第16話−1 蒼魔鉄と焼き鳥と ― 武器屋の、奥の棚
◆ 朝
窓の外を確認するのが、いつの間にか朝の最初の動作になっていた。
通りは静かだ。昨夜の行商の爺さんは夜明け前に出発したらしく、荷車の轍だけが土に残っている。人の気配は遠い。
ヨーヘイは窓から離れ、荷物を確認した。短剣。包丁。採取へら。冒険者証。ポーション。解毒薬。武器屋への紹介状。F魔石が3個。E魔石(小)が1個。
今日やることは3つある。
ヨーヘイ:「武器屋。依頼。東縁」
声に出すと頭が整理される。順番が決まると体が動く。
フィンが毛布の端から顔を出した。大きな耳が右に傾いた。
ヨーヘイ:「起きてたのか」
フィン:「キュッ」
了解、という声だ。体で覚えた。
◆ 食堂
リリアがすでにテーブルについていた。両手でコップを持って、ゆっくり水を飲んでいる。今日は静かな朝だ、とヨーヘイは思った。昨日のことを整理している顔だ。
サーラが台所から顔を出した。
サーラ(女将):「おはよ。今日はどこ行くんだい」
ヨーヘイ:「東縁です。その前に武器屋に寄ります」
サーラが目を細めた。何も言わなかったが、パンを一枚多く置いた。
リリアがコップから顔を上げた。
リリア:「……一緒に、行っていいですか」
ヨーヘイ:「もちろんです」
フィンがテーブルの端に飛び乗り、リリアの前に座った。リリアのパンを見ている。
リリア:「……あなたの分は、ないですよ」
フィン:「キューン」
リリアが小さく笑った。
◆ ラルフ
武器屋は村の外れにある。ラルフに「行くなら声をかけてくれ」と言われていた。道具屋の引き戸を開けると、ラルフがすでに上着を羽織って立っていた。
ラルフ(道具屋):「……来ると思っていました」
ヨーヘイ:「読まれてましたか」
ラルフ(道具屋):「……昨日、紹介状を渡した日に来ない人間はいません」
それだけ言って、ラルフが先に歩き始めた。
リリアがラルフの背中を見た瞬間、ラルフが振り向いた。0.3秒で耳まで赤くなった。5回目だ。
ヨーヘイ:(5回目。昨日の東縁の緊張も、追っ手の気配も全部知らずに、0.3秒で赤くなった。情報量の差がひどい。ラルフさんの世界にはリリさんしかいないのかもしれない。ある意味、すごい)
ラルフがすぐ前を向いた。歩幅が少し早くなっている。
村の外れに近づくにつれて、金属の焦げるような匂いが漂ってきた。鉄だ。油だ。炭の匂いがする。
ヨーヘイ:(この匂い、好きだ。工場の近くにいた頃に嗅いだ匂いに似てる)
◆ 武器屋
扉は分厚い木材でできていた。金属の蝶番が黒く光っている。
ラルフが扉を叩いた。3回、間隔が均等だ。
足音が聞こえた。重い。一歩ずつ、しっかりと地面を踏んでいる足音だ。
扉が開いた。
ヨーヘイ:(——)
出てきたのは、小さかった。
ヨーヘイの胸あたりまでしかない。でも横幅が、違う。肩幅がヨーヘイより明らかに広い。首が短くて、顎が四角い。手が——手がでかい。指が太い。節が盛り上がっている。長年鉄を握り続けた手だ。そして。
髭。
顎から胸元まで、赤茶けた太い髭が束になって垂れている。手入れはされているが、量がすごい。エプロンは黒く煤けていて、布目に鉄の粉が詰まっている。
ヨーヘイ:(で、で、で——)
解析の声:「ドワーフです。鍛冶・採掘・工芸に特化した種族。平均身長は人間の3分の2程度。筋力・持久力は人間の1.5倍以上。職人気質で寡黙な個体が多い傾向があります」
ヨーヘイ:(ドワーフだ——!!本物のドワーフだ——!!ゲームで何百回も見た、映画で何十回も見た、あのドワーフが、エプロンを着て、鉄の粉を手につけたまま俺を見ている——!!髭がすごい——!!あの髭の束はなんだ——!!どうしろというんだ——!!平静を保て、平静を保て、44歳だぞ俺は——!!)
顔には出なかった。たぶん。
ドンネ(鍛冶師・ドワーフ):「……ラルフか」
声が低い。腹の底から出ている声だ。
ラルフ(道具屋):「紹介した冒険者です。Gランクですが、成長が——」
ドンネ(鍛冶師・ドワーフ):「うるさい」
ラルフが固まった。
ヨーヘイ:(うるさい。ドワーフが「うるさい」と言った。ドワーフが喋った。ドワーフが日本語で——いや異世界語か——とにかく喋った——!!平静を保て——!!)
ドンネがヨーヘイを一度見た。値踏みするような目だ。怒っているわけではない。ただ、見ている。その目がまた髭の上にある。髭がある。髭がすごい。
ドンネ(鍛冶師・ドワーフ):「紹介状」
ヨーヘイが差し出すと、ドンネは一読した。折り目をつけずに返した。
ドンネ(鍛冶師・ドワーフ):「入れ」
ヨーヘイ:(入れと言われた。ドワーフの工房に入れる。俺は今からドワーフの工房に入る——!!)
店の中に入った瞬間、鉄と油と炭の匂いが一気に濃くなった。奥に炉がある。今は火が落ちているが、石の壁が熱を帯びている。壁沿いに剣が並んでいる。短剣、中剣、長剣。斧が2本。弓が棚の上に横積みされている。槍は奥の壁に立てかけられていた。
ヨーヘイ:(本物だ。全部本物だ。ドワーフが作った武器が壁に並んでいる。ここは異世界で、俺は今ドワーフの工房にいる。44歳の元会社員が。信じられない。信じられないが信じるしかない)
ヨーヘイは中剣の棚に目が行った。手前のものは鉄の色が灰色だ。奥のものは少し違う。青みがかっている。
ヨーヘイ:(あれだ)
ヨーヘイ:「奥のものを見せてもらえますか」
ドンネが顎で促した。
手に取った瞬間、息が少し止まった。
重さは支給品と大差ない。でも何かが違う。手首にかかる重心の位置が違う。柄を握りなおした。手のひらの真ん中に重さが乗っている。支給品は指先で支えている感じがあったが、これは違う。握った、というより、持たされている。
ヨーヘイ:(なんだ、これ)
解析の声:「素材純度、通常の鉄の1.4倍です。魔石成分が微量含有されています。魔物への食いつきが異なります」
ヨーヘイ:(体で分かった。言葉がなくても分かった。でも解析さんが言語化してくれると、分かったことがもう一度地面に落ちる感じがする。……これをドワーフが作ったのか。ドワーフが作った蒼魔鉄の中剣を、俺が今握っている。なんだこの状況は)
ドンネ(鍛冶師・ドワーフ):「蒼魔鉄だ。普通の鉄とは響きが違う」
もう一度、柄を握った。今度は少し力を入れて。手の中で何も動かない。ぴたりと収まっている。
ヨーヘイ:(欲しい。値段を聞く前から分かっている。欲しい。ドワーフが作ったものが欲しい。この気持ちに理性が追いついていない)
ドンネ(鍛冶師・ドワーフ):「150枚だ」
ヨーヘイは手持ちを計算した。今の手持ちは170枚。E魔石(小)の換金で30枚が入る予定だ。槍は80枚。合計230枚。今すぐは足りない。
ヨーヘイ:「……依頼を3件こなしてから戻ります」
ドンネ(鍛冶師・ドワーフ):「取り置きはしない」
ヨーヘイ:「それでも」
ドンネが少し間を置いた。
ドンネ(鍛冶師・ドワーフ):「……勝手にしろ」
ヨーヘイ:(これが取り置きしてくれるということだ。ドワーフが「勝手にしろ」と言った。ドワーフの「勝手にしろ」は了承だ。俺は今ドワーフと取引をした)
その時、リリアが奥の壁に立てかけられた槍を見ていた。距離を置いて、ただ見ている。手は出していない。
ドンネ(鍛冶師・ドワーフ):「構えてみろ」
リリアが振り向いた。ドンネが顎で槍を指している。
リリア:「……いいんですか」
ドンネ(鍛冶師・ドワーフ):「見てるだけなら帰れ」
リリアが槍を手に取った。木製の柄だ。穂先は鉄。安価なグレードだが、しっかりした作りだ。
リリアが構えた。
一瞬で姿勢が変わった。背筋が伸び、足が肩幅に開き、穂先が正面を向いた。朝、廊下で一人で練習していた、あの構えだ。
ドンネが動きを止めた。
リリアを見ている。構えを、見ている。値踏みするような目ではない。職人が素材を確かめる時の目だ。
3秒ほど、無言だった。
ドンネ(鍛冶師・ドワーフ):「……悪くない」
ヨーヘイ:(ドンネさんが自分の目で見て、自分で判断した。ラルフさんに何も聞かずに。ドワーフの名工の「悪くない」は、それだけで全部だ)
リリアが穂先をゆっくり下ろした。頬がわずかに赤い。
リリア:「……ありがとう、ございます」
フィンがドンネの手元をじっと見ていた。鼻が動いている。
ヨーヘイ:(フィン。この人はドワーフだ。鉄を打っている人だ。肉の匂いはしない)
フィン:「キュッ」
ヨーヘイ:(分かった上で嗅いでるのか)
◆ ギルド
ミナが顔を上げた。
ミナ(受付):「おはようございます。今日はどうされますか」
ヨーヘイ:「E魔石(小)の換金と、依頼を2〜3件まとめて受けたいんですが」
ミナ(受付):「E魔石(小)ですね。少々お待ちを」
ミナが魔石を鑑定した。普通品と判定された。換金額は30枚。
ミナ(受付):「30枚になります。受け取り方はいかがしますか」
ヨーヘイ:「銅貨で全部お願いします」
手持ちが200枚になった。中剣と槍で230枚。あと30枚足りない。
フィンが掲示板の前で止まった。大きな耳が動く。「キュッ」と短く鳴いた。
ヨーヘイ:(食材の匂いがするクエストを嗅ぎ分けてるんじゃないだろうな)
ミナが掲示板の前に来た。
ミナ(受付):「今日のお薦めで言いますと——薬草採取が1件、クロアシイタチの討伐が2件出ています。どれも東縁エリアです」
ヨーヘイ:「3件全部受けます」
ミナ(受付):「……3件同時ですか。無理はしないでくださいね」
ヨーヘイ:「はい。フィンがいるので索敵は大丈夫です」
ミナがフィンを見た。フィンが「キュッ」と鳴いた。
ミナ(受付):「……頼もしいですね」
少し間があった。ミナが台帳を閉じながら、さりげなく言った。
ミナ(受付):「依頼、13件になりますね。あと2件です」
事実として言っている声だった。励ましでも気遣いでもなく、記録として認めている。それがかえって、すとんと来た。
ヨーヘイ:(13件。ミナさんに手続きを全部教えてもらったあの日から、13件になった。あと2件だ)
ヨーヘイ:「ありがとうございます」
ミナ(受付):「いってらっしゃいませ」
◆ 東縁
東縁に入ると空気が変わった。草の匂い、土の湿り気、遠くで鳥が鳴いている。
解析の声:「北東方向、人間の反応が1つ。昨日より遠ざかっています。東縁への影響は低いと判断します」
ヨーヘイ:(追っ手は北縁側に移動している。今日が東縁のチャンスだ)
フィンの耳が前を向いた。鼻が動く。食用系の反応だ。
薬草を採取しながら進んだ。カイフクソウが群生している場所をフィンが先導した。9束採取した。
クロアシイタチは2体、別々に討伐した。フィンが先に察知して耳の向きで位置を示した。解析さんが「単体です」と確認を出した。1体ずつ仕留めた。
支給品の短剣で十分だった。でも、今日初めてそれを物足りないと思った。
ヨーヘイ:(あの手応えで戦えたら、どうなるんだろう。ドワーフが作った蒼魔鉄で)
依頼3件を終えて戻ろうとした時、フィンが止まった。
フィン:「キュウッ!」
警戒音だ。ヨーヘイも足を止めた。リリアが無言で槍の柄に手を添えた。まだ抜かない。でも構えた。
解析の声:「魔物の反応ではありません。……足跡です」
フィンが鼻を地面に近づけた。耳が左右に動いている。ゆっくりと、念入りに、匂いを吸い込んでいる。
地面に跡があった。丸い。大きい。
ヨーヘイは一度、自分の顔に手を当ててから、もう一度足跡を見た。
ほぼ同じだ。顔ほどある。蹄の形で、踏み込みが深く、地面がしっかりへこんでいる。前回見た場所と同じだ。
土が新しい。
ヨーヘイ:「……また来てる」
声に出た。
リリア:「……同じ足跡、ですか」
ヨーヘイ:「同じ場所で、土が新しい。生きてる」
リリアが足跡を見た。視線が下りたまま、少し止まった。
リリア:「……大きいですね」
ヨーヘイ:(ヤキボアじゃない。ヤキボアの足跡の倍以上ある。クロトカゲでもない。この辺に、まだ見ていない何かがいる)
解析の声:「未確認です。接触は現時点では推奨しません」
ヨーヘイ:(分かってる。今日は追わない。でも場所は覚えた)
フィンがまだ地面を嗅いでいた。尾が小さく揺れている。全身で匂いを記録している顔だ。しばらくして、フィンがヨーヘイを見上げた。
ヨーヘイ:「今日は帰る」
フィン:「キュッ」
◆ 武器屋、もう一度
ギルドに寄って依頼の完了報告をした。3件分の報酬と薬草の換金を合わせて、手持ちが240枚を超えた。
足がもう武器屋に向いていた。
扉を叩くと、今度は少し早く開いた。
ドンネ(鍛冶師・ドワーフ):「……来たか」
ヨーヘイ:「中剣と、槍をください」
ドンネが何も言わずに奥に引っ込んだ。重い足音が遠ざかって、また戻ってくる。布に包んだ中剣と槍を持ってきた。朝と同じ品だ。取り置きはしないと言っていたが、ちゃんとあった。
ヨーヘイ:(ドワーフが約束を守った。当たり前のことだが、ドワーフが約束を守ったという事実が、なぜか胸に来る)
ドンネ(鍛冶師・ドワーフ):「合わせて230枚だ」
銅貨を数えて渡した。ドンネが指で確認した。過不足なかった。
ドンネ(鍛冶師・ドワーフ):「手入れを怠るな」
リリアに向けて言っていた。
ヨーヘイ:(朝からリリさんの構えを気に入ってたんだ。ドワーフの職人がそれを言葉にするのは、たぶんこれが最初で最後だ。ドワーフの「悪くない」と「手入れを怠るな」は、他の誰かの「すごい」や「大切にして」より重い気がする。根拠はない。でもそう思う)
リリア:「……はい。大切にします」
ドンネ(鍛冶師・ドワーフ):「手入れの仕方は分かるか」
リリア:「……一通りは」
ドンネ(鍛冶師・ドワーフ):「ならいい」
それだけ言って、扉が閉まった。
重い足音が奥に遠ざかっていく。
◆ 帰り道
村の外れの道で、リリアが立ち止まった。
ヨーヘイも止まった。
リリアがゆっくり槍を構えた。穂先が空に向く。一度、水平に戻す。そのまま前を向いて、静止した。
風が少し吹いた。リリアの金髪が揺れた。
ヨーヘイ:(この人は、ああいう顔をするんだ)
何かを決めた顔だ。怖さがないわけじゃない。でも、前を向いている。
リリア:「……ヨーヘイさん」
ヨーヘイ:「はい」
リリア:「……行きましょう」
フィンが先を歩いた。耳が前を向いている。
ヨーヘイは蒼魔鉄の中剣に手を添えた。まだ鞘に入ったままだ。でも重さが違う。朝、初めて握った時の感覚がまだ手のひらに残っている。ドワーフが作った。この重さは、ドワーフが作ったものの重さだ。
ヨーヘイ:「明日、使います」
誰に言ったわけでもなかった。でも声に出すと、地面に落ちた。
夕方の光が通りを染めていた。どこかで夕食の支度の匂いがする。蓮が好きだったカルビの匂いには似ていない。でも、食べ物の匂いはいつも、あの夜に戻る。
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【第16話−1 リザルト&ステータス】
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▼ ヨーヘイのステータス(16-1終了時点)
Lv:4 HP:135/135 MP:60/60
スキル熟練度:
・《解析》Lv1 熟練度 66/100(+1)
・《収納》Lv1 熟練度 26/100(+1)
・《採取》Lv1 熟練度 44/100(+3)
・《解体》Lv1 熟練度 31/100(+2)
・《料理》Lv1 熟練度 13/100
・《従魔契約》Lv1 熟練度 10/100(+1)
・《瞬歩》Lv1 熟練度 3/100
・《二刀流》Lv1 熟練度 0/100
▼ 本話の収支
・E魔石(小)換金 30枚
・依頼報酬(クロアシイタチ2体討伐+薬草採取・手数料後) 約40枚
・薬草換金(カイフクソウ9束) 約27枚
・小計 +約97枚
・中剣(蒼魔鉄)購入 ▲150枚
・リリア槍(木製柄+鉄穂先)購入 ▲80枚
・16-1終了時手持ち 約47枚
▼ 依頼達成数:13件(累計) Fランク昇格まであと2件
▼ 装備更新
・ヨーヘイ:蒼魔鉄中剣(新規購入・ドワーフ作)・短剣(予備として保持)
・リリア:木製柄+鉄穂先の槍(新規購入・ドワーフ作)
▼ 本話の出来事
・武器屋ドンネ(鍛冶師・ドワーフ)に初訪問・紹介状持参
・ドワーフとの初対面:ヨーヘイ内心大爆発
・午前:蒼魔鉄中剣・リリア槍の実物確認(購入は依頼後に持ち越し)
・ドンネがリリアの構えを見て「悪くない」と評価
・東縁:クロアシイタチ2体討伐・薬草採取・依頼3件達成(累計13件)
・足跡再確認:前回と同じ場所・土が新しい・リリアも確認
・午後:中剣(蒼魔鉄・150枚)・リリア槍(80枚)購入
・スクショシーン:リリアが村の外れで槍を構える場面
▼ 新登場NPC
・ドンネ(鍛冶師・ドワーフ):ラルフの旧知。村の外れ。身長はヨーヘイの胸あたり・肩幅広い・赤茶の太い髭・手に古い火傷の跡。無口・短い言葉のみ。「うるさい」と「悪くない」の人。ドワーフの名工。
▼ インベントリ(16-1終了時)
・蒼魔鉄中剣×1(新・ドワーフ作)
・短剣×1(予備)
・包丁×1
・採取へら×1
・冒険者証(Gランク)
・ポーション×1
・解毒薬×1
・F魔石×3個(換金不可・昇格審査用)
・リリア所持:木製柄+鉄穂先の槍×1(新・ドワーフ作)
▼ ヨーヘイの考察
解析さん、記録します。
武器屋のドンネさんはドワーフでした。ドワーフが目の前にいました。胸あたりまでしかないのに肩幅が俺より広くて、赤茶の太い髭が胸元まで垂れていました。解析さんが「ドワーフです」と言わなくても分かりましたが、言ってもらって助かりました。平静を保つのに全力が要りました。
ドンネさんの蒼魔鉄の中剣を握った瞬間に分かりました。重さが違う。バランスが違う。握った、というより、持たされている感覚でした。ドワーフが作ったものが手の中にある、という感覚は、なんというか、格が違いました。
ラルフさんが説明しようとするたびに「うるさい」と言いました。1回。ラルフさんは固まりました。でも、リリさんが槍を構えた時、ドンネさんは何も聞かずに自分の目だけで「悪くない」と言いました。ラルフさんに家柄も何も聞かずに。ドワーフの名工が自分で判断した。それがどういうことか、少し分かった気がします。
東縁で足跡を確認しました。前回と同じ場所で、土が新しい。今日は追えませんでした。でも場所は覚えました。
中剣と槍を買いました。帰り道、「明日、使います」と声に出しました。ドワーフが作ったものを、明日使います。
以上、記録終わり。
【第16話-1】蒼魔鉄と焼き鳥と ― 武器屋の、奥の棚
「ドワーフだ——!!本物のドワーフだ——!!」
44歳の元会社員が、ゲームでしか見たことがなかった存在と初めて目が合った日です。外面は平静でした。たぶん。
ドンネさんの「悪くない」は、この人の最高評価です。リリアはその言葉を、両手でカードを受け取るように受け取りました。




