとブリッサの顔を見た。二人は「大丈夫」とでも言いたげに頷く。


(……わたしの……着たいドレス……)


 店内をぐるりと見渡したノーチェの視線は、一着のドレスに吸い寄せられる。それは夜明けのような落ち着いた水色と、柔らかな緑のグラデーションが美しいドレスだった。


「……これ、とか……?」

「まあ、素敵ね。試着してみましょう?」


 ブリッサに促され、ノーチェは試着室へ向かう。ドレスに着替えて出てきたノーチェを見て、アルバは笑った。


「とってもよく似合ってるよ! ぼくもお揃いのやつ、買っちゃおうかな」

「……お揃い?」

「うん。同じような色の服でさ。ぼくはちょっと紫入れちゃおうかな」


 アルバは楽しそうに話す。


「……わたしとお揃いで、いいの……?」

「うん。夫婦って分かりやすいでしょ? ……だめかな?」


 ……夫婦。……夫婦か。そっか。わたし、アルバと夫婦になったんだった……。

 ノーチェは心のなかでそうつぶやく。


「……いいよ。……紫、似合うと思う」

「やった!」


 アルバは楽しそうに笑う。それにつられて、ノーチェも少しだけ笑顔を浮かべた。

読んでくださりありがとうございました。評価、いいね、ブックマークをしてくださると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ