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言葉で戦う世界で、「は」しか使えない執事と、お嬢様の成り上がり~『詩忍にくちなし』~  作者: ふるなゆ☆


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61.サブギルドマスター(サブマス)

「俺、ちょっと強くなったっすよ。強くなったところ早く見せたいっす!」


 私はハロミトとマユダと合流し、ギルドに向かった。



 ギルドの中でピューリが柱に背を持たれて煙草を蒸していた。


「そういや、お前らはサブマスさんとはまだ面識ないんだよな。」


「うん。そうだけど。」


「このギルドに所属してんのにサブマスさん知らねぇのもちょっと(なん)だしな。少し紹介してやる。着いてこい。」


 私達はピューリに連れられて、少し奥側の机にきた。


「この方がサブマスのイッスー君だ!」



 ドンッ! ……。ってオコトさんじゃん!



 どこからどう見てもオーーーン三きょうだいのオコトさんなのですが……。


「あたしじゃないわよ。」


 さっと彼女が座っていた椅子から退くと、どうしてか椅子が独りでに話し始めた。


「初めまして。僕は椅子のイッスーです。得意なことは飛ぶこと! 好きなことは軽い人に座って貰うこと。これから、みんなよろしくねっ!」


 

 ま、さ、か、の、喋る椅子っ!?

 以前言っていたトベルイスって飛べる椅子ってこと? 嘘でしょ?


 なんか変なものを見た。学校の椅子みたいな存在が喋って動いている。


「ってか、どうして椅子が喋ってんの!?」


「椅子は喋るでしょ!」


「いやいや、普通椅子は喋らないよ!」


「そうかなー。椅子が喋るのは常識だよ。」


 ピューリが笑いながら、

「俺が補足しよう。アルカナギルドの実験体で唯一完成した人間型椅子なんだとよ」と補足。


「人間型椅子……そんな人間型ロボットみたいな感じで言うんだ。全然、語呂良くないけど。」


「まぁ、人権のないアルカナに嫌気がさして逃げ出したコイツをギルマスさんが保護したって訳だ。今ではみんなの愛されキャラかつ最強の二番手だ。」


 こんなのが……二番手なの?


「空を自由に飛びたいなー。はい、イッスーくぅん!」


「いや、タケコプターでしょ!?」


 本当にこんなのが二番手で、知略がすごい存在なの!? 絶対嘘でしょ? このギルド、大丈夫!?



 変なサブマスだな、と思いながらその場を後にした。



 ――――――。



「おめでとうございます。"Cランク"――一般へと昇格致しました。」


 ギルド嬢から言い渡される伝令。

 私達はその言葉をしっかりと受け止めた。


 着実に覇戦への道へと登り詰めてきている。


「早速ですが、"Bランク"――一流パーティーとバトルしますか? 勝てば昇格できます。覇戦に出場したければ、勝負を引き受けて勝つのが現実的だと思われますが……。」


 受けない理由は見当たらなかった。


「では、お相手チームを紹介しますね。お相手は"ダイエースズ"となります。」


「ダイエースズ……。」


 一体どんなチームなのだろうが。


 そこにピューリが現れた。


「俺らが"ダイエースズ"だ。よろしくなっ!」


 ピューリ達のパーティーとバトルするのか。知ってる相手だからこそ、強さが分かる。相手は格上だ。

 言うなれば、師匠的ポジション。だからと言って負けてはいられない。


「本番、楽しみにしてるぜっ!」


 試合は明日行われる――。


 そして、試合当日となった。

 


「パーティーに二名欠員がありますので、二名の欠員補助をさせて頂きます。リーダーのダイセナに各補充メンバーを発表して頂きます。」


 ダイセナはやる気のなさそうな体裁で言葉を放つ。


「ベルルに代わってナギサ。」


「お互い死力を尽くしましょう。」


 

 実力は未知数。だけど、最強のパーティーの一人だと言うことと最強格のヒーラーということは分かっている。警戒しないと……。


「あたしに代わってイッスー。」


「よろしくっ。椅子だけにナイスな戦いをするからねっ。」


 またもや最強パーティーから一人。正直、強いかどうか分からない……椅子。どんな戦い方してくるか全然予想もつかない。



 私達はバトル会場へと向かった。





 バトルコロッセオ。

 全滅か拠点が破壊されると負けとなる。


 フィールドは木々が生い茂る森の中。


 私、ハロミト、マユダの三人と対するはピューリ、アナココ、ナギサ、イッスーの四人。相対的に不利。だからこそ、それを加味して指示しないと……。


 試合のゴングが鳴った。



「ひとまず固まって動こう!」



 森の中をゆっくりと進む。進めば進むほどゆっくりとした下る斜面になっていく。


 お互いの拠点の真ん中の位置――一番の低地にアルマジロが待ち伏せていた。

 他の敵は今のところ見当たらない。


「ハロミトお願い。マユダ、私で周りを警戒するよ!」


「了解っす!」


 ハロミトが剣を引き抜いた。


発火(はっか)――!】


 剣は炎を(まと)っていく。


 あべこべで殺せる攻撃が殺せない攻撃に変わる剣だが、纏う炎が殺傷力を生んでくれる。



【アイアン!】



 アナココも一歩も譲ってくれない。

 それどころか鳥の囀りが鳴り響き、彼はすぐに回復している。


「回復ってさいこー。出張で食べる昼食なみにさいこーだー。」


「全然、倒しきれないっす!」


 

【まさかり!】


 マユダが取り出した斧。斧が木に隠れた場所に投げられた。


 鳥が飛び出してきた。――ナギサだ。


「あの鳥、集中狙い!」


 あの鳥は私達もまとめて回復させてくれる。けど、あの鳥がいるだけで倒しきれなくなる。倒すつもりさえなければ、最強の壁役(タンク)を作り出す厄介な敵。早く倒さなきゃ……。



 パンッ! パンッ!



 背後から鳴り響く銃声。


「拠点がやばいっ! 一時撤収!」


 拠点が破壊されたら負ける。

 急いで戻らなきゃ。あの二人に構ってる余裕なんてない。


 緩やかな斜面を登っていく。



 拠点は傷ついていたけど、無事だった。


「ピューリの姿は見当たらないっぽい。多分、逃げられちゃったねー。」


 まんまとやられた。


 最強のタンクに気を取られている間に拠点を攻撃。戻った頃には逃げられる。敵の方が一枚上手だった。


 アルマジロと夜鶯鳥(ナイチンゲール)が近づいてくる。


 空には椅子が浮いている。


 ジリジリと近づいてくる。


「この戦局、まずいかも……。」


 ここで激しいバトルをすれば拠点が巻き込まれる。敵の拠点に行けば、その間に拠点を壊される。


 どっちみち……詰み。



「お母さん。ここは僕に任せて!」


 何か策があるみたい。今はそれに(すが)るしかない。



【マグマ】+「【魔法】サンダー!」



「喰らえっ! "太陽支配(プロミネンス)獄炎嵐(フレア)"!」



 前方の広範囲に熱気が放たれていく。


 熱風が吹き荒れる。

 前方の視界が歪む。



 しかし、彼らを倒し切ることなんてできない。


「何も意味なくなくないじゃないっすか!」


「うーん。違ったかー。いや、やっぱりそうだ。この大技は妨害(ジャミング)効果があるんだよねー。」


 椅子が降りてきた。


 アナココとナギサが人間に戻った。


「ずっと上にいるのに何もしかけてこないからおかしいと思ったんだよねー。」


流石(さっすが)~。まぁ、分かったところで遅いけどねー。」



()力上昇!】



 カン。ハロミトの剣が銃弾を止めた。


「今の攻撃はやばかったっす。」


 ピューリの姿を発見した。さっき彼の放った銃弾は凄まじい殺傷力を持っていたようだ。効果が逆になる剣のお陰で、攻撃を防げたけど、そうじゃなかったらやられていた。



()心伝心――!】



 以心伝心!

 なるほど、そういうことね。技の効果で離れていてもお互い共有できるのか。


「ねぇ、知ってる? 集団戦において、軍隊的な指導が強くなる理由。肉体的に覚えたり思考を単純化したりするのは何故? ……それは考えることが少なく済むからさ。そうすれば隙が減るもんね。」


【イメージ共有!】


「集団で隙が大きくなるのは明確な弱点。だのに、言葉で伝えれば語弊やそれに伴う誤差が生まれ、そこから隙が生まれる。それこそ弱点となるまでの隙なんだよ。」


()動!】


 椅子が浮かび始めた。



「僕はそれを克服できるんだ。離れていても、脳内で共有できる。そして語弊の生まれやすい言葉ではなくて、思い浮かべる『図や絵――ビジョン』で共有する。無駄のない連携と、僕の戦略眼。ヴァリアントギルドの一流パーティーなら知らないと駄目だよねっ!」



 私達は四人に挟まれた形となった。


「さっきの大技は簡単には使えないよね? 発動は遅め、前方のみ、下手な位置で撃てば拠点を巻き込む。さぁ、ここからどうするのか。」



 椅子は空高くへと飛んでいった。



 圧倒的な不利。


 やばい……対処方が思いつかない。



「ねぇ、僕に一つ提案があるんだけどっ!」



 マユダは楽しそうにそう言った。

 提案……とはなんだろうか。

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