表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

PR
11/17

第11話 故郷との別れ

 先に港に着いたノーチェは、ディーア王室専用船の船室に通される。ふかふかのソファに腰掛けた彼女は、ぽつりとつぶやいた。


「……アルバ、ちゃんと来てくれるかな」

「大丈夫ですよ。お坊ちゃまはノーチェ様を絶対に見捨てません」


 不安げにつぶやいたノーチェの背を、アベリャーナがそっとなでる。


「……うん」


 彼女はぎゅっとクッションを抱きしめた。その瞬間、闇色の雷がクッションを引き裂く。


「あ、また……」

「こちらを」


 カカウェテは新しいクッションに取り替える。「ごめんなさい……」と申し訳なさそうに目を伏せるノーチェに、彼女は笑いかける。


「大丈夫です! クッションはまだまだあります! 足りなくなりそうでしたらすぐ作るので!」

「……針子さんの仕事、増やしちゃうから……」

「実は、クッション手当出るんです。私も侍女の仕事がないときは、内職代わりにやってました」

「……カカウェテ、意外とそういうの好きだよね」


 カカウェテとアベリャーナの笑顔につられ、ノーチェは軽く笑顔を浮かべた。




 夕日が傾き、影が伸びてきた頃。船室のドアがこんこんとノックされた。


「……どうぞ」

「ただいま、ノーチェ」


 ドアを開けて入ってきたのはアルバだった。アルバはにこにことノーチェの言葉を待つ。ノーチェは目を丸くして「……えっと」とつぶやいた。


「ただいま、だよ。ノーチェ」

「……おかえり、なさい……?」

「うん。ただいま」


 彼女がそう声をかけると、アルバは満面の笑みで答える。そのままノーチェの隣に腰掛けた彼は「待っている間、退屈しなかった?」と問いかける。


「……うん。アベリャーナとカカウェテもいたから」

「やっぱり雇って正解だったな。……ぼくも見てくれないと、ちょっと寂しいけど」


 アルバは拗ねたようなポーズをとる。ノーチェは「ごめんね」と謝った。


「わっ、違うよ! 謝ってほしいんじゃなくて!」


 彼はわたわたと手を振って誤解を解こうとする。


「……ほんとに?」

「違うよ! 違う! ただの軽口!」


 一生懸命なアルバの姿を見て、ノーチェは安心したように表情を緩めた。


「紅茶とかお菓子とか用意させてたんだけど、口にあった?」

「……うん。美味しかったよ。お菓子、久々に食べた」

「これからは好きなだけ食べていいからね。ああでも、太っちゃうか」

「……そうだね。……ほどほどに、楽しむね」


 汽笛の音が鳴り響き、船は桟橋を離れる。ノーチェは窓に目を向け、少しずつ小さくなっていく故郷に視線を向けていた。


「……ルナリアと、クラロは……」

妹弟(きょうだい)たちのこと、気になる?」

「……うん。わたしだけ、地獄を抜けていいのかな、って」


 彼女の言葉に、アルバは「ノーチェはやさしいね」と微笑む。


「わたしは、優しくないよ」

「ううん。優しいよ」


 アルバはノーチェの手をそっと包み込む。安心させるように。


「ルナリアは王宮を出たよ。ファーブラ公爵家の、カントって知ってる? 彼のところに身を寄せてる」

「ファーブラ公爵家って、筆頭公爵家の? ……密会の相手だったよね」

「うん。きっと、大事にしてくれるよ」


 アルバの目は柔らかい。それを見ていると、ノーチェは何だか信じてもいいような心地になってきた。


「クラロは?」

「……救いの手は、届いてる。昔からずっと。あとは彼次第かな。あの子も、ずいぶん長く待ってるみたいだし」

「あの子?」

「うん。クラロの隣にいるよ。彼はまだ気づいてないみたいだけど。でも、気づかなくても、錨にはなってくれるんじゃないかな」


 だから大丈夫だよと笑うアルバの目は、どこまでも優しかった。

読んでくださりありがとうございました。評価、いいね、ブックマークをしてくださると励みになります。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ