59.中堅の戦い方
「さて、お前さんは"中堅"が一番向いてる。んで、その役割についてまとめるぞ。」
「はい!」
「"中堅"ってのはな、的確な配置と指示で仲間を活躍させる役割なんだ。戦いでは余計なことを考えちまうと戦いの質が落ちちまう。例えば、スポーツの試合には監督やコーチが付いて余分な選択肢を削ぎ落とし、選手のポテンシャルを十分に高めるみてぇに、お前さんがハロミトとマユダの実力を十分発揮させるんだ。」
「だから、ノイズになるって言ったんですね。」
「そうだ。まとめてやると、"中堅"は、余計なことを考えさせないように責任など含めた余計な思考は全て引き受けて、逆に活躍は譲ってモチベーションを高めさせる。褒められはしねぇが、確実に必要な役目……お前はパーティーの縁の下の力持ちになれ!」
「じゃあ、私は指示だけしてれば良いってことですか?」
「何を戯言を煙草みてぇに蒸してんだ? 仲間の戦いが楽になるように中距離攻撃してやれ。それに、仲間が最善尽くしたところで隙は出てくるもんだ。そういう隙をお前が埋めろ。」
そう言えば、確か以前教えて貰った"中堅"の役割は指示を出すことに加えて、中距離攻撃することと、取りこぼした敵を倒すこと。今言われたことはその復習的なものだろう。
「さぁ、こっからはお前さんの弱点を言ってやる。弱点は戦いが後手後手に回ってることだ。いいか、お前さんはまず『重火器を殴る』で何とか場を持たせようとする。が、それが通じなくなってピンチに陥るんだ。んで、そこで漸く違う武器に変えて対処する。今はそれで敵の虚をついて倒せてるが、倒せなかった時、お前さんはどう倒すつもりなのか……考えたことねぇだろ?」
言われて見れば、その通りだ。最初の攻撃が不発して、結局、その場凌ぎになってる。
「じゃあ、どうしたらいいんですか?」
「せっかく仲間がいるんだ。それを利用しない手はねぇ。最初は様子見しろ。」
「様子見……? え? 戦わないの? 指示だけしか出せなくない?」
「馬鹿言え。いいか、初動は仲間を信頼して、敵の動きを観察しろ。そして、敵に対して有効な攻撃方法を見つけるんだ。そうすりゃ、相手に苦戦を強いることができる。ただ、お前さんのパーティーにはタンク役がいねぇから、ちょい厳しいかも知れねぇけどなぁ。」
そこに三つの影が近づいてきた。
「助っ人を呼んだ。この助っ人と一緒にパーティーを組んで実践練習でやるぞ。」
そこに現れたのはオーーーン三きょうだいだった。
「じゃあ、行こうか!」
◆
西大山――そこは力試しの山。
私達は山を登っていくと、熊の魔族に遭遇した。子熊の魔族が複数体群れている。
「よく見とけ! オヘンシン、タンクよろしくっ!」
「いいよー、いいよー。」
【鬼!】
彼は鬼となった後、敵の付近へと行きそこで素手で戦っていく。
「オゲン、遊撃っ!」
「任せろ。【大太刀】!」
巨大な刀で周りの子熊を斬っていく。
数体、子熊が近づいてきた。
「こういう取り残しは"中堅"の役目だよなぁ。ここは重火器の高威力を放てば問題なさそうだ。ジュリネ、何も考えず適当に撃て。後は後衛のコイツが何とかするから。」
「コイツって言わないで!」オコトが強い口調で言う。
【自分自身】【重火器】
私は重火器を繰り出した。
【自動】
オコトの能力によって、変な所に撃った砲撃も勝手に自動追尾によって命中していく。
とても……戦いやすい!
「さて、終わりにするか。フィニッシュ頼む!」
オヘンシンとオゲンがこちらへと戻ってきた。オゲンの大太刀に触れるオコト。
【大きくなれ!】
巨大化する大太刀。もはや建物級。
巨大すぎる一振。
魔族を一刀両断した。
「これが"中堅"の戦い方だ。パーティーを十二分に引き上げる。今は俺の指示があったが、これを俺無しでやれるようになるのが今回の目標だ。」
できるかどうか不安だけど、仲間のためにやるしかない。
「これからよろしくお願いします!」
「今日から一時的に俺らの仲間だな。最高の追放劇にしてやるからな。」
追放劇するんだ……。ちょっと苦笑い。
けど、三人とピューリの存在はとてもありがたかった。
次は私の番だ!
――――――。
再び熊の群れが現れた。
「俺は木の上で見守ってやるから、しっかり試してみろ。」
「はい!」私は力強く言った。
「じゃあ、オヘンシンさん、鬼になって、攻撃して下さい!」
「いいよ、いいよー。」
【鬼!】
鬼となった彼に攻撃が向かう。
「オゲンさん、ここから迂回して周り込んで、横から敵を陽動してきて下さい。」
「えーっと、つまり、横から攻撃しりゃいいってことだよな?」
「はい!」
【大太刀】
オゲンが攻撃をしかけに行った。
「オコトさん、私の攻撃にオートをかけて!」
「はいはい。」
【自分自身】【重火器】――【自動】
子熊を横から攻めていく。
「えっ?」
さっきまで鬼と戦っていた魔族らが、私達目掛けて向かってきた。
ドォン、ドォン!
何発撃っても、数に押されて近寄られる。
ここは、何とかやり切るしかない。
【重力!】
ブンブン。私は重火器を振り回して子熊を飛ばしていった。
さらに、オゲンが合流して魔族を斬っていく。
「オゲンさん。敵を集めてから、低重心で回転しながら剣を振り回して、周りの敵を一網打尽にする攻撃をお願いします!」
「おいおい。つまり、どういうことだ?」
木の上から「回転切りだそうだ」とピューリが言葉を言い放った。
「そういうことか!」
回転切りが決まり、周りの敵を大分減らした。
しかし、まだ敵は残っている。
「みんな、しゃがんで!」
【大きくなれ!】
巨大化する重火器。それを横に振り切る。
吹き飛ばされた魔族は一匹の熊を残して、他の子熊は倒しきれた。
残り一匹に向かって銃口を向ける。
巨大――砲弾!
ドォォォォドン!
熊の魔族は跡形もなく消し去った。
倒しきれた。能力を解除して、地面に座った。……どっと疲れた。
「グダグダじゃねぇか!」
オコトの何気ない一言。ぐうの音も出なかった。
「まぁ、指示が不適格だな。オゲンと一緒にジュリネも攻撃したろ。それで攻撃対象が中堅に代わっちまって、せっかくのオヘンシンのタンクが崩れちまった。その後も指示はなくて、オヘンシンは相当、手持ち無沙汰だったはずだぜ!」
「その通り、その通り。」
指示だけじゃない。完全に私が出しゃばったせいだ。反省点が私の頭にのしかかってくる。
「んで、指示が長い。もっと短く分かりやすく言え。ただでさえ、戦いに集中してるんだ、難しい言葉や長い言葉はかえって混乱を招く。余計なことを考えさせないように端的に伝えろ。」
心にダメージが……。
言われて見れば、その通り。まさに正論の槍が強く突き刺さる。
「他にも細かい部分は色々とあるが、これ以上は混乱を招く。少しずつ身につけていけばいいんだ。」
「ご指摘、ありがとうございます。」
◆
十日後――。
◆
熊の魔族が現れた。
「じゃあ、行くよ。」
【自分自身】【重火器】
適当に放った攻撃。それに驚いた熊が襲いにきた。
「オゲンさん、オコトさん。巨大大太刀でぶっぱなして!」
「おうよ!」「任せなよ。」
【大太刀】――【大きくなれ!】
巨大な剣の一振。それらが近づいてきた熊達を一掃した。
「ここからは残党狩りね。オヘンシンさん、周囲の確認お願い!」
「いいよ。いいよ。」
【大鷹】
鷹となり空を見渡すオヘンシン。そして木で見えなくなった子熊を見つけてくれた。そこにオゲンが大鎌を繰り出してトドメをさす。
「お見事! テンプレ以外もちゃんと身に染み付いている。俺に教えれることはもうねぇなぁ。よくやった!」
倒しきった敵。それに対するピューリの評価を聞いて、心が舞い上がる。けど、それを表に出すのは恥ずかしいので外面は優しく微笑むだけにした。
私達は下山して、ギルドに戻った。
「修行だってなぁ。面白いことやってるじゃねぇか。俺様も混ぜてくれや。」
初めてギルドに来た時、入口付近で私とぶつかった厳つい見た目の人だ。
「そうだなぁ。てめぇらと俺様で戦うってのはどうだ? もちろん、ピューリを入れて五対一だ!やらねぇか?」
いきなりバトルを吹っかけられた。しかし、私達にハンデが有利すぎる。
誰も返事をしなかった。
笑っていたはずのみんなの顔が、固まっている。
「五人なら余裕じゃない?」とピューリの耳元で小さく囁いた。
「聞こえたぜ。余裕とは面白れぇこと言いやがる。俺様よぉ、甘っちょろい奴を叩き潰してぇ性なんだわ! そう言われたら、もうやり合うしかねぇもんなぁ。じゃ、明日、バトルコロッセオで待ってるぜ!」
そう言って、兎や角言わせず、去ってしまった。
「流石に五人でも勝てねぇよ」なんて弱気の四人。どうしてそんなに弱気なのだろうか?
「あの人が、ヴァリアントギルドのギルドマスター、リュウジャスさんだ。正直に言う。強すぎるんだよ。あの方……。」
思わぬ相手と戦うことになってしまった……。




