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UR農具で極める最強村のスローライフ〜至高の漬物と月見酒で訳あり達の胃袋を掴んだら、俺の畑の絶対防衛線が完成していた件〜  作者: 月神世一


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EP 7

【無自覚ざまぁ】俺の畑の絶対防衛線

「撃て! その生意気な兎の耳ごと、魔導突撃銃で蜂の巣にしてしまえ!!」

ザルツ大尉の絶叫が響き渡り、数十名の帝国兵が一斉に引き金を引いた。

青白い魔力の弾丸が、雨あられとなってキャルルへと降り注ぐ。常人なら回避不可能な飽和攻撃。

だが、キャルルはあくびを噛み殺すように小さく息を吐いた。

「遅いなぁ……。こんなトロい弾じゃ、ハジメの握る『塩むすび』の感動には程遠いよ」

――ダンッ!!

特注の安全靴が大地を叩いた瞬間、キャルルの姿がフッと掻き消えた。

「なっ、消え――!?」

兵士たちが驚愕する間もなく、先頭の魔導戦車パンツァーの真正面に、ウサギの耳がふわりと舞い降りる。

「月影流・破衝撃はしょうげきッ!!」

キャルルが闘気を纏わせたダブルトンファーを、戦車の分厚い前面装甲に叩き込んだ。

ズガァァァァンッ!!

という凄まじい轟音とともに、数十トンの重量を誇る魔導戦車が、まるでアルミ缶のようにベシャリとひしゃげ、後方へと吹き飛んでいく。

「ひぃぃっ!? ば、化け物……!」

「うろたえるな! 第二装甲、主砲発射――」

ザルツが体勢を立て直そうとしたその時、上空から真紅の流星が降ってきた。

「天魔竜聖剣……バーニング・オーラ・ブレイクッ!!」

紅蓮のクリムゾンアーマーを纏ったダイヤが、巨大な剣に炎の闘気を乗せて一刀両断する。

巨大な魔導戦車が、まるでバターのように真っ二つに裂け、誘爆を起こして火柱を上げた。

「あーあ、真っ二つにしちゃった。これじゃあ屑鉄スクラップの買取価格が下がっちゃうじゃないの! あんたたち、帝国軍ならもっと綺麗に倒されなさいよ!」

ダイヤが理不尽な文句を言いながら、残った兵士たちを峰打ちで次々と宙に吹き飛ばしていく。

そして、混乱の極地に陥った戦場のど真ん中。

逃げ惑う兵士たちの間を、黒いジャケットの男――龍魔呂が、まるで散歩でもするかのように悠然と歩いていた。

「あ、悪魔だ! 撃てェ!」

パニックを起こした兵士が至近距離から魔導突撃銃を乱射する。

だが、龍魔呂は歩みを止めない。太極拳の『化勁かけい』と、軍隊格闘術の歩法を合わせた神速の足捌きで、全ての弾丸の軌道を紙一重で無効化スリップしていく。

「……五月蝿い。その騒音は、料理の繊細な味を損ねる」

龍魔呂がスッと手を伸ばし、兵士の首筋に軽く手刀を落とした。たったそれだけで、鎧越しの衝撃が神経を完全に断ち切り、兵士は白目を剥いて崩れ落ちる。

無駄のない、殺戮の芸術。

たった三人。

ハジメの『美味い飯』と『平和な日常』を守るために集ったポポロ村の防衛線は、帝国軍の一個小隊を、わずか数十秒で物理的に蹂躙・壊滅させていたのである。

「……ポコポコと、いい音が鳴り始めたな」

一方その頃。

外で帝国軍の魔導戦車がスクラップにされていることなど露知らず、ハジメは工房の中で一人、静かな喜びに浸っていた。

『ワークショップ』による極限の蒸留プロセスを経て、ついに透明な液体――ポポロ村特産の太陽芋を使った『究極の芋酒(芋焼酎)』が、一滴、また一滴と滴り落ち始めたのだ。

ズドォォォン!! ドバァァァン!!

外から、建物を揺るがすような爆発音と地響きが連続して伝わってくる。

「……よくやるな」

ハジメは、滴る芋酒の香りを楽しみながら、ふぅと小さく息を吐いた。

「昨日のウサギ(キャルル)といい、ポポロ村の若者たちは随分と活発な遊びをする。魔力だか闘気だかを知らんが、エネルギーを持て余しているんだろう」

25歳にして完全に魂が定年退職を迎えているハジメにとって、外の轟音は「元気な中学生が空き地で爆竹を鳴らして遊んでいる」程度の認識でしかなかった。

「ま、怪我だけはしないように祈るさ。……俺は、俺の仕事スローライフを全うするだけだ」

ハジメは胸ポケットから紙製のブックマッチを取り出し、シュッ、とキャスターに火をつける。

紫煙を吐き出しながら、完成した芋酒を猪口ちょこに注ぎ、静かに香りを確かめる。

完璧だ。これに自作の漬物を合わせれば、最高の月見酒になる。

「ば、馬鹿な……我が帝国軍の精鋭部隊が、たった一分で……!?」

炎上する魔導戦車の陰で、ザルツ大尉はガタガタと震えていた。

もはや部隊は壊滅状態。キャルル、ダイヤ、龍魔呂の三人の「化け物」は、残存兵を処理するのに夢中でこちらには気づいていない。

(……に、逃げるしかない。だが、手ぶらで帰ればオルウェル内務卿に処刑される!)

ザルツの血走った目が、戦場の奥に建つ真新しい『木造の工房』を捉えた。

(あそこだ! あの小屋の周辺から、異常な魔力波長が出ている! しかも、あそこには誰も護衛がいない……!)

ザルツは、生き残っていた一人の部下を引き連れ、乱戦の隙を突いて泥を這うように工房へと向かった。

(あの中にいる村人を人質に取る! そうすれば、あの化け物どもも手出しはできまい!)

ザルツの読みは、ある意味では正しかった。

工房の中にいるのは、剣も魔法も持たない、ただの「農民」である。

だが、彼は決定的な勘違いをしていた。

その「農民」が、ポポロ村で最も触れてはならない『アンタッチャブルなバグ存在(合気道・幻の十段)』であるということに。

「おい、行くぞ! ドアを蹴り破り、中にいる奴に銃を突きつけろ!!」

ザルツと部下は、凶悪な笑みを浮かべながら、ハジメのいる工房の扉を勢いよく蹴り開けた。

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