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異変

 さて今日はどんな依頼を受けようかな。

 前のブルームースみたいな素材採取の依頼はなかなか無いんだな。

 とりあえず街の周りでできる討伐依頼とかにしとこうかな。


「あの、神代様お時間よろしいでしょうか?」


「え?あ、はい、大丈夫です」


「実は神代様に指名依頼が来ております」


「指名依頼ですか?」


「はい。依頼主は鍛冶師のワンゼ様です。任意ですがどうなさいますか?」


「依頼内容を確認してもいいですか?」


「かしこまりました。こちらが依頼書になります」


 依頼内容は近辺の森までの護衛と素材採取の手伝い。

 護衛依頼はCランク以上しか受けられないはず。

 それにワンゼという人に覚えはないが、なぜ俺を指名したんだ。

 色々疑問はあるがせっかくの機会だし受けてみるか。


「わかりました…受けます」


「では手続きの方をしますのでこちらへどうぞ」


 その後いつも通り登録証に依頼を記録してから簡単な説明を受けた。

 一時間後に南門集合。日帰りの予定なので野営等の準備はいらないとのこと。

 そっか、護衛は数日かかることもあるからそういう場合なら野営の準備がいるのか。

  今回はいらないそうだが今後のために準備はしておいた方がいいかもな。


「蓮くん、今から依頼?」


「あ、リーシャさん。そうです。指名の護衛依頼が来て」


「指名⁉すごい、普通はCランク以上にしか来ないのに」


「それで今回は日帰りらしいのですが今後のために野営の装備を買っておくべきかと思ってたところです」


「そうなのね。野営装備は人それぞれだけど最低限の道具は揃えた方がいいわよ。調理器具とか」


「たしかに。調理器具があれば丸焼き以外の調理もできますしね」


「丸焼きって…いつもそんなものしか食べてなかったの?」


「そうですね。何も持ってなかったので」


「まったく。いい?冒険者には最低限の装備っていうものがあるの。蓮くんは実力はあるけどそういうところが抜けてるからしっかりしてよね」


「ほんと、すみません」


「市場通りの近くに初心者向けのお店があるからそこに行ってみるといいわ」


「はい!ありがとうございます」


「じゃあ気を付けてね」


 リーシャさんは小さく手を振って受付の方へと戻っていった。

 とうとう怒られてしまったな。まぁ、さすがに今まで適当過ぎたか。

 時間もあるしリーシャさんが教えてくれたお店にでも行ってみよう。



 東区市場通りから少し外れた職人街。そこにある少し大きめのお店。

 外観は少しギルドと作りが似ているような気がする。

 入り口の上に大きく店名が書かれている。『灯火の道具屋』

 中に入ると装備や防具、各種ポーションに野営道具まで置いてある。


「いらっしゃいませ。なにかお探しでしょうか」


「野営の装備を探してるんです。最低限のものを」


「でしたら、こちらの調理器具や食器、あとはテントもあると便利ですし最近では簡易結界を張れる魔道具なんかも人気ですよ」


「簡易結界ですか?」


「はい、低ランクの魔物であれば侵入ができず、Cランクの魔物の攻撃にも耐えることができるので見張りを無くしてお休みしていただくことができます」


「対人でも作動するんですか?」


「事前に登録しておいた魔力だけを通す記録型と発動したら何も通さなくなる完全型がございます」


「なるほど便利そうですね」


「お値段の方が記録型が銀貨20枚、完全型が銀貨13枚となっております」


「結構するんですね…今回は遠慮しておきます」


「左様でございますか。でしたらテントはいかがでしょうか?野営中でも雨風を気にせず休める場所を確保することができますよ」


「テントも大丈夫です。調理器具とかを見せてもらってもいいですか?」


「もちろんでございます。なるべくお荷物を減らしたいのであればこちらがおすすめです」


 店員が出したのは一見するとただの鍋にしか見えない。


「こちらの商品はフライパンとしても使用可能な深底の鍋になっております」


「普通の鍋もフライパンとして使えるんじゃないんですか?」


「確かにご使用していただくことは可能ですが、鍋の底は薄く焦げやすくなっているのです」


「けどこれなら薄くなくてフライパンとしても使える一石二鳥ってことですか」


「その通りです。最初は炒め物をしてそのまま水を入れればスープも作れます」


「時間はかかってしまうが洗い物は減るということですね」


「まさにその通り。さすがでございます」


「じゃあこれといくつかの料理器具と食器をいただきます」


「ありがとうございます。合計銀貨5枚のところ本日は4枚にさせていただきます」


「いいんですか?ありがとうございます」


「またのお越しをお待ちしております」


 いいお店だったな。


 店を出てそのまま南門に向かう。

 あれ?そういえば俺依頼主の顔知らないけどどうしたらいいんだろう。

 まぁ依頼主は俺のこと知ってるみたいだし行けばどうにかなるのかな。


 南門に着いたがそれらしき人は見当たらない。とりあえず待つか。


「待たせて悪かったな」


「あなたはあの時の…」


 冒険者になって最初に受けた依頼。その中の配達依頼の時に立ち寄った鍛冶屋の人。

 そうかこの人だったのか。


「あなたがワンゼさんだったんですね」


「おうよ。まさかあの時の小僧がこんなに早く成長するとはな」


「あはは」


「聞いてるぞ。DランクだがすでにCランクの依頼をいくつもこなす実力だって」


「そんな、俺なんてまだまだですよ」


「謙遜すんなよ。お前さんの実力期待してるからな」


「精一杯頑張ります」


「じゃあさっさと行くぞ」


 ワンゼさんは普段一人で素材採取に行っているのだが最近は魔物が活性化しているという噂を聞いた弟子が護衛をつけるようにと強く懇願したため、話題になっている俺を選んだらしい。

 しかしたった一度会っただけの冒険者のことを覚えているとはすごいな。しかも名乗ったりもしなかったのに。


「よく俺のこと覚えてましたね」


「一度見た冒険者は忘れねぇよ。いつ客になるかわからねぇからな」


「なるほど。職人の鑑ですね」


「なぁに普通のことだよ。それよりお前さん今回狙う魔物はわかってるのか?」


「ジュエルベアですよね。皮膚が鉱石化している熊型の魔物ですね」


「そうだ。戦ったことあるか?」


「いえ、まだ見たこともないです」


「じゃあいくつか覚えておくといい。あいつらはダメージを受けるほど鉱石の質が悪くなるからできるだけ瞬殺してくれ。あと鉱石の部分にはなるべく攻撃を当てないようにしてくれると助かるな」


「わかりました。生身の部分を狙って瞬殺ですね」


「まぁ何体かは失敗しても構わねぇから気楽にやってくれ。今回は鉄鉱石を狙うし数も多いだろうからな」


「わかりました。何体ほど倒すつもりですか?」


「そうだな。質にもよるが15~20ってとこだな」


「では俺たちで半分はやりますね」


「おう、頼んだぞ」


 ジュエルベア。ギルドの記録によればランクは身に着けてる鉱石で変動するが平均するとD⁺かC⁻といったところ。鉄鉱石だとちょうどその間ぐらいだろう。肉は硬く獣臭いため食用にはならない。長く生きている方がより鉱石の質が上がるだったかな。


 倒すこと自体は問題ないと思うが瞬殺しなければならないのが少し厄介だな。

 スピードと威力がある攻撃となると練習中のあれしか思いつかない。

 ジュエルベアの体を切れるほどの威力かどうかは使わないとわからないな。

 


「この森だ。ジュエルベアは攻撃的だから気をつけろよ」


「わかりました。ワンゼさんの左右を俺たちで固めます」


「この先にあいつらの巣があるはずだからそこまで行くぞ」


「はい」


 ワンゼさんを間に挟むようにして俺とアビスで警戒しながら進む。

 巣は森に入ってすぐのとこにあった。


「あそこだ。よしじゃあ一狩りするか」


「俺らも戦闘に回ります。なにかあれば言ってください」


「おう。じゃあ集め終わったらここでな」


 ワンゼは背負っていた大剣を抜いて巣の方を歩いて行った。大雑把に見えるが気配はちゃんと消している。


「俺たちも行こう」


「ワフッ」


 いた。思っていたより小さいな。出会った頃のアビスより少し大きいぐらいだろうか。

 そういえば最近はアビスの成長止まったな。成長期が終わったのだろうか。

 いやいや、そんなことより集中しないと。

 とりあえず見えているのは一体だけだしさっそく魔法を試してみるか。


「風魔法《 エアリアルブレード 》」


ーーーー

エアリアルブレード

風系統中級魔法

圧縮した風刃を高速で射出する

風を極薄の刃として形成することで高い切断力を持つ

ーーーー


 ウィンドカッターよりも高密度に圧縮された風の刃。スピードも切断力も段違いに上がっている。

 ウィィィンと風が音を立てながら集まり圧縮される。

 やがてできた一枚の刃をジュエルベアに向かって放つ。

 ヒュッと一瞬だけ風を切る音がしたかと思えば次の瞬間にはジュエルベアの体が真っ二つに切れていた。

 どうやら威力も申し分ないようだ。

 しかし早すぎて見えなかったな。スピードは前のウィンドレインを横向けにしたよなものだな。


 よし、鉱石も傷つけてないし即死させられただろう。

 この調子でどんどん集めよう。


 今回アビスは索敵役に徹してくれている。

 アビスの魔法だと鉱石を傷つけずに倒すのは難しいかもしれないから今回は我慢してもらった。

 今度はアビスも参加できる戦闘のやつを受けないとだな。


 30分程狩って9体集められたので一度合流場所に戻る。

 すでにワンゼさんは戻ってきてた。


「すみません遅くなりました」


「なに、気にすんな。それより状態を見せてくれ」


「はい。なるべく傷つけずに倒したつもりです」


「ふむふむ。なるほど……いい感じだな。ほとんど傷ついてねぇ」


「よかったです。ワンゼさんはどのくらい狩れました?」


「俺は11ってとこだな」


「そんなに!」


「まぁ何体かダメにしちまったけどな。だがこれだけあれば足りるだろ。帰るか」


「はい」


 街に戻る道の途中、ワンゼさんが刀を見せてほしいというので見せてあげた。


「こいつは…結構な業物だな。短刀なのが勿体ない。こいつはどこで手に入れたんだ?」


「以前会った旅人にもらいました」


「こいつをくれるなんて気前のいい奴だな。今度会ったらちゃんと礼言っとけよ」


「はい。そうします」


 まさかそんなにいいものだったのか。クレイヴには改めて感謝だな。

 そういえば鬼人族の里は鍛冶も盛んだって言ってたからきっと名のある鍛冶師も多いんだろう。

 いつか専用の武器でも作ってもらいたいな。



 それからワンゼさんの鍛冶の話を聞いたり、弟子への愚痴を聞いたりしながら街へ戻った。

 今回は護衛依頼なので報告書を貰ってワンゼさんとは解散になる。

 

 ギルドで無事に報告も済ませた。

 まだ夕食まで少し時間があるのですぐ終わりそうな依頼をいくつか受けて時間を潰すとしよう。



ー数日後

 

 今日は久々に休暇を取って魔法の練習をしようと思う。

 場面に応じて使い分けられるように色々と習得しておいた方がいいだろうしな。

 とはいえ何を覚えようか。


 あ!使い分けと言えば、別の系統を連続発動するときのタイムラグをどうにかしたいな。

 同じ系統ならラグなしで使えるのになぜか別の系統になるとラグが生まれてしまうし。


 考えらる理由で一番現実的なのは系統ごとに魔力の性質がある。とかだろうか。

 炎の燃える性質と水の濡れる性質全く異なるからそこを切り替えるのに時間がかかっている。

 そう仮定するなら性質の切り替えを体に覚えさせるか、あらかじめ次の性質の魔力も溜めておくことで解決できないだろうか。


 でも体に覚えさせるならまだしも次を用意しておくなんてできるのだろうか。

 少し現実味がないような気もするしとりあえずは体に覚えさせることに専念しよう。

 まずはよく使う水と炎、風、雷を連続で使って覚えるか。


「アビス、俺は今から魔法の練習するし近くを散歩してきてもいいぞ」


「ワフッ」


 アビスはトコトコどこかに歩き出していった。

 アビスの実力なら心配はないだろうし、俺は自分のことに集中しよう。


 ウォータを打ち、ファイアを打ち、ウィンドを打ち、スパークを打つ。

 これをひたすらに繰り返す。

 何度も何度も繰り返す。


 どのくらい時間が経ったかはわからないが、切り替えがだいぶスムーズになったような気がする。

 やはり体に覚えさせるのは効果があったようだな。

 次はどんどん系統を増やそう。


 はぁはぁ。疲れた。さすがにずっと魔法を出しっぱなしは体力的にも疲れるな。

 もうお昼時か。アビスはどこまで行ったんだろう。


「ワフッワフッ」


 戻ってきたアビスは一角兎を咥えていた。


「アビス、そいつは…もしかして狩ってきたのか?」


「ワフッ!」


「はは。じゃあそいつを昼飯にするか。ちょうどこの前調理器具買ったしなにか作ろう」


 調味料とかはほとんど持っていないため、体力回復も兼ねて肉と薬草の炒め物にした。

 少し独創的だが…まぁ味は悪くないだろう。

 アビスも普通に食べてくれてるし問題ないだろう。

 そいうえばこの一角兎なにか大きなものに噛まれたような傷だったけど、アビスだろうか。

 けどアビスはあんなに口大きくないし……まさか新しい魔法かな。まさかな…。


「なぁアビス、飯食い終わったらアビスの魔法見せてくれないか?」


「ウゥン?」


「今後の連携のためにもできることは把握しとかないとだろ」


「ワフッ!」


 昼食後アビスの魔法を見せてもらう。


「よしじゃあさっそく頼む」


「ワフッ」


 アビスに魔力が集まっているのがわかる。

 そしてだんだん影が濃くなっていき…黒い触手が出てくる。

 これはいつものシャドウバインドだろう。


「アビスこれってどのくらい伸ばせるんだ?」


 俺の言葉を受けてアビスは一本だけ前方に伸ばし始めた。

 動きが止まったのでここが限界ということか。

 ざっと20mといったところかな。


「ありがとう。他になにかできるか?」


 アビスは再び魔力を集め始めた。

 そして次に現れたのは…黒い牙?影の牙だろうか。

 なるほどさっきはこれを使ったのか。

 黒い牙。魔法書に乗っているだろうか。闇系統闇系統……。

 あったこれだ。


ーーーー

ダークファング

闇系統中級魔法

闇を牙として実体化し、対象に噛みつく

ーーーー


 うそだろ。中級かよ。

 まさか他にも…。


「ほ、ほかにはなにか…」


「ワフッ」


 次にアビスが魔力を集めて放ったのは黒い刃だった。

 まるでウィンドカッターの闇版だな。名前もダークカッターとかだったりしてな。

 えっと、黒い刃黒い刃は…。


ーーーー

シャドウエッジ

闇系統初級魔法

影を刃状に圧縮して射出する

ーーーー


 さすがに名前は違ったな。これは遠距離型か。


「すごいなアビス!あれ?」


 アビスがいない?いや、正確にはいないように感じる。

 たしかにそこにいるはずなのに集中しないと認識できない。

 これも魔法なのか?アビスを黒い魔力が覆っているのがほんのり見える。

 この魔法は一体…。


ーーーー

ナイトクローク

闇系統初級魔法

自身を薄い闇で覆い、存在感を希薄化する

ーーーー


 あ、今ははっきり認識できる。

 こっち向いて尻尾振ってるしもう終わりなのだろう。

 四つか。どれもすごかった。


「すごいなアビス」


 頭を撫でてあげると俺の周りを走り回りながら喜ぶ。

 

 純粋な機動力もあるし前衛後衛どちらでも大丈夫そうだな。

 残りの時間は連携の確認と魔力の切り替えの練習だな。

 Cランクの試験を受けるまでになんとかものにしたい。



 時は流れDランク昇格から一か月。Cランクの試験の日。

 

 試験は前回同様昼までに受付を済まさなければならないので今回は少し早めに向かう。

 朝早くのギルドには職員のほかに寝てしまっている冒険者が数人いるぐらいだ。

 なんでわざわざこんな時間にここで寝るのか。


「すみません。Cランクへのランクアップをお願いしたいです」


「かしこまりました。本日ですと護衛依頼と討伐依頼がございますがどうなさいますか?」


 今回は選べるのか。護衛依頼はワンゼさん以降受けてないし少し不安があるから無難に討伐かな。


「討伐でお願いします」


「こちらが依頼書となります」


 討伐対象はブレードモンキー10体とアースボア1体か。

 なるほど、どちらもCランク程度の魔物だな。しかも個で強いやつと集団のやつって。

 相変わらず試験はすごい依頼を出されるな。

 場所は…前にワンゼさんと行った森だな。


「了解です」


「それでは記録いたします」


 そして依頼書は登録証に記録された。


「こちらの依頼期限は明日の正午までとなっております。また討伐証明に魔石をお持ち帰りいただきますように、よろしくお願い致します」


 丸一日の猶予があるのか。そんなに難しい依頼なんだろうか。

 とにかく野営の準備はしっかりしてから行かないとな。


「蓮くん今から依頼?」


「リーシャさん。はい、ランクアップの依頼を受けてきます」


「そっか。とうとう今日なんだね。無事合格できたらお祝いするから頑張ってね」


「はい!行ってきます」


 とりあえずこの間のお店に行ってしっかり準備を整えよう。

 一日だけとはいえ油断はできないからな。


「アビス少し買い物してから行こうか」


「ウゥン?」


「しっかり準備しないと危ないからね」


 いざ、灯火の道具屋へ。


 店に入ると前回と同じ店員がいた。


「これはこれはお客様。本日はどのようなものをお探しでしょうか」


「実は今から依頼で森に行くんですけど、調理器具以外に野営に必要なものってありますか?」


「それでしたらテントやタープ、照明器具、寝具などがございますね」


「なるほどテントですか」


「はい。魔物除けの効果が付与されいる物もございますし、やはり雨風を気にせずお休みしていただけるのでおすすめです」


「魔法で簡易的なものを作ろうと思っていたのでテントはいらないかもです」


「でしたらこちらの魔導灯はいかがでしょうか。光の魔法と魔物除けが施されている魔道具になります。お値段は少々お高めですが、貴族様などにもご利用していただいておりますので性能は保証します」


「たしかに明かりがあるのはいいかもですね」


「そうでございましょう。さらに!魔物除けの効果で索敵係も気を休めることができます」


「その魔物除けって従魔にも効果がありますか?」


「そうですね。こちらは魔物全般に効果がございますので従魔にも効いてしまいますね」


「ならやめておきます」


 従魔も退ける魔物除けって本当に需要あるのだろうか。貴族が使っているって言ってたけど。


「でしたら寝具はいかがでしょうか?厳しい環境で少しでも疲れを癒すには寝具が必須ではないかと」


「それは一理ありますね。ただ大きいと持っていくのに困りますね」


「それはご安心ください。こちらでしたら魔力を込めるだけで敷布団が出てくるのです」


 店員が持ってきたのはテニスボールぐらいの球体だった。


「こちらは使い切りでシルクシープの布団を出すことができます。使い終わったら火をつけて簡単に燃やせますので処分にも困りませんし、着火剤なんかにもご利用していただけます。しかもお値段は銀貨3枚!」


 かなり魅力的な商品だ。森生活で慣れているとはいえ硬い地面で寝るのはしんどいからな。

 それにアビスも少し期待しているようだ。


「じゃあそれ買います。あと中級の傷薬を三本もらえますか?あ、あとこれもお願いします」


「かしこまりました。では全部で銀貨7枚になります」


「お願いします」


「ありがとうございました。またお待ちしております」


 よし、これで準備は整ったな。

 あとは道中で食事用の魔物を狩ればいいだろう。


「よしじゃあアビス行こうか」


「ワフッ!」



 街を出てしばらくして森に着いた。途中で一角兎も狩ったので食料も大丈夫だ。

 なんか前に来た時より静かな気もするが、とりあえず行こう。

 できれば早めにブレードモンキーを討伐してしっかり休んで明日に備えたいな。

 ブレードモンキーは集団で樹上にいるので上からの奇襲に気を付けないといけない。

 森の手前側にいることの方が多いらしいが…。


「アビス上からの奇襲に気を付けてな」


「ワフッ」


 今のところ索敵には何も引っかからない。

 俺の魔力による索敵とアビスの鼻による索敵で抜け目はないはずだ。

 なるべく奥まで入らず手前側で見つけたいんだが、なかなかいないな。

 少し索敵範囲を広げてみるか。


「アビス、少し索敵に集中したいから警戒よろしく」


「ワフッ!」


 気配察知+魔力放出。索敵範囲50m前後。

 現在無意識で行える索敵範囲は30mと少しだが、集中すれば50m近くまでは探知することができる。

 いた!ちょうど索敵範囲ギリギリ。


「見つけた。行こうか」


「ワフッワフッ」


「俺がおびき出すからアビスは気配を消して隠れててくれ。飛び出てきたところをシャドウバインドで捕まえて一網打尽にしよう」


「ワフッ(闇魔法《 ナイトクローク 》)」


 その瞬間、アビスの気配が希薄になった。

 そこにいると知っている俺ですら認識が難しいのだから、あいつらにはバレないだろう。

 索敵で見つけた数は8体。目標には少し及ばないがとりあえずはいいだろう。

 ブレードモンキーがいると思われる木の下まで歩いていく。


「キィィィィ!!!」


 俺の姿を見た瞬間、猿達は木から飛び下りて襲い掛かってきた。

 各々が刃物のように鋭利な腕を俺めがけて振り下ろしてくる。

 しかしその攻撃は確実に当たっているはずなのに俺の体を透過するように空を切る。


「ギィッ!」


 困惑している猿達。

 たしかに俺はそこにいたが、いなかったのだ。


「水魔法《 ミラージュ 》」


ーーーー

ミラージュ

水系統中級魔法

空気中の水分と熱を操作し、光を屈折させることで幻影を形成する

ーーーー


 猿が切りかかったのは俺の幻影だったのだ。

 困惑している隙をアビスが狙う。


「ワフッ(闇魔法《 シャドウバインド 》)」


 突如アビスの姿が現れ、影の触手が猿達を縛り上げる。


「ウギィッ」


 今だ!


「風魔法《 カマイタチ 》」


ーーーー

カマイタチ

風系統初級魔法

ウィンドカッターを同時に複数形成し、乱射する

蓮のオリジナル

ーーーー


 前にグランドベアに浴びせたウィンドカッターの連射。

 あれの精度と威力を上げて発動できるようにしたオリジナルだ。

 まぁ実際はかっこいい名前をつけただけでただのウィンドカッターなんだがな。


 射出された風刃は次々と猿を切り刻んでいく。

 アビスに拘束されているので抵抗すらできず、猿は倒れる。


「ギャアアァッ!?」


 そして猿は肉片となり落ちていく。

 この魔法、集団に使うとグロすぎるな。

 ま、まぁとりあえずこれで8体。後2体必要だからもう一つ集団を見つけないとな。

 

「ありがとうアビス。次を探そうか」


「ワフッ」


 ん?なるほど。さっきの断末魔は仲間を呼んだのか。


「どうやら探す必要はないみたいだ。こっちに来てるし迎え撃とう」


「ワフッ!」


「次は俺が捕まえるからアビスがやっていいよ」


 こっちに来ているのなら罠を仕掛けないわけにはいかないな。

 おそらく木の上を伝って来ているから空中に張れる罠がいいか。


「植物魔法《 ソーンネット 》」


ーーーー

ソーンネット

植物系統中級魔法

魔力で成長させた棘付きの蔓を張り巡らせ、対象に棘を食い込ませて拘束する

ーーーー


 さっきの集団を見るに猪突猛進型だから進行ルートに罠を張っておけば捕まえることができるだろう。

 もちろんバレれば切られるが一瞬でも隙ができればアビスはそこを見逃さない。


「どうやら向かって来てるのは6体のようだな。やれるか?」


「ワフッ!」


 自信満々なようだな。

 なら任せるとして俺は一歩引いておこう。


 猿たちはすぐやってきて、罠に引っかかった。


「ギャウッ」


 すぐに腕を振り回して拘束を解こうとしたやつもいるが既に手遅れだ。


「(闇魔法《 シャドウエッジ 》《 ダークファング 》)」


 アビスの猛襲に為す術もなく猿は倒されていく。

 猛襲もすごいがそれよりアビスの移動方法に驚いた。

 シャドウバインドを鞭のように使って樹上に飛ぶなんて、よく考えている。

 猿は切り刻まれ、噛み切られ次々に倒れる。終わったな。


 これで合計14個の魔石を手に入れたしブレードモンキーはクリアだな。

 もう夕方になるし早めに寝床を作っておこう。


「アビス、少し離れたとこで今日は休むとしよう」


 ブレードモンキーを倒したところから離れていい感じのスペースを見つけたのでここで休もう。

 さっそく壁と屋根を作るか。


「土魔法《 アースウォール 》」


 四方に土の壁を作り出す。これは前に森でやったのと同じだ。

 そして次は。


「植物魔法《 リーフキャノピー 》」


ーーーー

リーフキャノピー

植物系統初級魔法

魔力で植物の成長を促進し、大きな葉を頭上へ展開する

ーーーー


 前は木の下で野営することで天然の屋根を使っていたが、今はもう自分で屋根代わりに葉を生い茂らせることができる。

 もっと早く習得しておくべきだったな。


 スペースはできたことだし早速夕食の準備でもするか。

 今日は兎肉のスープとステーキにしよう。

 事前に狩って血抜きしておいた一角兎の肉を部位ごとに分ける。

 スープに使うのはモモ肉とカタ肉にしよう。

 油を敷いた鍋に塩コショウで下味をつけた肉を入れて炒める。表面に火が通ったら一度取り出す。

 油の残った鍋に生姜とにんじん、それと玉ねぎを入れて再度炒める。

 玉ねぎに焼き色がついたら水と肉を入れる。塩コショウで味を調えて、しばらく煮込めば完成だ。


 煮込んでいる間にステーキを作ろう。

 いらないかもと思ったけどやっぱフライパンも買っておいて正解だったな。

 ステーキは背ロースを使おう。

 肉の表面に塩コショウをよく揉みこんでから、熱したフライパンに油を敷かずに焼く。

 両面ともに焼き色がついたら取り出して香草で包む。余熱で火を通しながら香りをつける。

 10分程待てば出来上がり。

 フライパンに赤ワインと醤油、塩コショウを入れてソースを作る。


 よしこれで夕食は完成だな。


「アビスできたよ」


「ワフッワフッ!」


 まずはスープを一口。

 スプーンですくうと、湯気と一緒に生姜の香りが立ち上ってくる。

 最初はあっさりとした味だが徐々に野生の風味を感じられる。そして生姜も相まってパンチのある味だ。

 玉ねぎの甘さで調和がとれている。


 ステーキはどうだろう。

 口に運べば香草の風味と肉本来の野性の香りが通り抜ける。

 癖のあるもの同士だが相性はいいようだ。

 そして合わせるソースは少し薄味にすることで肉本来の味が際立つ。


 どちらも美味しかった。上出来だな。


 さて、寝床だが。

 たしかこれに魔力を流せばいいって言ってたよな。こうか?

 

 すると球体が弾けるように広がり瞬く間に布団が出てきた。

 これはおもしろい。こういう短期間の野営ならこれがちょうどいいだろう。

 しかもセミダブルぐらいはあるな。これならアビスと寝れそうだ。



「じゃあアビス、しっかり休んで明日に備えような」


「ワフッ」



ー翌日


 朝食には昨日残しておいたスープを食べた。

 今日の正午までには帰らないといけないから早々に探しに行こう。

 布団にファイアで火をつけるとあっという間に燃えて無くなった。

 

 森の奥へと入っていく。索敵で大きな気配を探しながら慎重に進む。

 さすがにここで索敵に集中するのは危険かもしれないので無意識でできる索敵に任せる。


 もう30分は歩いただろうか。なかなかそれらしい気配は感じられない。

 すると…。


 ードゴンッ


 なにかが倒れたような大きな音が聞こえてきた。

 さらに耳を澄ませると…。


 ーワアァァッ


 悲鳴らしき声も聞こえる。これはまずいかもしれない!


「行こうアビス!」


 すぐに音のした方へ走り出す。


 その先にはアースボアらしき魔物と狼の獣人が3人いた。

 一人はかなり負傷しているようだ。


「大丈夫ですか!?」


「おまえは?」


「冒険者です。あいつの討伐依頼を受けています」


「や、やめとけ。あれは普通じゃない」


 たしかに、目は赤く充血させて、体から溢れ出るほどの魔力を感じる。

 これは活性化しているのだろうか。


「とにかく、俺たちが時間を稼ぐので皆さんは退いてください。負傷者の手当てを」


「す、すまない」


 獣人たちは仲間を背負って走っていった。気配が遠ざかるのはしっかり確認した。


 さて、どうやって倒すか。おそらくあの溢れ出る魔力のせいで生半可は魔法は効かないだろう。

 上級はまだ使えないし、中級で押し切るしかないか。

 アビスはまだあまり中級は使えないし戦闘に混ぜるのは危険かもしれない。


「アビス、後ろから援護してくれ」


 何系統が弱点なんだあいつは。とりあえず遠距離で様子を見て…


「ブオォォォ!」


 アースボアは一直線でこちらに突進してくる。木々をなぎ倒しながら。

 正直グランドベアの突進より怖い。

 視界を遮って回避しよう。


「水魔法《 ミスト 》」


 瞬時に霧が発生して周囲を包む。

 霧に乗じてアースボアの側面に移動して突進を避ける。


 くらえ!


「風魔法《 エアリアルブレード 》」


 しかし風刃は薄皮を切る程度で大したダメージにはならなかった。


「ブホォォ!!!」


 アースボアはこっちに向かって咆哮してくる。まるで突風でも起こったような威力だ。


 ーシュッ


 咆哮による風圧に耐えていたら突然何かが頬をかすめて切っていった。

 なんだ、なにに切られた?……まさか。

 

「ブホォォォ!!!!!」


 さっきよりも強い咆哮。


 ーシュシュシュ


 やっぱりか。あいつ咆哮に魔力を混ぜている。

 それが風に押されて飛ぶことでウィンドカッターのようになっているのか。

 しかも意図しているというより溢れ出る魔力が勝手に飛ばされている感じだ。

 このまま咆哮を受け続けるのはまずい。


「土魔法《 アースウォール 》」


 土の壁でなんとか咆哮は防いだ。

 ほんとに厄介だ。どうしよう。


 ードンッドンッ


 何かが近づいてくる音がする。

 しまったと気づいた時には手遅れだった。

 アースボアは突進して土壁を突き破ってきた。そしてそのままこっちに向かって…

 

「グハッ」


 吹き飛ばされた勢いで背中を木に打ち付け、口から血が出る。

 とっさに後ろに引いて威力は殺したがそれでもこのダメージか。

 やばい、回復しないと。


 再び突進してこようとしたアースボアに黒い刃が飛んでくる。

 アビスのシャドウエッジか。

 しかしその刃は体に当たることなく軌道が逸れた。

 やはり初級程度はダメージにならないか。


「ワフッワフッ!」


 ありがとうアビス。

 アビスが気を引いてくれたおかげで回復できた。中級の傷薬買っておいてよかった。

 ただ、まだ背中に痛みがあるな。


 はぁ、どうしたものか。あまり試したくはないがあれをやってみるか。


「雷魔法《 サンダーステップ 》」


 一気に懐に潜り込んで直に魔法をぶつけてやる。


 アビスの方に気が逸れている間にアースボアのそばに移動する。

 そしてそのまま魔法をー


「雷魔法《 プラズマランス 》」


ーーーー

プラズマランス

雷系統中級魔法

圧縮した雷属性の魔力を槍状に固定し、一気に射出させる

ーーーー


 さらに続けてー


「炎魔法《 フレイムランス 》」


 どうだ。二つの中級魔法を至近距離で受けたんだ。多少はダメージがあるだろ…。

 

 二つの攻撃によって生じた煙が晴れると少し皮膚が焼けているのが見えた。

 これでもその程度なのか。

 おそらくこいつの弱点は炎だが、これぐらいだと皮膚を焼く程度。


 アースボアは身を捻らせて体当たりしてくる。


「グワッ」


 痛い、が、突進よりはダメージがない。


 一度距離を取る。

 アースボアも先ほどの攻撃を警戒して一度様子を見ているようだ。


 中級の中でも威力の高い炎魔法を当てればかなりのダメージを与えられるかもしれないが、こんなとこでやると火事になりかねない。けど、やるしかないのか…。


「風魔法《 カマイタチ 》」


 放った風刃はアースボアを覆う魔力で弾かれて軌道が逸れて周囲の木々を切り倒していく。

 威力の高い初級でも無意味か。

 一度身を隠そう。


水魔法ミスト


 さっきよりも広範囲に濃い霧を発生させる。もはや30cm前も見えないほどの濃さだ。

 これに隠れて魔法をぶつける。


「風魔法《 ウィンドレイン 》」「氷魔法《 アイススパイク 》」


 上からは風刃の雨、下からは氷柱の猛襲。

 しかし手ごたえはあまり感じない。

 

 霧が晴れるとそこには多少傷のついたアースボアが平然と立っていた。

 やはりか。


 周囲の木々は風刃に切り倒されもはや裸の大地のようだ。


 ーピチャピチャ


 アースボアが走り、霧で濡れた地面が音を立てる。


「ガッ!」


 くそっ。

 ギリギリで避けれたが少しかすってしまい地面に体を打ち付けてしまった。

 今ので足をやってしまった。


 もう動くな!


植物魔法ソーンウィップ


 蔓を絡ませるように伸ばす。これ自体では全くダメージはなさそうだが、縛られて動きが取れなくなっている。


「バオッバオッ」


 アースボアは蔓を切ろうと暴れるがそのたびに棘が毛皮に絡まる。

 周囲には誰もいない。

 よし、今だ!


「炎魔法《 インフェルノ 》」


ーーーー

インフェルノ

炎系統中級魔法

高密度の魔力を周囲へ一気に拡散し、広範囲を灼熱で覆う

ーーーー


 アースボアを中心に周囲を炎の海にする。

 木を切り、地面を濡らすことで延焼は防いだ。

 

「ブ、ブオォォォ!!!!」


 やったか?

 もう動けない。意識を保つのも限界だ。どうか倒れてくれ。

 

 突然炎の中から焼け焦げたアースボアが現れた。

 しまった!!


「あぶない!」


 その声と共に何かに引っ張られて後ろに下がる。

 アースボアはそのまま木にぶつかり、倒れた。今のが最後の攻撃か。


 それより今の声はいっ、たい...。


 ーバタンッ



 「はっ!」


 気を失っていたのか。

 転がるアースボアの死体、焼けた木々。

 勝てたんだ。よかった。


「ワフッ!ワフッ!」


 後ろからアビスの声がして、飛びついてくる。


「よかった。アビスも無事だったんだな」


「ワフッ」


 そういえばあの時聞こえた声は…。


「アビスさっきここに誰かいたか?」


「ウゥン?」


「気のせい、か」


 それより早く魔石を回収して街に戻らないと。

 魔石以外の素材は使い物にならなそうだな。


 中級の傷薬で傷を治してから魔石を回収する。


 魔石を回収して森を出ると先ほどの獣人3人組がいた。


「あれ、まだこんなとこにいたんですか」


「あなたは!無事だったんですね。よかった」


「なんとか倒せました」


「あれを倒したんですか!?すごい」


「それよりあなたたちはなぜまだこんなとこに」


「それが、負傷した仲間を治療していたんですが傷薬が足りなくて」


「じゃあこれを使ってください。中級です」


「いや、でも…」


「余ってたんでいいですよ」


「じゃあ。ありがとうございます」


 男が仲間に傷薬をかけるとたちまち傷は塞がった。


「う、うぅ」

 

 まだ目は覚めなさそうだがもう問題ないだろう。


「大丈夫そうですね」


「本当にありがとうございます!」


「いえいえ。では俺たちは街に戻るんで」


「あの、一緒にいる魔物、いや魔獣?はいったい…」


「こいつは俺の仲間のアビスです」


「なんか…」


「なんですか?」


「あ、いえ、なにもないです!」


「じゃあ失礼しますね」


 去り際獣人たちは深々と頭を下げて礼を言ってくれた。

 それよりアビスのことを魔獣って言ってたな。

 たしか魔獣は理性があって魔法を使えたりするとか。

 まぁたしかにアビスは魔物というよりは魔獣か。

 ちらっとアビスを見ると、何もなかったように普通にしている。



 ギルドに戻ってきたのは正午ギリギリだった。


「戻りました。依頼の魔石です」


「!?お、お預かりします。あの、お体の方は大丈夫ですか?」


 服がボロボロなのを見て驚いたようだ。


「あぁ、もう回復してあるんで大丈夫です」


「それはよかったです」


「あの、依頼は達成でしょうか」


「はい、ブレードモンキーの魔石10個とアースボアの魔石1個、確かに確認しました。おめでとうございます。これでCランクにランクアップとなります。登録証をお出しください」


「はい」


 差し出した登録証に魔法がかけられてランクが上がる。


「ランクアップが完了しました。今後ともよろしくお願いしたします」


「はい。では失礼します」


 疲れた。早く帰って休みたい。


「蓮くん!」


 リーシャさんが走って寄ってくる。


「どうしたの!ボロボロじゃん」


「ちょっと苦戦しちゃいまして」


「怪我は?どこか痛むところは?」


「もう治したので大丈夫ですよ」


「ほ、ほんと?」


「はい。体はもう元気です。たださすがに疲れたので今日はもう休もうかなって」


「そうだね。その方がいい。あ、Cランクおめでとう!お祝いはまた今度にしよっか」


「すみませんそうしてくれると助かります」


「じゃあしっかり休んでね」


「はい。失礼します」



 宿に戻って速攻ベッドに倒れる。


 そうだ、一応魔物が活性化してたことを報告しておいた方がよかったかもな。

 まぁ明日にでもしよう。

 

 最後に聞こえた声、明らかに誰かに助けられた。

 誰だったんだろう。いつかお礼を言いたいな。


 色々あったがやっとCランクか。無事上がれてよかった。

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