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旅人たち

 草むらの向こうから現れたそれは見た目は人間。だが額から角が生えている。まるで鬼のようだ。

 魔物か?それともこの世界の人間だろうか?分からない。

 だが相手は3体、こちらが不利なのは明白だ。いつでも攻撃する準備はできている。

 しかしこちらから仕掛けては他の2体に攻撃される。どうするべきか。

 そう考えていると中央の赤髪の男が口を開いた


「人間、か?」


 言葉を発する。少なくとも理性が無いわけでは無さそうだ。

 しかし味方とも限らない。いつでもウィンドカッターを唱える準備をして、男の質問に答える。


「そうだ。お前たちはなんだ」


 会話を引き伸ばして少しでも考える時間を稼ごう。


「俺たちは旅の者だ。見ての通り鬼人族のな」


 旅人、鬼人族。人間では無いのか。

 鬼人族っていうともっと大きくておっかないものだと思っていたが目の前の男は普通の好青年のようだ。


「お前こそここで何をしている。1人か?」


 次に赤髪の男の右側に立つ、青髪の男が聞いてきた。


「俺は数日前に目が覚めたらここにいた」


  とりあえず真実だけを話しておこう。無駄に嘘を言ってバレてもめんどくさい。


「目を覚ましたらここにいた?何を意味分からないことを」


  男は今度は怪しむような目つきでそう言ってくる。


「待って、彼怯えている。嘘は言って無さそうよ」


  左側の女が言う。女は薄い赤色の髪をしている。ピンクとは言えないような薄い赤。

 女の言葉を受けて中央の男は武器を下ろす。それを見て右側の男も警戒を解く。

 俺はまだ警戒は解かない。油断させて殺すという可能性もあるからな。


「怯えさせてすまない。こんな森に人間がいるなんて珍しくてな」


 中央の男は先程までと違い穏やかな口調で話し始める。


「俺たちはこの森や周辺の国を調査するための旅をしているところでな。少々道に迷っていたところをお前が索敵に引っかかって、念の為様子を見に来たというわけだ」


  男の口調や態度からは完全に敵意が消えていた。俺も少し警戒を解こう。

 男は親切に色々話してくれる。


「そう、なのか。こちらこそ警戒してしまってすまない。なんせこの森に来て初めて生き物が近づいてきたからな」


「初めて、か。この森に数日いて今まで何とも出会っていないのならここはレストエリアというわけか」


「レストエリアとはなんだ?」


  俺の問いかけに対して青髪の男が答える。


「知らないのか?レストエリアとはこの森にある魔物が寄り付かない場所のことだ。なぜ寄り付かないのかは謎だが」


「それにレストエリアはたまに場所が変わるから目指して行けるような場所じゃないの。見つけたら奇跡のようなものよ」


男の言葉に続いて女が補足するように話した。


「そうなのか。いいことを教えてもらった。ありがとう」


「ところでお前はここに住んでいるのか?」


 赤髪の男が聞いてくる。


「住んでいるという訳では無い。さっきも言ったように目を覚ましたらこの森にいてとりあえずこの場所を拠点にしていただけだ」


「なら俺達もしばらくここにいさせてもらってもいいか?せっかくだから周辺の調査をしたい」


「別に俺の場所じゃないから好きにしたらいい」


「助かる」


 そして鬼人族たちは大木の反対側に簡易的な寝床を作り始めた。タープのようなものを張って雨風を凌いで寝れるのか、いいな。

 そうだ、少ししかないが木の実を分けよう。


「なぁ、これ少ししかないがよかったら食べてくれ。ここらの木の実の中じゃ1番美味かった」


「いいのか?ありがとう。・・・てかお前ここに来てからずっとこんなものしか食べてないのか?」


 若干引いたように聞いてくるとは失礼なやつだな。


「そうだな。肉とかを食べたくても狩りの仕方が分からなくて木の実ぐらいにしか手を出せない」


「そうなの?じゃあ私達が狩りの仕方を教えてあげましょうか?」


「それは助かる。そろそろ木の実も飽きていたし」


「じゃあ早速今夜の飯を取りに行くか」


  鬼人族たちは狩猟の道具らしき物を持って森に入っていく。俺はその後を黙ってついて行く。

 しばらくして青髪の男が罠らしきものを設置する。設置が終わったら罠から離れて再び森を進む。

 いくつか罠を仕掛けたら最初に仕掛けた罠に戻る。何も捕まっていなかった。罠を順番に巡り獲物が掛かるのを待つ。


「なんで動き回るんだ?」


「魔物はね気配に敏感なの。特に私達が普段食用にするような弱い魔物はいち早く敵の気配を察知して逃げるの。だから罠を囲うように移動することで自然と獲物を罠に近づけてるの」


  女が説明をしてくれる。

 相手の習性を利用した狩りの方法か。確かに留まって罠に掛かるのを待つよりは自分から罠に掛けに行く方が早いな。


 何度か罠を回ると獲物がかかっていた。兎だろうか。色は白に近い灰色で、こいつも額から一本の角が生えている。

 しかし鬼人のそれとは違い、ドリルのような円錐型の形状だ。


「あれは一角兎だな。一般的に食用として出回っている」


赤髪の男が教えてくれた。獲物は既に死んでいるようだ。


「来い。血抜きの方法を教える」


 青髪の男が獲物を罠から外しながら言う。そして血抜きの方法や罠に掛かった獲物が生きていた場合のトドメの刺し方を教えてもらった。


「素早く血抜きをすることで臭みを抑えられる。罠は設置しすぎると全てを見て回るのに時間がかかって血抜きまでに時間が経ってしまう。だから最低限の数だけにしておいた方がいい」


 なるほど。無駄に多く設置しても血抜きが間に合わず臭みのある肉になってしまう上に取りすぎたら食べきれず腐らせてしまうか。

 命をいただく上でなるべく無駄のないようにしているのだな。

 罠を回収しつつ、もう1羽だけ一角兎を捕まえてから俺たちはレストエリアに戻った。


 調理は薄紅色髪の女の担当らしい。女は獲物の捌き方や調味料の節約の仕方、調理の時短方法など様々なことを教えてくれた。

 確かにこれもサバイバルする上では大切なことだが、そんなことより目の前で仕上がっていく肉を見ていると腹が鳴りそうだ。

 肉が好物という訳では無いが久しく食べていなかったので今すぐにでもかぶりつきたいぐらいだ。

 その思いをなんとか抑えながら女の指示で調理をしていく。

 俺が採っていた木の実を潰してソースにするようだ。美味そうだ。

 そうして料理を終え4人で食事をする。


「そういえばまだ名乗っていなかったな。俺はクレイヴ。このパーティーのリーダーだ」


  赤髪の男ークレイヴーは思い出したかのように名乗った。たしかに食卓を囲むのにお互い名前を知らないのはおかしな話だ。

 次いで青髪の男と薄紅色髪の女も名乗った。


「俺はジン。索敵係だ。最初に索敵でお前を見つけたのは俺だ」


「私はニーナ。ヒーラーよ。あなたは?」


「俺は神代 蓮」


  お互いに名乗り終わって食事を再開する。

 クレイヴ達はレストエリアについての調査を行うため5日ほどここに滞在するそうだ。

 調査の合間に俺に色々なことを教えてくれるという。身一つでこの森にいるにはあまりにも知識が無さすぎると呆れながら言われた。


「じゃあ私は料理とか薬草とかについて教えてあげるー」


ニーナが元気よく提案してくる


「じゃあ俺は狩りのコツでも教えよう」


ジンも続いて提案する。クレイヴは、


「じゃあ俺は剣術でも教えるとするよ」


「3人とも助かるよ。ありがとう」


 この世界に来て初めて出会った人たち。まさかその人達が修行をつけてくれるとは。

 他人の技からも学ぶことは多いだろうしありがたいことだ。

 クレイヴ達がいる間は魔法の練習はやめてサバイバル力を身につけるとしよう。



 ー 翌日

 早朝から3人は出かける準備をしていた。調査に行くのだろうか。朝早くから偉いな。


「すまない起こしたか。今から少し調査に行ってくる。昼前には戻るつもりだ」


「あぁ、気をつけて」


 3人は森の中へと姿を消していった。


 すっかり目が覚めてしまったな。俺は何をしようか。

 そういえば、昨日狩りの時ジンは獲物を罠に嵌めるように動いていたな。たしか索敵係って言ってたから気配察知的な能力があるんだろう。

 ただ、自分が察知していた気配が弱い魔物であるとわかっていたようだし何か見極めるためのポイントがあるのだろうか。

 3人が戻ってくるまで周囲を散歩しながら気配察知を鍛えてみるか。


 周囲の気配を探りながら散歩すること3時間。

 な、なにもわからなかった…。そこにいるのはわかるがそいつの強さまでは全くわからない。

 そろそろ3人も戻ってくるだろうしレストエリアに戻るとしよう。

 そういえば召喚された当初より気配がわかる範囲が広がったような気がするけど、気のせいだろうか。


 レストエリアに戻ると既に3人も戻ってきていた。


「お、戻ってきた。どこか行ってたのか?」


「少し気配を探る訓練をしようと思ってな。上手くいかなかったが」


「蓮さんも気配を探るスキルがあるの?」


 ニーナが興味深そうに聞いてきた。スキルについて簡単に話してしまってもいいのだろうか。

 しかしなぜかこの3人には話しても大丈夫なような気がする。


「うん。スキル気配察知を持ってる」


「だから最初に会った時も姿が見える前から警戒していたのね」


「そういうことだな。ジンも何かそういうスキルがあるのか?」


「俺は索敵のスキルを持っている」


「俺の気配察知とどう違うんだ?」


「スキル索敵は周囲の地形を含めた全てを把握することができる。生物も朧気にその形がわかるから狩りの時も獲物を見つけれる」


「なるほど、」


 気配察知の上位互換といったところか。生物だけでなく地形把握までできるとは便利だな。

 形がわかる、か。俺にもできるようになるだろうか。


「それ俺にもできるようになるか?」


「スキルとはレベルは上がっても能力が進化することはない。気配察知が周囲の気配がわかるだけの気配なら鍛えても効果範囲が広がる程度だろう」


 そうなるとこのまま気配察知だけを鍛えていても意味がないな。

 そこに物があるというのを触る以外で認識するにはどうすればいいだろう。

 見える範囲には限界があるから視覚は違う。匂いだけじゃ把握はできないし嗅覚も違う。味覚は考えるまでもないな。聴覚、音か。

 たしかコウモリは超音波を出してその反響音で空間を認識しているらしいな。見て理解するのではなく聞いて理解するか。

 ただ俺は超音波は出せないからな。俺が出せて認識できるとしたら魔力だろうか。

 幸い気配察知で方向はわかるからそっちの方に魔力を空間を覆うように放出することで気配を探ることができるのはないだろうか。魔力は自分の一部みたいなものだから放出した魔力が触れた物の形を把握することもできるかもしれない。

 これはすぐに試してみたいな。


「いや、なんか・・・できそうな気がしてきた」


  新たな可能性に思わず笑みがこぼれてしまう。昼食を早々に済ませて試してみよう。


「なんだか分からないが午後からはジンと一緒に探知の修行か?」


 クレイヴが尋ねてくる。


「そうだな。ぜひ頼むジン」


「できる限りの事はしよう。索敵ができるようになれば狩りも教えやすくなるしな」


「じゃあ2人は修行に集中してくれ。夕飯は俺とニーナで取ってくる」


「ありがとうクレイヴ」


  昼食は昨日の夕飯に余った肉を煮込んだものだった。

 食べ終えた俺はジンを連れて修行に出る。クレイヴは昼寝を休息を取るようで、ニーナは後片付けをしてくれている。


 早速先程思いついたことを試してみよう。

 気配察知で近くに何かがいることはわかる。念の為ジンにそいつが危険じゃないかを尋ねてから試す。

 気配がある方向、距離を正確に認識して魔力を放出する。一瞬魔力に伝わる何かが分かったような気がした。


「い、今なにをした?」


ジンが驚きながら聞いてくる。


「気配がある方向に魔力を放出してそこに伝わるものを認識しようとしたんだ」


「今獲物がいたのは17m先だった。そこまで全てを魔力で埋めたのか?」


「まぁそうだな。サイズもわかるようになりたいから少し大きめの範囲で放出してな」


「そんなことしたらすぐに魔力が枯渇してしまうだろう」


「俺魔力量が多いからその心配はないんだ」


「そう、なのか。なるほど…。やりたいことはわかったが今のだと獲物も魔力を感じて逃げてしまう上に探知しようと思ってないところまで範囲に入ってしまうから魔力の無駄が多いぞ」


 その指摘は最もだ。実際今のは獲物の形がわかる前に逃げられてしまった。放出する魔力の量を抑えた方がいいな。


「魔力を全体ではなく面として放出してみてはどうだ?」


「面?」


「あぁ。魔力を1枚の壁のようにしてそれを射出して形を把握する。常に魔力を流しておけば何かに遮られてもすぐに復元するから形がわかるだろう。それとできる限り魔力を抑えることは必須だ」


 なるほど。全体を埋めるのではなく魔力で検査機のようなものを作るのか。空港の手荷物検査みたいに通過するだけで認識できるようにする。

 その発想はなかった。射出はウィンドの原理と一緒だろう。そしてウィンドカッターの時のように薄い魔力を張る。薄く、できるだけ薄く。これをそのまま射出。


「たしかにこれなら魔力も抑えて獲物にも気付かれないな」


「そうだな。これを素早く出せるようになれば索敵にも役に立つだろう」


 やはり誰かに意見をもらうことで自分にはない視点からの気づきがあるな。

 しばらく修行をして安定して素早く探知することができるようになった。これで簡易索敵ができる。


「日が傾いてきたな。今日はこの辺にしておこう」


「あぁありがとうラグナス。これなら上手くできそうだ」


 レストエリアに戻るとニーナが食事の準備を済ませていた。クレイヴは剣術の修行をしていたようだ。


「探知の修行はどうだったよ」


「ジンのおかげでかなりいい感じだよ」


「そいつはよかったな。ジンは理屈っぽくて教えるの上手い方ではないから心配だったんだが」


「いや結構分かりやすかったよ」


「蓮はお前より物分りがいいぞクレイヴ」


「なんだとー?俺が馬鹿だと言いたいのか?」


「フッ、どうかな」


「こら。冷める前に早く食べてよ」


  ニーナの静止を受けて2人は顔を見合せて笑った。仲がいいんだな。喧嘩するほど仲がいいというがこれは喧嘩とも言えないな。仲がいいからこそのいじりみたいなものか。羨ましい。


「なぁ明日も朝から調査行くのか?」


「そのつもりだがどうした?」


「よかったら俺もついて行っていいか?」


「それは別に構わないぞ」


「ありがとう」


「じゃあ明日は調査しながら道中にある薬草について教えてあげるね」


「索敵も忘れずにやるんだぞ」


「あぁ」


  明日はニーナに薬草を教わりながら索敵を行う、か。かなりの集中力が必要そうだな。

 今日も探知に集中力しすぎて結構疲れたからな早めに休むとしよう。



ー 翌朝

 準備を整えてクレイヴ達と調査に出発する。道中ニーナは薬草を見つける度に効能や使い方を教えてくれる。


「これはね煮詰めたら傷薬になるんだけど結構ネバネバした感じのやつだからみんなあまり使わないんだ。こっちのは水に3日ほど浸しとくと傷薬が作れるよ。あ、この葉っぱはね普段は害がないんだけど加熱すると毒が出るから気をつけて」


 ニーナの薬草知識は凄まじい。毒草との見分け方や生息環境まで教えてくれる。

 さらにニーナは薬草だけでなくキノコや木の実などにも精通しているようで、見かける度に食用かどうかを教えてくれる。

 ニーナの話を聞きながらも索敵は怠らないようにしている。とは言っても今はまだ半径10m程度しか索敵ができないのだが。それ以上索敵しようとすると魔力を過剰に供給してしまうので今はこれが精一杯だ。

 調査は特に問題なく終わった。

 途中採取したキノコや木の実で昼食を済ませると午後からはクレイヴが剣を教えてくれると言う。

 クレイヴは剣の扱い方や防御の仕方など初歩的なことだけを教えてくれる。剣を使うにはなによりも基本が大事だからまずは徹底的に初歩的なことを繰り返すのがよいらしい。



 クレイヴ達と出会ってから4日が経った日の夜。

 この数日ジンに狩りや索敵を教わり、ニーナに料理や薬草について教わり、クレイヴに剣術の基礎を教えてもらった。詰め込みすぎて覚えるのが大変だが、とても有意義な時間だった。


 夕食の途中、クレイヴは食べる手を止めて話しかけてくる。


「明日には俺たちは獣人の国を目指して出発しようと思う。よかったらお前も一緒に来ないか?」


  クレイヴは真剣な眼差しで誘ってくる。このまま3人といれば安全だろうし学べることもまだまだあるだろう。ただ、俺は最初は人間の国を目指したい。もしかしたらそこに知り合いがいるかもしれないし。


「誘いは嬉しいが俺は人間の国を目指そうと思う。すまない」


「そうか。残念だが、気をつけて行けよ」


「ところで蓮はこの世界のことわかっているのか?」


ジンがふいに聞いてくる。


「いや、正直何も知らないな」


「そのままの知識では危険だろうし簡単に教えておこう」


 ジンはこの世界のことについて簡単に話し始めた。


「今俺たちがいるのは魔樹の森と呼ばれる場所だ。この森は中心に近づくほど強力な魔物が生息している。俺たちが目指している獣人の国はこの森から北東の方向にある。人間の国、レグナス王国を目指すなら西に進んだ方がいい。ただ直線でレグナスに向かうと森の中心を通ることになる。少し南の方に回り込みながら行った方がいい。ちなみに俺たち鬼人族の里はこの森から南東の火山地帯にある」


「なるほど。ありがとう」


「くれぐれも森の中心は通らないようにな。あそこには俺たちなんか一瞬で殺されるような化け物もいるって話だ」


「あぁ気をつけるよ」


 そして再び食事を食べ進める。

 その日の夕食はいつもより少し豪華なような気がした。夕食を食べ、しばらくみんなで話してから眠りにつく。


 明日からまた1人か。



ー 翌朝

 いつも通りの時間にクレイヴ達は出発しようとしていた。


「行くんだな」 


「あぁ世話になった」


「俺の方こそ色々助かったよ」


「いつか私達の里にも来てね」


「俺らの旅はあと1,2年はかかるだろうから気が向いた時にでも遊びに来るといい」


「うん。ニーナもジンも色々教えてくれてありがとう」


「そうだ。これやるよ。この森で丸腰は危険だろ」


 クレイヴは腰につけていた短刀を差し出した。俺はそれを優しく受け取る。


 鞘は木製で黒く塗られており、下緒のように赤い紐が結ばれている。ところどころに小さな傷も見られる。柄は暗い赤色の革が巻かれている。少し刀を抜いて刀身を見てみると、鈍い銀色をしていた。使い込まれたものなのだろう。ただ、手入れが行き届いているのはわかる。


「いいのか?」


「あぁこんなものしかあげれないけどな」


「ありがとうクレイヴ」


「じゃあ俺たちは行くよ。またな蓮」


「うん。3人ともまたいつか」


  3人の姿が森の奥に消えるまで見送った。たった5日だけど誰かと過ごすというのは楽しいな。俺も早めに人間の国を目指すか。たしかレグナス王国って言ってたっけな。いざレグナス王国へ。



ーガサガサッ


クレイヴ達と別れてレグナス王国を目指そうと志す神代蓮。無事たどり着くことはできるのだろうか。森の中心では魔物の活動が活発になっていた。黒いそ(・)れ(・)もまた森を動き回っていた。

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