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意外なことに、3月15日に何があったかを知るのはそう難しいことではなかった。
それは新聞に大きく載っていたからだ。
そこには、一人の70代くらいの男性が駐車場で倒れているのが発見され、病院に運ばれたが死亡しているのが確認された。警察は状況から、ひき逃げ事件と見て、周囲の防犯カメラを分析して捜査していると書かれていた。そして、亡くなった男性の名前と写真が載せられていた。
新聞記事を調べてみるべきだと伽音から言われ、古い新聞を借りてきてからまだ30分も経っていない。
「これなのかな?」
「これなのでしょう」ベッドに寝そべった伽音が頷く。
「こんな簡単な話し?」
「それで良いのでしょう。彼女が言っているのはきっとこれのことなのでしょう」
「でも、ミラノさんは何も言っていなかった」
「それならはじめから私たちに調べさせるまでもないでしょう」
「それはそうだけど」
「いくつかの可能性が考えられます。一つ目は、彼女は何も見ていないということです」
「見ていない?」
「いや、見たかもしれないが気づいていない。それでも相手はそれを見られたと思っているということです」
「それなら狙われる理由もわからないか」
「二つ目の可能性、見たけれど嘘をついている」
「それって何の意味があるの?」
「さあ、最後の可能性は……何も見ていない。事件のことも何も一切知らない。そして、犯人も彼女のことを知らない」
その言葉に響は首をひねった。
「それだと狙われる理由がないよ」
「そうですね。確かにこれでは矛盾します。ただの可能性の一つなので気にしないでください」
伽音はいつもふざけた口調で話すが、無意味なことを言うことはない。そんな伽音が、なぜ、そんなことを言ったのか、響にはその理由はわからなかった。
「よし、じゃあ行ってみよう」
「どこへですか?」
「事故が起こったところだよ。やっぱりそこを見てみないと」
「刑事ですか、あなた? 行って何がわかると? 現場検証やら分析でも出来るのですか?」
「茶化さないで。言われていることはわかるけど、それでも一度、自分の目で見てみたほうがいいじゃないか」
「あなたがそうしたいというなら構いませんよ。いずれにせよ、事件についてはこれでだいたいの予想はできましたね」
「事件については?」
「ええ、もうひとつ彼女が疑問に思っていることがあるでしょう?」
「そうか。彼女が妖かしになった理由か。何か方法があるの?」
「そうですねぇ。二宮瑠樺ならなんとか出来るかもしれませんね」
「二宮さん? それって3年生の?」
伽音が言った二宮瑠樺のことなら響も知っていた。彼女はわりと一年生の間でも有名だったからだ。いや、正確にいえば有名なのはその友人である音無雅緋のほうだろう。その容姿と成績、さらに一年の時に留年しているということが、いろいろな噂につながっていた。
「そうですよ。知らなかったですか? 彼女たちも一条家に関わっている一人ですよ」
「たち?」
「今、音無雅緋のことも考えたのではありませんか?」
「人の考えていることがわかるの?」
「単純な人のものならね」
「単純で悪かったね。それよりどうして二宮さん?」
「いえ、止めておきましょう。彼女が協力してくれるかどうかもわかりませんしね」
伽音はピョンとベッドから跳ねるようにして降りた。




