第46話 感情が、乗った。
帰れないアラフォーパパが、異世界で魔物を焼いています。
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◆ 出発・朝
初めて4人で外に出た。
ルカがフィンの隣を歩いた。フィンはルカの方を向かない。でもルカの歩幅に合わせて、速度が少し落ちている。ヨーヘイは気づいたが何も言わなかった。
ルカ:「今日はどのあたり行くん?」
ヨーヘイ:「ウラベダンの手前。ベルネの東縁です」
ルカ:「ダンジョン入らんの?」
ヨーヘイ:「今日は入りません」
ルカ:「なんで?」
ヨーヘイ:「3人と1匹の動き方を確認してからにします」
ルカ:「……慎重やな」
リリア:「……正しいと思います」
ルカがリリアを見た。リリアは前を向いたまま言った。
ルカ:「リリちゃんはヨーヘイさんの肩持つよな、いつも」
リリア:「……正しいので、持ちます」
ルカ:「……それはそれで怖いな」
フィン:「キュッ」
ルカがフィンを見た。
ルカ:「今のは何?」
ヨーヘイ:「同意していると思います」
ルカ:「この子、空気読んでへん?」
ヨーヘイ:「読んでいます。読んだ上でそう鳴いています」
ルカ:「……なんで断言できるん」
ヨーヘイ:「いつもそうなので」
ルカが呆れた顔をした。
城門を出た。衛兵が2人、左右に立っている。ヨーヘイのブロンズ(青銅)のカードを見て、片方が小さく頷いた。止めなかった。前に来た時より流れが早い。カードの重さに慣れてきた、ということかもしれない。
東の道に出ると、空気が変わった。城壁の内側とは違う、草と土の匂いが来た。ルカが鼻をひくつかせた。
ルカ:「……なんか、匂う」
ヨーヘイ:「魔物の気配が混じっています。草や土の匂いの下に、もう一層ある感じです」
ルカ:「分かるん?」
ヨーヘイ:(解析さん)
解析:「……東南、80メートル。単体です。気配の大きさからEグレード正規と判断します」
ヨーヘイ:「近くにいます。1体。スキルで出ています」
ルカ:「スキルって、さっきも言ってたやつ? 喋るやつ」
ヨーヘイ:「喋ります。鑑定と位置把握が主な仕事です」
ルカ:「便利すぎへん?」
ヨーヘイ:「おかげで死なずに済んでいます」
◆ シロバラ
フィンの耳が先に動いた。
東南を向いた。ぴんと立ったまま、動かない。体が低くなった。それから振り返って、ヨーヘイを見た。
ルカ:「……また分かってた、あの子」
ヨーヘイ:「フィンはスキルより先に察知することがあります。鼻が利くので。さっきもスキルが反応する前でした」
ルカ:「なんで断言できるん」
ヨーヘイ:「いつもそうなので」
ルカが「また」と言いかけて、止めた。体長2メートルほど。地を這うように動く。背面のウロコが紫紺に光っていた。日差しを受けて鈍く、でも確かに光っている。腹は白かった。4本の脚が太く、尾が長い。
ヨーヘイ内心:(爬虫類だ。でかい)
解析:「Eグレード正規。背面のウロコは熱に過敏な感知器官を覆っています。腹面が急所。尾の薙ぎ払いに注意してください」
ルカ:「……また声がした」
ヨーヘイ:(解析さん、あれは)
解析:「シロバラ。Eグレード正規。腹面が白いことからそう呼ばれています」
ヨーヘイ:「シロバラです」
ルカ:「名前あるんや。そのままやな」
ヨーヘイ:「分かりやすい方が定着するので」
解析:「腹面の白色は警告色の反転です。背面の紫が捕食者への警告で、腹は地面への擬態に使います」
ルカ:「……また声がした。なんか長かった。スキルって言ってたけど、スキルって喋るもんなん?」
ヨーヘイ:「このスキルは喋ります。普通のスキルとは少し違います」
ルカ:「どのくらい違うん」
ヨーヘイ:「……説明が難しいです。後で話します」
リリアが小さく頷いた。ヨーヘイを見て、また前を向いた。
◆ ルカの魔法、初実戦
シロバラが気づいた。
頭がこちらを向いた。尾が地面を叩いた。低い音が草地に響いた。
ヨーヘイ:「行きます。リリさんは鼻面を牽制、フィンは尾の方を引きつけろ。ルカさんは機を見て」
リリア:「……はい」
フィン:「キュウッ!」
ルカ:「任せて」
シロバラが動いた。尾の薙ぎ払いが来た。ヨーヘイは《瞬歩》で横に抜けた。リリアが槍を出してシロバラの鼻面を突いた。シロバラが頭を引く。その瞬間、腹が一瞬浮いた。リリアはそのまま引かなかった。槍の切っ先をシロバラの顔面に向けたまま、一歩前に出た。シロバラの視線がリリアに固定された。
解析:「今です。腹部中央」
ヨーヘイが踏み込んだ。蒼魔鉄の中剣を腹部に入れる。手応えがあった。シロバラが体を捻る。刃を引いた。
シロバラが後退した。頭を低くした。
ヨーヘイ:「ルカさん、今です」
ルカ:「分かった」
右手が上がった。指先に熱が集まる気配がした。その熱が一瞬で膨らんだ——
轟音が来た。
炎が出た。ヨーヘイが思っていたより3倍は大きかった。シロバラの背面に直撃した。ウロコが熱に反応して、体全体が痙攣した。シロバラが横転した。
静寂。
ルカが膝をついた。片手を地面についた。息が荒かった。
ルカ:「……終わったで」
ヨーヘイ:「終わりました。よかったです」
ルカ:「……でかく出しすぎた」
ヨーヘイ内心:(でかかった)
解析:「……想定の1.6倍の出力です。ルカさんの魔力残量38%。感情が乗りました」
ルカの耳が、ぴくりと動いた。
ルカ:「……単語、聞こえた」
ヨーヘイ:「何が聞こえましたか」
ルカ:「『感情』って。一個だけ」
ヨーヘイは答えなかった。解析さんも何も言わなかった。
ルカ:「……気のせいか」
ヨーヘイ:「……そうかもしれません」
リリアがヨーヘイを見た。ヨーヘイは前を向いたままだった。
◆ 解体
シロバラの解体を始めた。
まず皮からだ。背面のウロコが邪魔をする。継ぎ目を探す。ウロコの端に刃を入れると、思ったより剥がれやすかった。内側に脂の層がある。ウロコと皮の間に脂が乗っていて、それがクッションになっている。
解析:「皮の脂層は断熱材として機能しています。生存戦略上の必要から厚くなりました。油分が高いため、加熱すれば器状に成形できます」
ヨーヘイ内心:(水を通さない。肉汁を閉じ込められる)
ルカがしゃがんで覗き込んだ。呼吸は戻っていた。
ルカ:「なにしてるん」
ヨーヘイ:「皮を取っています。この皮、油分が多いので熱で固まります。肉を包んで蒸らす器になります」
ルカ:「皮が器になるん?」
ヨーヘイ:「油分が多いので、熱で成形できます。アルミ……いや、昔使っていた包み材の代わりになる。肉汁を閉じ込めて蒸らすための器です」
ルカ:「……なんか色々知ってるな」
ヨーヘイ:「……色々あります」
皮を剥がした。大判が取れた。丁寧に広げる。破れていない。
次に血抜きだ。頸部の太い血管に刃を入れた。血が出る。草地に流した。リリアが無言で少し離れた場所に立っていた。慣れてきた、ということだ。最初の頃は顔を背けていた。
血が落ち着いてから、腹を開けた。
内臓が出てきた。肝が大きい。ハツもある。脂肪の層が薄い——腹の白さは本当に皮だけで、肉は赤みがかった白身だった。
ヨーヘイ内心:(白身だ。しかも——匂いが、ない)
爬虫類の内臓はたいてい独特の臭みがある。クロトカゲの毒腺がそうだった。ガルドモグラもそうだった。ところがシロバラの腹腔を開けても、獣臭がほとんど来ない。草地の空気に近い、青い匂いが少しするだけだ。
ヨーヘイ:「見てください。白身です。しかも臭みがほとんどない。フィールド産はやはり違います」
ルカ:「爬虫類って臭いもんちゃうん?」
ヨーヘイ:「たいていそうです。シロバラは違う。腹の擬態に使う腹面が地面に近いせいか、内臓に余計な成分が蓄積していないのかもしれない」
ルカ:「……そのスキルに聞いてみ」
ヨーヘイ:(解析さん、この臭みのなさは何ですか)
解析:「食用可能です。腹肉は白身・低脂肪。腹面の皮が地面の菌・臭気を遮断する構造になっています。副次的に内臓への臭み移行が抑えられているようです。タンパク質の変性温度は——」
ルカ:「っ——また声がした。今度は長かった」
ヨーヘイ:「気のせいです」
ルカ:「何回言うねん」
少し間があった。ヨーヘイはルカを見なかった。
ヨーヘイ:「……それより、この肉の話をします」
ルカ:「急に変えた」
ヨーヘイ:「脂が少ない分、素材の旨みが直接出ます。強火で焼くと一気にタンパク質が固まって旨みが全部逃げる。弱火でゆっくり熱を入れると、肉汁が中に残って別の食べ物になる」
ルカ:「……話、変わったけど」
ヨーヘイ:「やってみれば分かります」
部位を分けた。腹肉・尾肉・肝・ハツ。ルカが「こんなに出るん」と言った。リリアが「……毎回です」と答えた。ルカが「このパーティ、ほんまにおかしい」と言った。
フィンが内臓の匂いに向かって来た。ヨーヘイの手で止められた。
フィン:「キューン」
ヨーヘイ:「後で出すから。今は待て」
フィン:「キュッ」
ルカ:「フィンって話通じてへん?」
ヨーヘイ:「通じています。フィンは匂いで判断しているので、食べ物の話は特によく分かります」
ルカ:「……なんで断言できるん」
ヨーヘイ:「今まで外れたことがないので」
ルカ:「それいつもそうなので、と同じやん」
ヨーヘイ:「……同じですね」
ルカが肩をすとんと落とした。
◆ 現地調理・葉包み焼き
まず試した。
近くで枯れ枝を拾い集めた。石で囲いを作って火を起こした。枝が燃え始めたところで、腹肉の端を小さく切り取って石の上に直接乗せた。30秒ほど待った。
取り出して、一口食べた。
ヨーヘイ内心:(固い。思ったより早く締まった。でも——旨みはある。閉じ込められている感じがする。鶏の胸肉に近いが、もう少し繊細だ。これは強火で全部やったら、旨みが全部逃げる)
ルカ:「なにしてるん」
ヨーヘイ:「試しました。固くなった」
ルカ:「失敗?」
ヨーヘイ:「失敗ではないです。分かったことがあります」
ルカ:「なにが」
ヨーヘイ:「この肉、ゆっくり熱を入れた方が旨くなると思います。直火で一気に焼くと締まりすぎる」
ルカ:「……なんで分かるん」
ヨーヘイ:「今食べたので」
ルカが小さく笑った。声には出さなかった。火はそのままにした。戻った時に熾火になっていればいい。
ルカ:「なんの葉っぱ要るん」
ヨーヘイ:「大きくて油分があるもの、草地に生えているやつです。触って少しぬるっとする感触があれば正解です」
ルカが鼻をひくつかせて、東側の木の根元を指した。そこに膝ほどの高さの低木があった。葉が手のひら2枚分ほどある。触ってみると、表面に薄い油分があった。
ヨーヘイ:「これです。この油分が水分の蒸発を防いでくれます。葉の香りも肉に移る」
ルカ:「葉っぱで包むん?」
ヨーヘイ:「葉と皮で密封して、じわじわ熱を入れます。さっきの固さを出さないために」
皮を地面に広げた。その上に葉を敷いた。腹肉を並べる。岩塩をひとつまみ——指で擦り込む。コガネ草油を一筋垂らした。油が白身の表面を光らせた。もう一枚、葉をかぶせる。皮で包む。端を石で押さえた。
火の方に戻った。枝が燃え落ちて、熾火になっていた。皮包みをその横に置いた。直接乗せない。輻射熱で蒸らす。
ルカ:「直接火に当てんの?」
ヨーヘイ:「当てません。さっきみたいに固くなります」
ルカ:「どのくらい待つん」
ヨーヘイ:「10分ほど。焦らず待つのが全部です」
ルカ:「……長いな」
ヨーヘイ:「料理は時間をかけた分だけ変わります。早く食べたければ強火で焼けばいい。でもそれだとさっきの固い肉です」
ルカが膝を抱えて焚き火を見た。
ルカ:「……ヨーヘイさん、料理ってどこで覚えたん? 冒険者になる前から?」
ヨーヘイ:「……家族のために焼いていました。息子が肉が好きで、娘は野菜を食べなくて、妻は食べるのは好きなくせに食べた後で眠くなる人で。そういう人たちに合わせて焼いていました」
ルカが何も言わなかった。枯れ枝が爆ぜる音だけが来た。
ルカ:「……それ、いい話やな」
ヨーヘイは答えなかった。
しばらくして、皮包みから湯気が出始めた。
脂の甘い匂いが来た。葉の草っぽい青さと、岩塩の鋭さと、白身から滲んだ肉の深みが混ざって、草地の空気に溶けていく。フィンが鼻をひくつかせた。ルカの耳が両方ゆっくり立った。リリアが身を乗り出した。
ヨーヘイ:「もう少しです。——いい匂いがしてきたら、あと2分くらいです」
ルカ:「今めっちゃいい匂いしてる」
ヨーヘイ:「もう少しです」
石を退かした。皮の端を慎重に持ち上げた。
蒸気が出た。
葉の香りと脂の甘さと、白身から出た肉汁の匂いが一気に来た。ルカが「うそ」と言った。リリアが「……」と言葉を出せなかった。フィンが「キュウッ!」と鳴いた。
皮の中に汁が残っていた。腹肉が並んでいた。表面が白く均一に火が通っていた。縮んでいない。汁を逃がしていない。
ヨーヘイが一切れ、箸で持ち上げた。断面が光っていた。
ヨーヘイ:「食べてみてください」
リリア:「……いただきます」
リリアが口に入れた。少し間があった。
リリア:「……おいしいです。葉の匂いが少し移っています。それが……いいです」
リリアはもう一口、ゆっくり食べた。それから少し俯いて、また食べた。
ヨーヘイ内心:(合っている。低温で固まらずに旨みが残っている。白身の繊細な甘さが、葉の青みと合っている。鶏の笹身より奥行きがある。焼肉屋で出せる味だ)
ルカに渡した。ルカが口に入れた。
止まった。
耳が、両方、ぴんと立った。尻尾が一度、大きく揺れた。
ルカ:「……なんやこれ」
ヨーヘイ:「旨いですか」
ルカ:「めちゃくちゃ旨い。なんで? さっきまであんな普通の魔物やったのに」
ヨーヘイ:「包んで蒸らしたからです。肉汁が逃げていないので、旨みがそのまま残っています」
ルカ:「葉っぱと皮で包んだだけで、こんなに変わるん」
ヨーヘイ:「変わります。熱の入れ方と、水分を逃がさないことが全部です」
ルカ:「……ヨーヘイさん、冒険者になる前は何してたん」
ヨーヘイ:「……色々です。今は関係ありません」
ルカ:「なんで教えてくれへんの」
ヨーヘイ:「……いつか、話します」
フィンの前に一切れ置いた。鼻で確認してから、静かに食べた。「キュッ」と鳴いた。
ヨーヘイ内心:(焼肉屋で出せる。こういう白身肉に合う、柑橘系の搾り汁が欲しい。蓮は甘いタレが好きだったが、この肉はシンプルな酸味が合う。そういうことを、教えてやりたい。まだそれは、先の話だ)
解析:「……ルカさんの感知適性が本来の用途で機能しています。この葉の香気成分が、熱で揮発して肉に転移しました。類似の調理法は——」
ルカ:「っ——今、長い文が来た! 単語じゃなかった!」
ヨーヘイ:「気のせいです」
ルカ:「絶対ちゃうで! 類似の調理法とか言うてた! どこの調理法やねん!」
ヨーヘイは一瞬、目を伏せた。
ヨーヘイ:(解析さん、出しすぎです)
声には出さなかった。
解析:「……業務の範囲内です」
ルカ:「また声がした。今度は短かった。……そのスキル、なんで業務とか言うん?」
ヨーヘイ:「……そういうスキルなので」
ルカ:「スキルが『業務の範囲内です』って言うん?」
ヨーヘイ:「言います」
ルカ:「……それ、絶対おかしいで」
リリア:「……私も最初はそう思いました」
ルカ:「リリちゃんは慣れたん?」
リリア:「……慣れました」
ルカ:「……どのくらいかかった?」
リリア:「……まだ慣れていない部分もあります」
ルカが吹き出した。
◆ 帰り道
帰りはウラベダンの入口を遠回りして戻った。
ルカが「また来んの?」と聞いた。ヨーヘイは「来ます。次はもう少し体力に余裕を持って、複数体に当たれるか確かめたい」と答えた。ルカが「次は1発で仕留める。感情が乗りすぎたのが原因やから、今度は抑える」と言った。耳は立ったままだった。
ルカがリリアの隣に並んだ。
ルカ:「リリちゃんって、いつもあんな感じで戦うん?」
リリア:「……あんな感じ、とは」
ルカ:「引かんやん。シロバラがこっち向いてる時、ずっと前に出てた」
リリア:「……引いたら、ヨーヘイさんが刺せなかったので」
ルカ:「……怖くなかったん?」
リリア:「……怖かったです」
ルカが少し黙った。
ルカ:「……そっか」
道の途中で、フィンの耳が一瞬、南を向いた。
ヨーヘイは気づいた。リリアも気づいた。ルカは——少し首を傾けた。
誰も何も言わなかった。
ヨーヘイ:(解析さん)
解析:「……」
それだけだった。何も言わなかった。でも沈黙が来た、ということは、何かあった、ということだ。
フィンの耳が戻った。3人がまた歩き始めた。
ヨーヘイ内心:(また、か。まだ、ここにいる。それだけだ)
ベルネの城門が見えてきた。前に来た時は圧倒された。今日は普通に大きいと思った。それだけだった。
◆ 炊事場・夜
4人分の肉を切った。
今日解体したシロバラの残り。腹肉は昼に使ったから、夜は尾肉と肝にした。
尾肉はコラーゲンが多い。切ると断面からゼラチン質が見えた。
ヨーヘイ:「尾肉は今日は炭火焼きにします。本当は長時間煮込むとコラーゲンが溶けて別の旨さが出るんですが、今夜は時間がないので。次の機会に」
ルカ:「煮込むって、どのくらい?」
ヨーヘイ:「最低2時間はかけたい。とろとろになるまで」
ルカ:「2時間。長いな」
ヨーヘイ:「長いです。でも待った分だけ変わります」
ルカ:「……ヨーヘイさん、それ料理の話してる?」
ヨーヘイ:「尾肉の話です」
ルカ:「なんか人生みたいやった」
ヨーヘイ:「……そうかもしれません」
ルカが炭火を見た。魔法を撃った右手を、膝の上に置いていた。指先が、少しだけ白かった。
ヨーヘイ内心:(魔力切れは、体に来るんだな)
肝を油で焼いた。ジュ、という音が来た。表面が締まって、断面から汁が来た。コガネ草油の香ばしい匂いが炭の煙に乗った。
フィンが「キューン」と鳴いた。
ヨーヘイ:「順番がある。待て」
フィン:「キュッ」
ルカ:「フィン、怒られてる」
リリア:「……いつもです」
ルカが吹き出した。
ヨーヘイがルカの前に一切れ置いた。ルカが口に入れた。少し間があった。
ルカ:「……旨い。なんで? 昼のもうまかったのに、また別の旨さや」
ヨーヘイ:「コガネ草油が合っています。脂が少ない肝に香ばしさを足すと、旨みが倍になります」
ルカ:「また説明してる」
ヨーヘイ:「食べながら考えるのが好きなので」
ルカ:「……変な人やな」
ヨーヘイ:「よく言われます」
リリアが静かに尾肉を取った。フィンが炭火の前でじっと待っていた。
解析:「……ルカさんの魔力残量、62%まで回復しました」
ルカ:「っ……また声がした。今度はちゃんと聞こえた。数字まで」
ヨーヘイ:「気のせいです」
ルカ:「絶対気のせいちゃう! 62って言った!」
リリア:「……私には聞こえません」
ルカ:「なんでリリちゃんには聞こえへんの?」
リリア:「……分かりません。ずっとそうです」
ルカがヨーヘイを見た。ヨーヘイは炭火を見ていた。
ルカ:「……ヨーヘイさんは分かるん?」
ヨーヘイ:「……まだ、説明できないことがあります。今夜は食べましょう」
ルカ:「……それ、いつか説明してくれるん?」
ヨーヘイ:「いつか、します」
ルカ:「……約束やで」
フィンの前に一切れ置いた。鼻で確認してから、静かに食べた。「キュッ」と鳴いた。
4人で食べた。外が暗くなった。炊事場に肉の匂いが残っていた。ルカが「また明日」と言って出ていった。扉が閉まって、3人と1匹になった。
フィンが扉の方を一度見た。
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【第46話 リザルト&ステータス】
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▼ ヨーヘイのステータス(本話終了時点)
Lv:20 HP:350/350 MP:165/165
スキル熟練度(本話で動いたもの):
・《瞬歩》Lv1 42/100(+3)
・《解体》Lv2 35/100(+3)
・《料理》Lv2 45/100(+3)
・その他:変動なし
▼ 本話の収支
・収入:なし(シロバラ素材は炊事場保管・換金は次話以降)
・支出:なし
・本話終了時手持ち:1,033枚(変動なし)
▼ 収納アイテム(前話からの変動分)
・追加:シロバラ紫紺ウロコ(数枚)・シロバラ皮(使用分除く)・シロバラE(中)魔石×1
・消費:コガネ草油(少量)・岩塩(少量)
・変動なし:その他前話からの持ち物
▼ 本話の出来事
・シロバラ(Eグレード正規)を討伐。ルカの魔法が初実戦で想定の1.6倍の出力が出た。
・白身肉を葉とシロバラの皮で包む現地調理。「包んで蒸らす」という発想に4人が初めて触れた。
・帰り道、フィンの耳が南を向いた。解析は沈黙した。ルカは「気づいたかもしれない」。
・ルカが解析の声を文章として感知し始めた。「いつか説明する」とヨーヘイが約束した。
▼ ヨーヘイの考察
解析さん、記録します。
シロバラを倒しました。ルカさんの魔法がでかかった。「感情が乗るとブレる」、本人も分かっていると言っていました。分かっていても出てしまう、というのは、なかなか難しい問題だと思います。次は抑えると言っていました。信用できる人だと思います。
白身肉を包んで焼きました。皮が器になりました。葉の香りが移りました。ルカさんが「めちゃくちゃ旨い」と言いました。リリさんが「葉の匂いがいい」と言いました。両方正しいです。
帰り道でフィンの耳が南を向きました。解析さんは何も言いませんでした。ルカさんが首を傾けていました。分かっていたかもしれません。
ルカさんが「約束やで」と言いました。記録します。いつか、説明します。
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次話もヨーヘイと解析さん(とフィン)にお付き合いください。




