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異世界の魔物肉、全部うまい。帰れないアラフォーパパ、冒険者しながら焼肉屋はじめました  作者: きりざく
2章

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第13話−3 はじまりの火 ― 北縁の、思わぬ収穫

◆ 午後の出発



 昼を過ぎた頃、リリアが一階に降りてくる。


 顔色がいい。午前中ゆっくり休んだ分、昨日より目に力がある。


リリア:「……午後から、出ますか」


ヨーヘイ:「出ます。今日は北縁に変えます」


リリア:「……北縁」


ヨーヘイ:「東縁より地形が複雑ですが、採取ポイントが多いらしいです。フィンの鼻があれば問題ないと思います」


 フィンが「キュウッ!」と鳴いた。名前が出た瞬間に反応するのはいつもどおりだ。


ヨーヘイ:(信頼してるよ。ちゃんと)


 道具袋を確認する。短剣、包丁、採取へら、ポーション1本。宿代のツケを今日中に返すために、稼げるだけ稼ぐつもりだ。


ヨーヘイ:「行きましょうか」


リリア:「……はい」


 2人と1匹で宿を出る。



◆ 北縁



 北縁は、東縁より木が多い。


 背の高い樹木が所々に立っていて、その根元に草が茂っている。地形が起伏していて、小さな丘と窪地が交互に続く。東縁の開けた草地とは全然違う空気がある。


ヨーヘイ:「解析さん、この辺りの魔物の出現域は」


解析の声:「ホーンラビットが主です。北縁は地形の関係で単体行動が多く、群れを引き連れるリスクは東縁より低いと思われます。ただし視界が悪いため、背後からの接近に注意が必要です」


ヨーヘイ:(視界が悪い。リリさんの後方支援が今日も活きる)


ヨーヘイ:「リリさん、今日も同じ役割でお願いします。後ろと側面を見ていてください」


リリア:「……分かりました」


 昨日より返事が早い。


 フィンが先に走り出した。鼻が地面スレスレになっている。採取ポイントを探している時の動きだ。


ヨーヘイ:「今日は討伐だけじゃなく採取も全力でいきます。フィンについていきましょう」



◆ 討伐



 最初のホーンラビットは、丘の裏側にいる。


 フィンが丘の手前で止まって、耳を立てた。「キュッ」と短く鳴く。


ヨーヘイ:(あそこにいる、という合図だ。すっかり分かるようになった)


 丘を回り込む。草の陰に白い体が見えた。


 フィンが横に走って注意を引く。ヨーヘイが踏み込んだ。一撃。


 2体目は窪地の底にいた。リリアが「右の草むらから来ます」と声を上げた瞬間に振り向いて、回避しながら仕留める。


ヨーヘイ:(昨日より声が早い。慣れてきてる)


 3体目は木の根元で休んでいた。フィンが根の反対側から回り込んで追い出す連携で、あっさり片がついた。


 4体目。5体目。


 北縁の地形が複雑な分、ホーンラビットが分散している。1体ずつ確実に仕留められる。東縁より安全かもしれない。


 6体目は少し手こずった。


 草が高い窪地で、突進の予備動作が見えにくかった。角が脇腹スレスレをかすめた。


ヨーヘイ:(っ、近い)


リリア:「レンさん!」


ヨーヘイ:「大丈夫です」


 体制を立て直して、今度は確実に仕留めた。


ヨーヘイ:(6体。今日はこれでいい。無理をするな)


解析の声:「ホーンラビット6体討伐完了。依頼達成条件を満たしています」


 その場で解体に入る。包丁を出して、1体ずつ処理していく。


 魔石は首の付け根の奥、硬い組織に守られた小さな結晶だ。包丁の先で慎重にこじり出すと、親指の頭ほどの大きさで、鈍く灰色に光るそれが出てくる。


 6体分を取り出して、収納に入れた。内臓も同時に回収する。レバーとハツが今日も揃った。



◆ フィンの鼻



 討伐が終わると、フィンが動き始める。


 さっきまでの戦闘支援モードとは別の動きだ。鼻を地面に近づけて、くんくんと嗅ぎながらゆっくり歩いていく。採取モードだ。


ヨーヘイ:「行くぞ、フィン。リリさんも続いてください」


 フィンについていく。北縁の木立の中を、フィンが迷いなく進んでいく。左に折れて、小さな丘を越えて、窪地の底に降りたところで止まった。


 草の中に、白い花が点々と咲いている。


ヨーヘイ:「……カイフクソウだ。群生してる」


解析の声:「カイフクソウの群生地です。目視で12束以上の採取が可能です」


ヨーヘイ:「……12束もあります。東縁でいつも5束がやっとだったのに」


 リリアが採取へらを構えた。


リリア:「……手伝います」


ヨーヘイ:「お願いします。根を傷つけないように、斜めから入れて」


 二人で丁寧に採取していく。リリアの手つきが相変わらず整っている。育ちの良さが出る場面だ。


ヨーヘイ:(こういう仕事が上手い人は、どこでも重宝される)


 フィンが今度は別の方向に歩き出した。


ヨーヘイ:「……まだあるのか、こいつ」


 フィンの後をついていく。木立を抜けた先の岩場の際に、見覚えのある葉の形がある。


ヨーヘイ:「……ツキシロソウだ」


解析の声:「ツキシロソウを確認。3束の採取が可能です。なお、根はエリクサー素材ですが現状の装備では採取が難しい状況です」


ヨーヘイ:「葉だけでも十分です。リリさん、一緒に採りましょう」


 ツキシロソウを丁寧に3束。根はまだ届かない。でも場所は覚えた。


ヨーヘイ:「フィン、よく見つけた」


 フィンが「キュウッ!」と鳴いて、尾をぱたぱたさせた。


 さらにフィンが動く。今度はカゲダケだった。岩の影に5束。


ヨーヘイ:(こいつの鼻、どこまで精度があるんだ)


解析の声:「《採取》熟練度が31/100に上昇しました」


 リリアが採取したカゲダケを束にまとめながら、フィンを見ていた。


リリア:「……フィンがいると、全然違いますね」


ヨーヘイ:「そうなんですよ。この子のおかげで採取効率が全然違う」


リリア:「……すごい子です」


 フィンがリリアを見上げて、「キュッ」と鳴いた。褒められたのが分かる顔だ。



◆ 換金



 ギルドに戻った時、ミナが荷物を見て少し目を丸くする。


ミナ(受付):「今日は……随分と」


ヨーヘイ:「北縁に行きました。フィンのおかげで採取量が増えました」


 荷物をカウンターに並べた。G魔石×6、カイフクソウ12束、ツキシロソウ3束、カゲダケ5束。


 ミナが査定を始める。手際がいい。


ミナ(受付):「G魔石×6で54枚、カイフクソウ12束で24枚、ツキシロソウ3束で24枚、カゲダケ5束で10枚。合計112枚。手数料差し引きでお手取りは106枚になります」


ヨーヘイ:(106枚)


 数字が頭の中で展開する。宿代60枚。残りが46枚。解毒薬はまた次の依頼で。優先順位をつければいい。


ヨーヘイ:「ありがとうございます」


 リリアが横で、ミナの計算をじっと見ていた。


リリア:「……ツキシロソウは高いんですね」


ミナ(受付):「薬効が高いので。群生地を知っている採取者は少ないですから」


リリア:「……フィンが見つけてくれたんです」


ミナ(受付):「……賢い従魔ですね。ツキシロソウを嗅ぎ分けられる種は、珍しいと聞きます」


 フィンがヨーヘイの肩で「キュッ」と鳴いた。


ヨーヘイ:(お前、自分が褒められてるの分かってるよな、絶対!!)



◆ 返済



 ギルドを出て、宿に向かう。


 ラルフの道具屋の前を通りかかった時、ヨーヘイは少し足を緩めた。


ヨーヘイ:(解毒薬……まだ買えていない。でも今日は宿代の返済が先だ。残りは次の依頼で)


 足を止めずに通り過ぎた。


ヨーヘイ:(優先順位だ。今日できることをやる。全部は無理でも、順番をつければ前に進める)


 宿に戻ってサーラに60枚を渡す。


サーラ(女将):「……全部かい」


ヨーヘイ:「全部です。ありがとうございました、待っていただいて」


サーラ(女将):「……まあ、逃げなかったからね」


 サーラが銅貨を数えた。確認して、帳場の引き出しにしまった。


 手持ちが46枚になる。


 ゼロじゃない。借金もない。初めて、少しだけ先のことを考えられる気がした。


ヨーヘイ:(次は解毒薬だ。それが揃えば、もう少し遠くに行ける)



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【第13話−3 リザルト&ステータス】

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▼ ヨーヘイのステータス(13-3終了時点)

Lv:3 HP:105/118(6体目の接触で微減) MP:52/52


スキル熟練度:

・《解析》Lv1 熟練度 58/100(+1)

・《収納》Lv1 熟練度 21/100(+1)

・《採取》Lv1 熟練度 31/100(+2)★フィン案内で群生地複数発見

・《解体》Lv1 熟練度 17/100(+3)★6体解体

・《料理》Lv1 熟練度 7/100

・《従魔契約》Lv1 熟練度 2/100


▼ 本話の収支

・依頼報酬(G魔石×6):54枚

・カイフクソウ12束:24枚

・ツキシロソウ3束:24枚

・カゲダケ5束:10枚

・手数料差引後手取り:106枚

・宿代返済:▲60枚

・**手持ち:46枚**(初めて余裕のある残高)

・解毒薬:未購入


▼ インベントリ(13-3終了時点)

・短剣×1

・包丁×1

・採取へら×1

・冒険者証(Gランク・探索者)

・ポーション×1(未使用)

・ホーンラビットのレバー×6(鮮度保持中)

・ホーンラビットのハツ×6(鮮度保持中)

※解毒薬:未購入


▼ パートナー

・フィン(ツキシロソウ・カゲダケ・カイフクソウの群生地を3箇所連続発見。ミナに「ツキシロソウを嗅ぎ分けられる種は珍しい」と言及される)


▼ 新情報

・北縁エリア:カイフクソウ群生地・ツキシロソウ群生地・カゲダケ群生地を確認

・ツキシロソウ根(エリクサー素材)の場所を記憶。装備が揃えば採取可能

・宿代60枚のツケ:完済


▼ ヨーヘイの考察


 解析さん、記録します。


 北縁に行きました。フィンが3つの群生地を連続で見つけてくれました。カイフクソウ12束、ツキシロソウ3束、カゲダケ5束。東縁の倍以上の採取量です。ホーンラビット6体も討伐しました。6体目に少し接触しましたが大事には至りません。


 換金で106枚。宿代60枚を返しました。手持ちが46枚になりました。ゼロから46枚は、数字以上に違う感覚があります。次は解毒薬を買います。それが揃えば、もう少し遠くに踏み込めます。


 ミナさんがフィンのことを「ツキシロソウを嗅ぎ分けられる種は珍しいと聞きます」と言っていました。フィンの種別がまだ分かりません。でも、こいつが来てくれて本当によかったと思っています。


 サーラさんに宿代を全額返せました。「逃げなかったから」と言われました。それが全部です。


 以上、記録終わり。

【第13話-3】はじまりの火 ― 北縁の、思わぬ収穫


追っ手の気配が出てきます。


日常と非日常が同じ一日に混在している感じを、意識して書きました。ヤキボアという名前が初めて本格的に登場する回でもあります。

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