厄介な人達 カラフルなのは大体雄
カラフルなトラウト
雄の印、雌を誘うための色とも言う、自然界では割とよくある事
毒もなければ不味いわけでもない
「これと…これ、それとこの書類の返事を今日のお昼までに貰って来て頂けます?お昼までに返事が貰えない場合は融資等は全部打ち切りで、ごねてもその場で打ち切りを伝えて下さると。
それで今度はこちら、これは本宅にいる婦長に、後これは書いてある番号と同じ部屋に投函するように伝えてください、部屋を移動して逃げていたらこれと追加して直接叩きつける様にとも」
「はいはーい、それじゃちょっと行ってくるねー」
飛ばされた先で生活を始めて3日目、恵里香さんは大分順応したようで仕事のやり取りはルシフに丸投げ、基本的に書類の作成やら持ち込まれた書類の処理をする程度、仕事以外では娯楽が少なかったという問題も有ったが、ルシフが屋敷のゲーム部屋から魔改造済みのテレビやらゲーム機を持ってきたので解決、現状ではただ自然豊かな別荘に遊びに来た程度の感覚でしかない。
家にいる時と違って何時届くか分からない書類を待つ必要もないので、仕事量自体も減っている様子、なので時間がかなり余りまくっている現在、恵里香さんは休日を謳歌するように湖上に作った方のロッジでほぼ丸一日近く過ごしている、何やら水中に作ったガラス張りの部屋がお気に入りらしい。
水は澄んでいて綺麗だし、部屋の周りを魚が泳いだりしているので、それを眺めているだけでも癒されるし、夕日と共に湖の色が変わっていくのも良いとかなんとか。
ただ湖上に建てているという都合上、釣りをするのにもかなり良い場所になっているので弾に釣り上げられていく魚を見て微妙な気分になるとも言っていた…でもその釣られた魚を美味しそうに食べているので特に気にしてはいない…はず?
「そう言えばお嬢様、本宅本宅って言いますけど、普段住んでいる家が本宅じゃないんですか?」
「違いますよ?普段住んでいる家は別宅です、本宅は都心部にあります、本宅勤めの家政婦とかちゃんと居ますしね、書類上でも本宅は都心部にある家で、今住んでいる所は別宅となっています。
別宅は元々おじい様が住んでいたんですけど、おばあ様の実家を改築してそちらに移り住んだので恵里香が大学の時に譲り受けまして、改築をした後に諸々含めて私に譲渡された感じですね。
恵里香の両親も田舎で一軒家を構えてそこで住んでますし、私の父はもう絶縁済みなので今どこで何をしているかは知りませんし、本宅に住んでいるのは本来母だけのはず、なんですけどねぇ…
どうにも都内に住みたがる人が住みついてるんですよねぇ…家賃も食費もかからずに済むぞー、その他光熱費もろとももーって…」
「だから前からさっさと追い出せばいいって言ってるじゃないですか、プライドだけは100人前で業績は半人前以下で良くないんですから、下が有能なら上は無能でもの典型ですよあれ」
「でも下手に追い出すと後で何をするかわからないら、追い出そうにも追い出せないんですよねぇ…別に横領とかはしていないのでそれを理由に切って追い出すってのも出来ませんし…
プライドだけは高くて無能でも変な所で糞真面目なのは流石に…」
「まあ厄介にもほどが有りますよね、横領なりパワハラなりセクハラなり、何かしてくれれば一発退場をかませるんですけどねぇ」
「だから追い出そうにも追い出せないんですよねぇ…ちょうどいい口実が無いので…それ個人の業績は悪くても下が結果を出して結果的にはプラスになっているのでそれもまた何とも…会社全体に悪影響が有るならそれも口実にできますが…」
「どこか適当に社員寮でも作って放り込めばいいのでは?」
「無能でも一応グループを仕切っている一族の1人ですので、社員寮の入居はまず拒否されますね、プライドはクッソ高いので、あと何が酷いって一応妻子持ちで妻子もろとも転がり込んでますからね、それに不法滞在というわけでもないので結構難しいんですよ、一応おじいちゃんと血は繋がってますしね、ただ息子の一人が何の違法性も無く住み着いているだけですから。
うちの両親みたいに田舎に引っ込んでるのも居ますけどね、おじいちゃんも田舎に引っ込んでますし、後一族の真面な人たちは何故かやたらと身分を隠したがります、そして何故か中途半端に田舎な所に住居を構えます。
おじいちゃんはしがない町工場の一社員とか、おばあちゃんはそこの事務員とか、お父さんは小企業の平社員とか、お母さんもスーパーのパートだとか…別に嘘言ってるわけでもないから酷いんですよねこれ…
おじいちゃんはおばあちゃんと結婚して実際に町工場の一社員になってますし、おばあちゃんも後々事務員になりましたし?肩書きだけですけど…お父さんもお母さんも平とかパートとか言いつつただの職場の調査で身分を隠して乗り込んでいってるだけですからね、2人ともその小企業やスーパーを纏めている所の元締めですよ?元締めが末端の企業で平とかパートになって職場の調査って…ほんと…もう…」
「まあこんな感じで真面な一族な人も結構厄介だったりしますが、自分で土地を買って家を建てたりしてるので、何らかの事情が有って家に帰れなくなったとか、建て直し中でもない限りは本宅に来る事すらないですね。
問題は今現在本宅に住んでる人達ですねぇ…都心かつ本宅に住んでいるというのが自慢でもあるようですので、無理に追い出したらぶっ壊れて何かしでかすんじゃないでしょうかね…」
「何かいいアイデアないですかねぇ?採用されたらお給料がちょっと上がるかも知れませんよ、ちなみに物理的に首を挿げ替えるとか、こっそり始末して山中に埋めるとかはなしです、不幸な事故に有って貰うのも無しで、実行する人の手が汚れて可哀想なので」
「難易度高いですねぇ…ハニートラップを仕掛けるのは?」
「地味な所で糞真面目なので手を出しませんでした」
「適当な会社を作ってそこの頭に添えて会社を潰して責任を取らせるとか」
「都心部から動きたがらないのでやるとしたら都心の何処かに社を構える必要がありますし、それをやると飼い殺しにするより赤字が出ます、無理やり左遷というのも無理ですね、下が働き者で会社全体としては良い結果が出ちゃってますので、その結果を出している人を上に持ち上げて、居座っている座から蹴落とすと、それはそれであまり良い事にならないのはもうわかってますので、お給料を上げて納得して貰っています」
「リフォームと言って本宅を一度本当に更地にする」
「本宅の直ぐ脇に家政婦さんが住んでいる家が建っているのでそこに転がりこまれます、やるなら家政婦さん達が住んでいる家もぶっ潰さないと駄目ですね、後その間は家政婦さんの仕事もまあ…紹介すれば無くなりはしませんが、それ以前にワインセラーやら調度品やら、結構膨大な数の品々が有るので現実的ではないですね、保管して置く場所を借りるか作る必要もでますし」
「国外に支社を作ってそこに栄転という形で飛ばす」
「一度それをやって現地で良い人を見つけたから任せて帰ってきた、と言ってすぐ帰ってきました、一番笑えるのがその人がとんでもなく業績を伸ばして今や重役になっているって事ですよね、今や住み着いている人より立場が上です、なので栄転とか国外へ飛ばすとなると嫌がって引籠ります、でもその間はちょっと業績が伸びます」
「子供ですか…でも引籠っている間に業績が伸びているならいない方が良いって言ってきればいいのでは?」
「出社したらもっと業績が伸びるんですよ…下がお給料の多い会社を潰すまいと頑張るから…」
「何というか、居ない方が良いけど居たほうが会社全体の業績が結果的に伸びるとか…凄く厄介ですね」
「でしょー?だから中々家から追い出すいい口実が見つからないんだよね、個人だけだと業績が悪化する、居なくてもちょっとずつ伸びるけど、居たら居たで下が頑張るから凄く業績が伸びる、でも家に居座られると食費やら光熱費やら全部こちら持ちになっているので…」
「経費でどうにかなりません?」
「ならないですねぇ、会社の運営に必要な事ではないので、かといって出さないと困るのは住み込みで働く家政婦さん達ですからね、電気と水道を止めると家政婦さん達が洗濯や掃除が出来なくなりますし、お嬢様のお母様のお仕事もですねぇ…」
「つまりどうしようもないと?」
「簡単に言えばそうですね、うちは働きに見合った給料しか出してませんので、住み着いている人は立場上は重役っぽいですが、そこらの平より給料が低いですよ、保険料やら何やら全部抜いてもバイトの方が多いんじゃないですか?」
「それはまた…なんとも…それだと絶対に都心に住むことは出来ませんね…」
「増やしても本宅からは出ていきませんし、散財するだけなので限界ギリギリまで削ってます」
「それで納得しているというのも凄いですね、そこまで給料が低いとストライキなり労基が何だと言いそうですが」
「基準法には抵触していないので問題ありません、そもそも1日1時間も働かない人達です、お給料を出して上げているだけ優しいと思いません?時給は1000円ジャストです」
「それどうやって年金とかの支払いを…」
「タイムカードだけ押して帰ってきて、8時間後に押しに戻る様な感じです、世界一簡単なお仕事ですよ、タイムカードを押すだけって言う、後気が向いたらその日の業績を悪化させて下に負担をかけるだけのお仕事です」
「何というかもう…いろいろと駄目ですね…会社に来てないからクビとかは?」
「それを出来ていないのが答えですね」
「もう諦めません?こっそり始末して山に埋めるでもしないと、正攻法じゃどうにもなりませんって」
「話し合いの結果保留、暫くは本宅で飼い殺しに決定という事で、まあ何も変わらないという事ですね、そろそろルシフさんが帰ってくると思いますので今日の結果を聞けるとは思いますが」
「うん、まあ、何も変わらないね、皆出て行く気は無し、叩きつけた書類もどこ吹く風でごみ箱にイン」
「もう眠っている間に全員島流しにでもしてやりましょうか…」
「まああれがいるから下が頑張って業績が伸びてると思って我慢するしかないね、実際にその通りなんだけど。
それから融資先から貰って来たサンプルがこれ、返事が無かった所と後1ヶ月ーとか言ってた所は切ってきた」
「有難う御座います、期日は先月にとっくに過ぎてるのを待ってあげたんですけどね、それでも駄目ならもうどうやっても無理でしょう。
サンプルに関しては…んー…これならまあ良いでしょう、取り敢えず継続という事で、ここから劣化したりしたら即切る方向で」
「何の部品ですかそれ?」
「アナログ時計に使う歯車ですよ、工場で作る大量生産品ではなく、一つ一つ手作業で作るやつです、実用というよりは美術品に該当する物になりますかね?
要はお金持ち向けの商品です、ルシフさんが活動するときに身に着けている物ほどではないですが…それでも1200万位にはなるんじゃないですかね?」
「たっか…何所のブランドですか…」
「行きつけの時計店ですよ?」
「あぁ…あそこですか…あそこの店主ならまあ納得…ですかね?何年ぶりの新作になるんですかね?」
「限定100個で5年ぶりくらいですかね?1200万はあくまで希望価格なので、もっと上がるかも知れませんけどね」
「普通の小さい歯車にしか見えませんけど、何が違うんですかこれ?」
「これ全部プラチナですよ?それを欠けないよう傷つかないように加工してます、後輝きも失わないように。
組み立て終わったら時計内部は真空状態になりますので、その状態でも一切狂わず回り続けるようにしてあります、つまり馬鹿です」
「普通は見えない部分の歯車がプラチナって…」
「文字盤とかの一部に穴を空けて歯車を見える様にデザインしてあるんじゃないですか?秒針短針長針も純金、カバーに関しては流石にアクリル板でしょうけど、あえてダイヤモンドをカバーに使いそうな気はしますね…傷が付きにくいからーって、叩くと割れますけど、割れないように加工してくるんでしょうねぇ…」
「有名ブランドより贅沢な感じがしますね」
「有名ブランドの時計は分家も分家よ、大きく展開して大きく儲けて本家より有名になってるだけ、質と実用性、美術的な価値もこっちの方が上だね。
部品は外注してるけど、その後にする独自の加工が誰にも真似できないとかなんとか、戦車に踏まれても変形しない純金の時計とか作ってますしね」
「謎技術ですね…物理法則も無視している様な気もします…」
「まあそんな感じで数千万の時計とか売ってる有名ブランドの時計は劣化も劣化、ただ無駄に宝石を使用しているだけの馬鹿の一つ覚えなんですよ、あっちは戦車どころか地面に落としただけで、傷も付けば割れたり壊れたしもりますからね。
ルシフさんの身に着けている時計は全然違いますけど」
「私の時計はまた別の人の物だねぇ、値段的にはその行きつけの店主が作っている物と大して変わらないよー、御用達とか付加価値が付いて上がってるだけで」
「なるほど…しかしなんでまたそんな人が使う部品を作るための融資をしてるんですかね?」
「おじい様の代からの付き合いですからねぇ、以前部品を作っていた町工場は後継者がいなくて閉鎖してしまいましたし、それで新しい所を探してですね、今回限りで次回の融資で最後かも知れませんが」
「限定100個ならそれ以上の部品はもう要らないもんねぇ、壊れないし狂わないし、新作は何時になるか分からないし」
「何か新しい物を作ってくれればまだわかりませんけどね、多分次回は無いでしょう」
あっちはなんだか楽しそうだねぇ、こっちはただボーっと釣糸を垂れているだけ、主に釣れるのはカラフルなトラウトと地味なトラウト、カラフルなのが雄で地味なのが雌というのが分かったので雌を中心に確保、まだ卵を抱えているのに当たってないから…時期がずれてるのかなぁ?
沖の方に行ったら違うのかもしれないけど、まだ一度も船に乗って釣りに入っていないのでわからず、明日辺りにでも船に乗って沖へ出てみようかな、ひょっとしたら卵持ちとか、もっと大きいのとか違う魚が釣れるかもしれない。
何にせよ今日の分を釣ったら田んぼと畑で農作業をしているダイヤを手伝わないとね、遊び惚けるのは食糧事情がもっと良くなってから。




