第59話 数が、増えていく。
異世界に落ちた。帰れないアラフォーパパが、異世界で戦う。
とりあえず、腹が減ったので魔物を焼いた。
面白いと思ったら、評価やブックマークをもらえると
ヨーヘイより先に作者が泣きます。
◆ 数えきれない、の正体
石畳が、震えていた。
皿の上の銅貨が、かたかたと鳴っている。東の空の下、地を打つ音がいくつも重なって、ひとつの厚い唸りになって近づいてきた。広場の人々が足を止めている。誰かが東を指さしたまま、動けずにいた。
ヨーヘイ:(解析さん。数えきれない、とはどういう意味だ)
頭の中に、声が割り込んだ。
解析:「……訂正します。感知が一時的に飽和しただけです。数え直しました。実数、約三十。鉱山から溢れた、先発の一群かと」
ヨーヘイ内心:(脅かすな)
ほっとしたのは一瞬だった。三十なら捌ける。ただ、解析が一度でも「数えきれません」と言った事実が、喉の奥に小さく引っかかっている。
ヨーヘイ内心:(数えきれない、と言った。あれは、まだ序の口だということか)
ドレンが剣を抜いた。皿を放り出して、刃の腹で土を払う。
ドレン:「鉱山から溢れた連中だ。街道に出されちゃ街が困る。門の手前で食い止めるぞ」
ヨーヘイは七輪に手を伸ばした。屋台を畳む時間はない。魔石に触れて火を落とし、炭の目が黒く沈むのを確かめる。カゼの引き綱を解いて、柱の奥――荷馬車の陰へ寄せた。
ヨーヘイ:「カゼ、ここにいろ。フィン、見ててやれ」
フィン:「キュッ」
返事のような一声。フィンはカゼの脚の間に潜り込み、鼻先を東へ向けて伏せる。
リリアはすでに槍を構えていた。ルカも幌から飛び出して、耳をぴんと立てている。
ルカ:「うちもやるで。火、絞って出す」
ヨーヘイ:「密集にだけ。街に向けるな」
ルカ:「分かってるって」
先頭が、見えてきた。
緑灰色の、厚い皮膚の塊だった。体高は人より頭ひとつ大きい。豚のように上を向いた鼻面に、下顎から短い牙が伸びている。手には棍棒や石斧、拾い物らしい刃。数体が固まって、その後ろにもっと小さい影――痩せた緑色の群れが、刃物を振り回しながら散発的に湧いていた。
解析:「……先頭、オーク。後続、ゴブリン。どちらも既知の魔物です」
ヨーヘイ:「数は」
解析:「……オーク六、ゴブリン二十前後。連携は粗い。陽動に弱い相手です」
ヨーヘイ内心:(なら、崩せる)
ヨーヘイは両手の中剣を握り直した。《瞬歩》で間合いを詰める。先頭のオークが棍棒を振り上げた、その懐へ滑り込んだ。振り下ろされる前に、顎の下へ一突き。手応えが重い。引き抜いて、横へ抜けた。
ヨーヘイ:「リリさん、前列」
リリア:「……はい」
リリアの槍に、白い光が走った。聖属性のエンチャント。だがその一撃は仲間の武器ではなく、自分の穂先に乗っていた。踏み込みざまに横へ薙ぐ。光の帯が、固まったオークの前列をまとめて裂いた。聖属性は数を相手にするときに伸びる。一体ずつ削るのではなく、面で押し返す。リリアの槍が、初めてその役を果たしていた。
ルカの手のひらが、絞った炎を吐く。広げず、密集したゴブリンの一点へ。炎が線になって突き抜けた。四十八話の頃はまだ面でしか出せなかった火が、いまは針のように通っている。
ルカ:「どや。絞れるようになったんや」
ヨーヘイ:「上手いです」
ルカ:「もっと褒めて――っ、左!」
ルカの声が、途中で裏返った。
一拍、動きが止まる。怯んだような目で、自分の耳のあたりに手をやった。
ルカ:「……今、『左、来る』って、聞こえた。文章になっとる……前は、単語やったのに」
ヨーヘイは答えなかった。答える間もないし、答えるつもりもない。ルカの左、死角からゴブリンが刃を振り上げている。割り込んだ《瞬歩》が、その腕ごと払い落とす。
ヨーヘイ:「飲み込め。後だ」
ルカ:「……っ、せやな」
ルカが息を吸い直した。耳の件は、そのまま戦いの底へ沈めた。
ゴブリンの一体が、回り込んでいた。リリアの背後――槍を振り抜いた直後の、振り向けない角度へ。
フィン:「キュウッ!」
高い一声が、カゼの陰から飛んだ。
リリアが反応する。声の方向だけを頼りに、振り向きざま穂先を返した。光がもう一度走り、ゴブリンを弾く。フィンの声は、食い気のそれではない。仲間の死角を埋める、守りの一声だった。
リリア:「……助かりました、フィン」
フィン:「キュッ」
それからは、押し切る作業だった。ヨーヘイが正面のオークを引きつけ、リリアの聖属性が前列を薙ぎ、ルカの炎が密集を抜く。フィンの声が死角を縫う。四人と一匹の動きが、噛み合っていた。誰かが指示を出すより先に、次の位置に入っている。
最後のオークが膝をついて、倒れた。
広場に、静けさが戻ってくる。砂埃の向こうで、ドレンが剣を下ろしていた。さっきまで街の冒険者たちと門の手前を固めていたはずが、いつの間にか手を止めて、こちらを見ている。
ドレン:「……あんたら、何者だ」
ヨーヘイは中剣の血を払って、答えなかった。
解析:「……鎮圧確認。負傷者、軽微です」
ヨーヘイ内心:(終わった。これで、終わった)
そう思った直後、東から風が一筋流れてきて、首筋を冷たく撫でた。
◆ 人型を、どう見るか
倒したオークとゴブリンの死体が、広場の隅に転がっていた。
住民たちは近づこうとしない。人型の魔物だ。この世界では、人の形をしたものは素材すら取らず、忌避して埋めるものらしい。誰かが手押し車を引いてきて、埋葬の穴を掘る相談を始めていた。
ヨーヘイは、一体のオークの前で足を止めた。
豚に似た鼻面。厚い皮膚の下に、しっかりと脂が乗っているのが分かる。膝をついて、傷口の奥を覗き込んだ。手が、そこで一度止まる。
ヨーヘイ:(解析さん。これは)
解析:「……オーク。人型に分類されますが、生態は雑食の獣に近い。食用、可能です」
ヨーヘイ内心:(人型、か)
手が、動かなかった。動かそうとして、止まっている。人の形をしている。それを、自分はこれから捌こうとしている。
解析:「……豚に、最も近い肉質です」
ヨーヘイは、短く息を吐いた。
ヨーヘイ:「……なら、豚だ」
声に出した。誰に言うでもなく、自分の手に言い聞かせるように。
ナイフを抜いて、まず皮に刃を入れた。厚い皮を肩から剥いでいく。剥ぎ終えてから、血を抜いた。傷口を下にして、地面の傾きを使って流す。臭みは血に乗る。血を抜き切れば、獣の肉に近づく。それから部位を切り分けた。もも、バラ、肩のあたり。最後に内臓を出して、使える部位とそうでない部位を分けた。脂の付き方が、確かに豚だった。赤身ばかりだったノゲジカとは、手の中の重さが違う。
ヨーヘイ内心:(バラに脂が乗ってる。これは、焼いたら甘い)
ゴブリンには、触れなかった。
倒れた緑色の小さな体を、ヨーヘイは見もしなかった。
解析:「……ゴブリンも、食用は可能ですが」
ヨーヘイ:(食わない)
理由は言わなかった。言う必要もなかった。オークは豚だ。ゴブリンは、そうではない。どこに線を引くかは、世界の常識でもなく、誰かの教えでもない。自分の手が、肉と見るか見ないか。それだけだった。
住民が遠巻きにざわついていた。
住民:「……人型を、捌いてるぞ」
住民:「正気か、あいつ」
ヨーヘイは手を止めなかった。淡々と、もも肉の筋を落としていく。ざわめきと、自分の手元の落ち着きが、妙にかみ合っていない。その不一致が、少しおかしかった。
ドレンが横に立った。腕を組んで、手元を見下ろしている。
ドレン:「あんた、肝が据わってんな」
ヨーヘイ:「肉に見えたので」
ドレン:「……肉、ね」
ドレンが短く笑った。それから、ふと真顔になる。
ドレン:「昨日言いかけた、炉の火の話だが」
ヨーヘイ:「聞かせてください」
ドレン:「……いや、また今度だ。今は、群れの方が先だろう。あれを片付けないと、この街もあんたらも、ゆっくり話す暇なんかない」
ドレンは、それ以上は言わなかった。炉の火の話は、断片のまま宙に残る。ヨーヘイも引き止めはしない。確かに、いまは群れが先だ。
倒した魔物の魔石を集めて、ギルドで換金した。オークとゴブリン合わせて、銅貨で五十枚ほど。広場で出した屋台の売上より、よほど物騒な稼ぎだった。
ヨーヘイ内心:(街は、先発を凌いだ。だが東の本体は、まだ残ってる)
明日の朝、街道を西へ進む。屋台旅を止めるつもりはない。ただ、東から目を離すこともできなかった。
◆ 数が、増えていく
翌朝、街道に出た。
西へ向かうほど、何かがおかしかった。普段なら単独か、せいぜい二、三匹で現れる魔物が、群れていた。草地の窪みにツチネムが十数体。岩陰にもう一群。数が、明らかに多い。
解析:「……この区間の魔物密度、平常の約四倍。業務の範囲内です」
ヨーヘイ内心:(四倍を範囲内と言うな)
ゴブリンの小群が、街道脇から湧いた。ヨーヘイは馬車を止めて、リリアとルカと三人で捌いた。今度は捌くだけだ。倒したあと、誰も死体に手を伸ばさない。食う相手ではない。
カゼの足が、重かった。土を踏む歩幅が、いつもより狭い。フィンは荷台の縁から何度も東を振り返って、耳を細かく動かしている。脅威の声は出さない。ただ、落ち着かない。
ヨーヘイ内心:(フィンも、カゼも、東を気にしてる。数が、増えていく)
声には出さなかった。蓮には、なおさら言えない。ただ、数だけが頭の中で積み上がっていく。一体ずつなら、何の問題もない。問題は、終わらないことだった。
昼を過ぎて、ようやく群れの密度が落ちた。最後のゴブリンを片付けて、ヨーヘイが息をついたとき、頭の中に声が来た。
解析:「……レベル、25から26へ上昇。HP・MP微増。《瞬歩》熟練度、上昇。《二刀流》、わずかに動きました」
ヨーヘイ:「上がったのか」
解析:「……数を、捌いたので」
ヨーヘイ内心:(数のおかげで上がった、とは言いたくないな)
強くなった。それは事実だ。ただ、強くしてくれたのが「異常な数」だというのが、素直に喜べない。レベルが上がるたびに、東の鉱山が一段ずつひどくなっていく。その引き換えのような成長は、ヨーヘイには面白くもなんともない。
◆ 豚を、焼く
夕方、街道脇の窪地に野営を張った。
七輪を下ろして、火を入れた。炭の目が、じわりと赤くなる。ヨーヘイは収納から、街で確保したオークのバラ肉を取り出した。
岩塩を振って、網に乗せる。
脂が、落ちた。
ノゲジカのときとは、音が違った。赤身のノゲジカは、脂が少なくて煙も控えめだった。オークのバラは、落ちる脂が炭の上で勢いよく爆ぜて、白い煙を盛大に立ち上げる。匂いが、甘い。鼻の奥にまとわりつく、脂の甘さだった。
ルカ:「……ちょっと待って。これ、豚やん。めっちゃ豚やん」
ヨーヘイ:「豚です」
ルカ:「いや人型やったやん、さっきまで。緑色の、牙生えてた――」
ヨーヘイ:「豚です」
ルカ:「……まあ、ええか。うまそうやし」
ルカの耳が、立っていた。線引きを、食い気が軽々と飛び越えていく。ヨーヘイは肉を返した。焼き色が、ノゲジカより濃い。脂が縁で泡立って、塩の粒を溶かしていた。
一枚目を、ルカに渡した。ルカが噛んで、止まった。
ルカ:「……なんやのこれ。ジュワッていうやん。ノゲジカと全然ちゃう」
解析:「……喫食を確認。経験値補正、二倍適用」
ルカ:「食べたら強なる体質、ほんま羨ましいわ。うちも肉食って強なりたい」
ヨーヘイ:「……それは、企業秘密です」
リリアも黙って二枚目に手を伸ばしていた。フィンが串の前に座って、まだかという顔で待っている。撃退と、街道の張り詰めが、肉の脂と一緒にほどけていく。
ヨーヘイは、自分の分を一枚焼いた。口に入れて、噛む。脂の甘さが、舌に広がった。赤身一辺倒だった看板に、脂の乗った一枚が増えた。焼肉屋の品書きが、また一行伸びる。
ヨーヘイ内心:(赤身に、脂が一枚増えた)
それから、ふと手元を見た。
ヨーヘイ内心:(人の形をしていたものを、豚として食っている。これも、料理だ)
飲み込んだ。うまかった。それが、すべてだった。
◆ ルカが、話した
日が落ちて、焚き火だけになった。
炭の七輪は片付けて、いまは枯れ枝の焚き火が一つ。火の粉が、ときどき上に逃げていく。ルカが膝を抱えて、火を見ていた。さっきの戦いで耳に届いた「声」のことを、まだ少し引きずっているのが、横顔に出ていた。
ルカ:「……なあ。前は、単語やったのに。今日は、文章になっとった」
ヨーヘイは、何も言わなかった。
ルカ:「……ええわ。聞いてへんことにする。うちの頭が成長期なんやろ、たぶん」
強がるように、ルカが笑った。その笑いが、すっと火の方へ落ちていく。
ルカ:「……なあ、リリちゃん。ちょっとだけ、うちの話してええ?」
リリア:「……はい」
ルカが、膝に顎を乗せた。
ルカ:「うちの里な、燃え病ってのが、流行っとる。狐の言葉で『消えていく火』って意味や。最初は、ただ疲れる。魔法も、出が悪なる。そのうち、体が冷えてくる。指先から。感覚も、鈍る。最後は……魔力がゼロになって、衰弱して、死ぬ」
火が、はぜた。
ルカ:「里の、三割や。三割が、もう発症しとる。先に行くんは、いつも年寄りと、子供や」
ヨーヘイ:「……原因は」
ルカ:「分からへん。誰も、分からへんねん。昔からある病やとも言うし、何かのせいやとも言う。はっきりしたことは、誰も」
ルカは、そこで一度、言葉を切った。
ルカ:「半年、切っとる」
声が、わずかに揺れた。
ルカ:「ほんまは、もっと急がなあかん。素材集めて、薬作って、間に合わせなあかん。分かっとるねん。分かっとるのに、うちは、こんなとこで豚焼いて喜んどる」
誰も、すぐには何も言わなかった。火だけが、小さく鳴っている。
リリアが、膝の上で手を組んだ。
リリア:「……私も、母のことが、分からないまま来ています」
ルカが、顔を上げた。
リリア:「何が起きたのか。なぜ、私だけが残ったのか。確かめたくても、確かめる方法が、ずっと分からなかった。だから……分からないまま進む気持ちは、少し、分かります」
ルカ:「……リリちゃん」
リリア:「急ぐ理由があるのは、いいことだと思います。私は、長いこと、急ぐ理由すら見失っていたので」
ルカが、口を開いて、閉じた。それから、ぐしゃっと前髪をかき上げて、無理やり笑った。
ルカ:「……あー、もう。湿っぽいのは、なしや。うちらしくない」
ルカ:「半年あれば、なんとかなる。素材さえ揃えば、絶対なんとかなるんや。今日の豚も、うまかったしな。うん。ええ日や」
ヨーヘイは、火を見ていた。
昼間、解析が一度だけ、聞かせてきた言葉がある。「……ルカさんの魔力残量、通常の六割を下回っています」。本人は「時間はある」と言い張る。だが、本人より解析の方が、ルカの体を正確に知っていた。
ヨーヘイ内心:(本人より、解析さんの方が知ってる。それを、言うべきじゃない夜もある)
ヨーヘイは、何も言わなかった。代わりに、残りのオーク肉をもう一枚、網に乗せた。
ヨーヘイ:「もう一枚、焼きます」
ルカ:「……食べる。当たり前やん」
その言い方が、少しだけ、泣きそうだった。
◆ 先触れ
焚き火が、落ち着いた頃だった。
フィンが、立ち上がった。
耳が、東を向いている。喉の奥から、聞いたことのない低い声が漏れた。
フィン:「キュウウッ……」
いつもの三種の、どれとも違う。昨夜、街道で出したのと同じ声だった。警戒よりも、もっと深いところから出ている。
地面が、震えた。
石畳ではない。土が、足の裏で揺れている。遠い地鳴りが、近づいてくる。昼間に捌いた一群の、比ではない。厚みが違う。重さが違う。地面そのものが、押されている。
ルカ:「……なに、これ。さっきより、ぜんぜん」
解析:「……東より、反応。規模――」
解析の声が、詰まった。
解析:「……先ほどの一群は、先触れでした」
ヨーヘイは立ち上がって、東を見た。
闇の向こう、地平の際に、影が広がっていた。数えるという行為が意味を持たない、面としての影。その先頭に、ひとつだけ、群れのどれとも違う、大きな影が立っている。
ヨーヘイ:(解析さん。あの、先頭のは)
解析:「……照合できません」
地鳴りが、近づいてくる。
半年あれば、なんとかなる――さっきルカが言った言葉が、足元の震えに、飲み込まれていった。
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【第59話 リザルト&ステータス】
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▼ ヨーヘイのステータス(本話終了時点)
Lv:26 HP:430/430 MP:205/205
スキル熟練度(本話で動いたものだけ記載):
・《料理》Lv2 84/100(+4)
・《解体》Lv2 99/100(+4)
・《瞬歩》Lv1 98/100(+5)
・《二刀流》Lv1 6/100(+6)
・その他:変動なし
▼ 本話の収支
・収入:オーク・ゴブリンの魔石換金 +50枚
・本話終了時手持ち:5,021枚(銅貨)
▼ 収納アイテム(前話からの変動分のみ)
・追加:オーク各部位(もも・バラ・肩)※野営で一部消費・残量あり
・追加:粗皮・粗末な武器(鉄くず相当・換金待ち)
・消費:オークのバラ肉(野営で焼いた分)
・変動なし:前話からの持ち物は変わらず
▼ 本話の出来事
・「数えきれません」の大群は、感知の一時飽和だった。実数約三十の「先発の一群」を、街とヨーヘイたちで撃退
・戦闘の只中、ルカに初めて「短い文章」が届く。本人は発生源が分からないまま、戦いの底に飲み込んだ
・人型のオークを「豚だ」と見て解体し、ゴブリンには触れなかった。ヨーヘイの線引きが、住民のざわめきの中で初めて形になる
・街道は普段群れない魔物が密度四倍。Lv26へ。夜、ルカが燃え病を初めて詳しく語る
・「半年あれば、なんとかなる」――その言葉が、先ほどの比ではない地鳴りに飲み込まれて幕
▼ ヨーヘイの考察
解析さん、記録します。
昨日の「数えきれません」は、先触れでした。三十ほどの群れを、街のみんなと一緒に撃退しました。あれくらいなら、いまの私たちで捌けます。問題は、終わらないことです。街道を進むほど、数が増えていきます。
オークを、豚として捌きました。人の形をしています。それでも、私の手には肉に見えました。ゴブリンには触れませんでした。線をどこに引くかは、私が決めることのようです。バラに脂が乗っていて、焼いたら甘かったです。看板が、一行増えました。
夜に、ルカさんが里の話をしました。半年だと言いました。本人より、あなたの方がルカさんの体を知っています。それを言わない夜だと思って、私は肉を焼きました。
いま、東がまた震えています。フィンが、昨日と同じ声を出しています。先頭にいる大きな影が、何なのか、あなたにも照合できないと聞きました。確かめたいことが、また増えました。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
感想・評価・ブックマーク、どれでも嬉しいです。
星ひとつでも、ヨーヘイの飯がうまくなります。
また次話でお会いしましょう。




