60.龍ってこんなに強いんだ!
バトルコロッセオ――。
五対一のバトル。全滅するか拠点を破壊されると負けとなる。
私とオーーーン三きょうだい、そしてピューリ。対するはギルマスのリュウジャス。
フィールドは建物や機械が建ち並ぶ工場地帯だった。
「これが直接対決じゃなくて良かったぜ。俺は横から隙をついて拠点を破壊する。後は頼んだぜ。」
ピューリは一人、早々と別行動を取った。
私達は警戒しながら進んでいく。
空から突如、現れる赤と黒の巨大な龍。
「あぁ? ピューリの野郎がいねぇじゃねぇか。陽動か? いや、拠点狙いか。面白ぇ!」
龍は体を捻って、戻っていく。
「この龍がリュウジャスだよ。」
「逃げるのなら、追い討ちしかないでしょ。オゲンさん、オコトさん、オートで大鎌投げて! オヘンシンさんは攻撃を警戒して!」
「おう!」
【大鎌!】――【自動】
投げられた大鎌が龍に直撃した。
「めんどくせぇ。地形が平らなら面倒じゃなくなるよなぁ?」
龍がとぐろを巻き始めた。
その間にも攻撃を仕掛けていくが、ダメージはあんまり通っていないように見える。
「さぁ、今日はどんなビートを鳴らしてくれるんだ、DJ! 【リズム】っ! さぁ、あんたらも音に乗りやがれっ! 【Listen】っ!」
ドゥムドゥムドゥム。
ドムドムドドド。
ドゥムドゥムドゥムドゥム。
体の中に変なリズムが流れ込んでくる。なんか体の中が勝手にビートを刻んでくるんだけど……。
「何なの、これ。」
「これが、ギルマスさんの戦い方なんだ!」
「リュウジャス様をぉ、見くびりゃ最後。稲妻の衝動! "ライジングショット"!」
龍から放たれる雷が辺り一面を襲う。
「気をつけて。龍に出来ることなら、何でもできるから。」
「龍にできることって、何?」
辺り一面が暗くなり始めた。雲行きが怪しくなっていく。
「吹き荒れろ嵐。良くなれ見晴らし。放つ"竜巻"で、てめぇら下敷き!」
龍の回転で竜巻が現れる。立つだけで精一杯だ。
「見つけたぜ……ピューリ。地形の不利を、覆し勝利。ほら、この通り。消えるぜ、ビルディング。死角なしで視覚野の増長。向けた砲口、その方向に"咆哮"。これでお前事、相当掃討。」
龍が放つ衝撃波。建物を破壊する。
「無茶苦茶しやがるぜ。」
二発の銃声が鳴り響いた。ピューリはまだやられていない。
嵐も収まっている。
「私達が眼中に無い今がチャンス。一撃で葬るよ。オコトさん、巨大化お願い。」
【自分自身】【重火器】――【大きくなれ!】
巨大な大砲が現れる。
「倒しきれなかったら、オゲンとオコトで追い討ちお願い。オヘンシンはもしも狙われた時の壁、お願いね。」
「もちろんだぜ!」
龍に銃口を向ける。
ドォォォォン!
砲撃が龍を襲った。
一旦、地面に落下するも再び空中へと飛んでいく。
【斧】――【自動】
投げていく斧。
確実にダメージを与えられている。
もう一度、巨大な重火器で砲撃する!
カチッ――。
「引き分けのねぇ殺り合いは、命かけ、弾放つ択をセレクト。こんなんじゃまだまだ足んねぇなぁ。差をつけ、様つけさせる、Damn it。ひれ伏すためにすること? はっ! 何もしねぇ、ただの【リフレクト】――。何もせずにとも攻撃がヒット。ビビッと来る頃なゃ終わる。ジ、エンド!」
【鬼!】
私達を襲う強烈な一撃。オヘンシンが咄嗟に変身して、攻撃を庇ってくれたお陰で何とか無事でいられた……。
けど、今の攻撃でオヘンジンがリタイアした。
残るは四人。
「何が起きたの……。」
「ギルマスさん、確かリフレクトって言ったよな。となると、俺らの攻撃を跳ね返されたってとこだな。」
つまり、私達の放った巨大大砲を跳ね返されて喰らってしまったってことか。じゃあ、下手な攻撃ができないじゃん。
重火器の大きさが戻った。
龍がこちら側に顔を向けた。
「終わらねぇし、終わらせねぇ。得意のライムで握り潰す。不屈の精神見せろや、なぁ。これからがヒート――アップするビート。きっと終わりさ、拒否不可【リピート】!」
大爆発。
は――?
大きく吹き飛ばされて地面を転がった。
さっきの爆発の攻撃を再び受けたみたいだ。
そのせいでオゲンとオコトもリタイアしてしまった。
私は重火器が盾になってくれたお陰で何とかやられずに済んだみたいだ。
ひとまず状況確認。
龍を挟むようにして私とピューリがいる。他に仲間はいない。ここは私が出ていくしかない。
敵は空を飛んでる。近距離攻撃は厳しい。
下手な攻撃は跳ね返してくる。
「じゃあ、武器はこの……重火器しかないよね。」
「現れる【燐火】。てめぇに引火。何の因果か? 終わらねぇ炎の芝居だ。外側スライダー空振りするみたく泥試合にゃ。俺様が引導を渡してやる次第だ。彼岸花と共に貰いやがれ、F×××ER。」
青い炎に包まれる。
身が持たない。時間がない。
【重力――!】
私自身の重力をゼロに等しくした。まるで月にでもいるようなふわふわ感になれる。
【重火器】
カチッ。ドンッ。
地面に向けて放つ!
その反動で私は吹き飛ばされた。
空中を漂うように進んで龍の頭へ来れた。
捨てられた重火器を消して、私にかけられた重力も消す。
再び【重火器】を出して、今度は重火器に【重力】をかけて――
縦にぶん殴る!
「やっぱり倒しきれないよね……。まぁ、けど……。」
"重力解除"。
そして、
【重力!】重火器が重くなる!
これで落下するしかないはず。
「潰されといて!」
爛れていく体。あとほんの僅かしか居られない。
龍の頭部は地面に落下していく。
潰れてリタイアしてくれれば儲けもの。これで倒しきれなくても――地上にはピューリがいる。近距離なら彼の攻撃が通じるはず。
シュッ――。
私はそのフィールドから消えてしまった。
◆
選手控え室――。
私はそこに戻された。
「大丈夫。きっとピューリが何とかしてくれるはずだから。」
「俺の名前を呼んだか?」
「え? 何でいるの? ここに!」そこにいる彼の存在にびっくりした。全て委ねて戻ってきたのに、すぐそこにいるってびっくりしない?
「すぐに尻尾と建物の間で潰されて一発アウトだ。やっぱ強ぇわ。勝てねぇわ。」
人智を超えた存在である龍。そして、独特な戦い方。あまりにも掴めない未知にちょっと怯えそうな自分がいる。
「そうだ。お前さん、覇戦に出たいって言っとったよな。じゃあ、このギルドで一番強ぇパーティーとも戦わなきゃならねぇ。」
「一番強いパーティーねぇ。」
控え室から退出しがてら話していく。
「それがギルマスさんの率いるチーム"フライングフォース"だ。今ではギルドに必要な四つの役職をメンバーがそれぞれ担ってる。」
「へぇ――。その四人ってどんな人なの?」
「リーダーはもちろん、ギルドマスターのリュウジャスだぜ。聞いて驚け。ギルマスさんの役割はタンクなんだぜ。破壊力えぐいのに守り特化だったって信じられねぇよな。」
まさかあのギルマスが壁――タンク役だったとは。思い返せば、跳ね返し技とかも使ってきたし、全然ダメージ与えられなかったし、タンクとして考えれば優秀すぎる。
「サブギルドマスターのイッスー君。俺やお前と同じ"中堅"だ。知略は並外れてる。ちなみにとべるいすだ。」
トベルイス? 一体何の暗喩なのだろうか?
「人事(加盟と脱退、除隊を司る)――ここだとギルド嬢のナギサ。敵味方問わず回復させる能力。前衛でギルマスさんと一緒になれば崩れない最強のタンクになるし、"後衛"に行けば最強格のヒーラーとなる。俺はあまり相手にしたくないな。」
ギルド嬢の彼女もまた最強のパーティーの一員だったんだ……。そんなに強い人だとは思わなかった。
「最後に、エースのダイセナだ。元はアイツの親戚がメンバーだったんだが、アイツが力づくで地位を手に入れたんだ。ちなみにアイツは飛べねぇが、その親戚って奴がハゲタカになって飛べたから、全員飛べるパーティーってことで、フライングフォースって名前になったらしいぜ。」
リュウジャス、イッスー、ナギサ、ダイセナ。この四人のパーティーと戦って勝たなきゃいけない。――大切な仲間を取り戻すための覇戦に出るために。
「そうそう、話変わるけど、四つの役職のうち、人事とエースはギルマスかサブマスが兼任できるらしいんだが、あの噂のアンチギルドってとこの……えーっと、ヘイムはギルマスの他に人事とエースを兼任してるらしいぜ!」
リュウジャスと話している間にみんなの所に辿り着いた。
「十日間。よく頑張った。だが、お前はもう俺らのパーティーから追放だ!」「もういらないのよ。あなたみたいな弱い人。」「そうだー、そうだー。」
あっ、オーーーン三きょうだいによる追放劇が待ってたのね……。
……。
何この茶番……。
ここギルドの中じゃなくて一般の人もいるバトルコロッセオだから、滅茶苦茶人の視線感じて恥ずかしいんですけど。
「追放だぁ! わっしょい。わっしょい。」
ヴァリアントギルドの人達もそれで盛り上がらないで。他の人、迷惑してるから!
マジで、恥ずかしいからやめて!!




