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『詩忍にくちなし』~文字で戦う世界のお嬢様と勇者執事~  作者: ふるなゆ☆


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58.追放するのには理由がある

 バトルコロッセオの待合室室に戻った。そこにはオーーーン三きょうだいに加えて、ピューリと追放された少年がいた。


「初戦闘、初勝利おめでとう。お前らならいい戦いができると思ってたぜ。受けてくれてありがとな、オーーーン三きょうだい。」


 負けた三人に向かって追放されたはずの少年が優しく「お疲れ様です」と声をかけた。


「ちっ。情けねぇところ見せちまったよ。恥ずかしい。」


「大丈夫です。ずっと一緒に戦ってきたので、何とも思ってませんから。」


 なんか追放されてギスりそうな関係性なはずなのに、それすら受け入れて仲良く話している。

 なんか……おかしい。頭がバグりそう。


「そういや、追放されたのを見て啖呵(たんか)を切ってバトルに発展したんだよな。それであの追放なんだが、あいつらに悪気はないし、それどころか好意(こうい)からやってる。見ろよ、追放されたアイツも嫌な様子じゃねぇだろ?」


「……うん、なんで?」


「ヴァリアントギルドには追放はいい事なんだぜ。」


 追放は……いい事? 意味が分からない。


「昔の話さ。史上最強の座を得た男を知ってるか? バムっていう男さ。そいつは元々ヴァリアントギルドに所属していた。まぁ、ギルドっつったって、その時代じゃヴァリアントギルドしかなかったけどな。」


 史上最強の存在、バム……。どんな男なのだろうか。


「バムさんは名をあげる以前は"Aランク"パーティーのお荷物だったらしい。それで、彼はパーティーから追放された。そこから、バムさんは冒険を重ねて強くなっていき、いつしか史上最強の座の称号を得たんだよ。まぁ、魔王討伐で魔王を封印した後、姿を消しちまったけどな。噂では石像になったって言われてる。そんなのはどうでもいいか。」


 とりあえず、バムと言う人物が追放を得て最強となったってことね。


「んで、ヴァリアントギルドでは、これから伸びるぞって奴を追放して自分のパーティーを作って貰う文化ができたんだ。あのオーーーン三きょうだいなんかは顕著(けんちょ)だな。一人の成長株を丁寧に育ててやって、一人立ちできそうな時期になったら、追放劇(・・・)で一人立ちさせてやる。」


「あれって演じてたのっ!?」


「ああ、そうだぜ。追放された子はパーティー作って、"Eランク"から駆け上がっていくんだ。ヴァリアントギルドならではの文化だよな。」


 はははと笑うピューリ。仲の良さそうな追放した人達と追放された子。……なんなんだ、この茶番劇は。

 なんかあの子のために立ち上がった私達が馬鹿みたいに思えた。


「はぁ……」なんかため息が出た。





 ギルドに戻る時、路地裏でどこかで聞いた声が聞こえた。耳をすませば、それはダイセナの声だった。



「くそがっ!」



 悔しさを全開にして、強く壁に当たる彼女。

 私は違う道を選んで、ギルドへと向かった。



 ギルド内部――。


「ダイセナの奴、後遺症で二度とは戦えない体になったんだってよ。」「まぁ、態度悪いし、天罰でもくらったんじゃねぇの!」


 笑い声が聞こえる。


 なんかいい気分はしない。少しここから出たくなった。


 私達はギルドから出た。


 すぐそこに壁にもたれたダイセナがいた。


「あっ――。」話題の人がいて思わず声が出た。


「あ? 何?」


「いや、何でもないです。」


 すぅ、って消えるように目を逸らして歩く。


「待てよ。」


 止められてしまった。会話するしかないみたい。ただでさえ、彼女は戦えなくなり嫌な気分になっている。その気分のまま嫌なこと言われそうで会話したくない。


「借りを返させろよ。」


「何の話……?」


「あん? あたしを助けたって聞いてるぞ。それ以外に何があるってんだよ。それより、ナギサから聞いた。覇戦を目指してるってな。そんな実力で出るなんて笑わせるね。」


 とっても嫌味な言葉だ。気分が悪くなる。


「だから、あたしらが鍛える。これで貸し借りゼロだからなっ。文句あるなら、助けた過去の自分に言っとけ。ったく。」


 嫌いなのには変わりはない。だけど、どこか不思議な優しさが見え隠れするような気がして、奇妙な感覚だ。



「まぁ、いい。先に言っておく。お前ら二人は弱い。実力不足だ。コイツのお陰で"Dランク"になってるだけだ。」


 指を指されたのはマユダだった。


「悔しいけど、お前に教えられることは一つもねぇ。お前はもう、帰っていいぞ。」


「えー。暇じゃーん。」


 うだうだしながらも、マユダは都市で暇を潰しに出かけた。



 残された私達二人。


「お前らに足りないものを言ってやる。」


「まずお前。お前は戦闘力はあっても技の手数が少ない。特に、決め手が全くない!」


 ハロミトに言われる言葉。その通りだと思う。戦うことはできても、敵が弱い程にトドメをさせなくなる。


「前みてぇな体を動かすことはできねぇが、教えることはできる。お前はあたしが直々に叩き込んでやるよ。ありがたく、思っときな。」


「感謝するっす!」


 ……。あれ、私は? 助けた私への貸し借りで教えてくれるはずでは? どういうこと? だういう状況?


「そして、お前は技の手数は多いけど、戦闘面が弱い。そのせいで決め手がなくなってる。戦い方次第では決め手になるのにな。」


 私はハロミトとは逆。一理ある。


「あたしが教えるよりも適任がいる。そこにいるんだろ?」


 ギルドからピューリが出てきた。


「こいつを鍛えりゃいいんだよな?」


 私はピューリに教えて貰うことになった。



 それぞれが別の場所へと向かう。

 私はギルドの中にある特別な部屋へと向かった。


 周りにマユダがいないことを確認してから、


「ねぇ、"まさかり担いだ魔法使い"って知ってる?」と聞く。



「確かあのアンチ(・・・)ギルド(・・・)の幹部"黒天(こくてん)喜面(きめん)"の異名だったっけな。それがどうしたんだ?」



「実は――」



 少しだけ時が止まったような気がした。

 その中で私だけが声を出していく。



「なるほどなぁ。じゃあ、これだけ守ってくれ。ハロミトには絶対に言うな。」


「どうして?」


「ノイズになっちまう。今から、お前さんに"中堅"の戦い方ってもんを教えてく。聞きゃあ、理由も分かるってもんさ。」



 ピューリによる修行の時間が始まった。

 彼は被っていたハットに手を当てた。

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