57.三つの系統
相手は"オーーーン三きょうだい"、全員『お』の文字を使ってくる。だけど、全員、系統が違う。
「ここ見晴らしもいいし、待ち伏せとか回り込みとか通用しないから突撃するよ!」
私達は真っ直ぐ固まって進む。敵もまた三人固まって進む。
それなりに近づいた。
そこそこ離れた位置でお互い止まる。
「どう動くか様子見しよう。」
敵もまた様子見。
と思いきや一人が飛び込んできた。
「てめぇらは俺一人で十分だぜぃ。」
【大鎌――】
大きな鎌が現れた。
「じゃあ、ここは僕が行くねっ!」
【鉞――!】
斧が現れた。
鎌と斧がぶつかりあった。
彼は確か――オーーーン三きょうだいの兄、オゲン。三つある系統のうち、彼は《具現化系》。何も無いところから物や技を召喚する能力を得意とする。
マユダもまた同じ系統。つまり、《具現化系》対決。
鎌と斧のぶつかる音が広がる。
【大風!】
「【魔法】ブリザード!」
オゲンは強風を、マユダは凍てつく風を召喚した。あまりの突風に私達までも吹き飛ばされそう。
「ふーん。なかなかやるんじゃない?」
お互いが、それぞれ仲間のいる場所に風によって戻される。
「これで同等の強さなら、これであたしらの方が強くなるねぇ。」
大鎌に触れる女。
【大きくなれ!】
大鎌はさらに巨大化して、まるで建物ぐらいの大きさまででかくなった。以前、魔族のオークが使ってきた技だ。
彼女は確か――オーーーン三きょうだいの妹、オコト。彼女の系統は《言霊系》。言葉が状況や行動に直接働く能力を得意とする。他と比べて制約が厳しい能力。
「俺の得意分野っすね!」
巨大な鎌が振られる。
その鎌にハロミトが剣を当てる。
「そんなちっぽけな武器で勝てるとでもぉ?」
【破壊!】
鎌が粉々に砕けた。オコトとハロミトの《言霊系》対決はハロミトに軍杯が上がったってことでよさそうかな。
残る一人が前に出た。
【鬼!】
その男が変身して鬼に変わった。
「ここは私が行くね。」
【自分自身――!】
私は自分自身に変身した。まぁ、何一つ見た目は変わらないけど……。
彼は確か――オーーーン三きょうだいの末っ子、オヘンシン。生物に変身する《変身系》。その生物が使えそうな技なら、他の系統の技も使えちゃう当たり外れの大きい系統。
【重火器】《具現化系》の召喚。
【重力】《言霊系》のかかる重力をゼロに近くする。
鬼の殴る攻撃と重火器がぶつかり合う。
やっぱり鬼の攻撃は威力高い。
負けてられないな。
「こっちには放つことができる、のよ!」
ドォォン!
引き金を引いて砲弾を放ったけど、全くダメージは与えられていなさそうだった。
再び重火器と強い殴りがぶつかりあった。
重い衝撃――。
重火器は凹んでしまった。
敵を見ながら、後退して距離を置く。
「ねぇ、マユダ。あの鬼、お願いしていい?」
「もっちろん!」
鬼に向かって進むマユダ。それを返り討ちにしようと殴る鬼。
【まさかり――】
鬼の右腕が切り落とされる。鬼が人間の姿に戻った。焦った表情を浮かべている。
そのまま体に向けて斧が振られた。
【大鷲――!】
今度は鳥に変身した。斧がスカッと空振り、鳥はそのまま上空へと逃げていく。
その間に、私達は二人の敵の元へと進む。
「行かせねぇよ!」
【檻――!】
私達の目の前に現れる鉄格子が行く手を阻む。
私はハロミトの後ろに立った。
【銃――!】
ハロミトの頭に標準を合わせて……。
真っ直ぐ両手で構え――
「いいよっ!」の合図でハロミトが左右に避ける。銃の先がオゲンの頭を狙っている。
バァン!
反動が重い!
やっぱり私の腕前じゃ一発で倒しきれないか。
もう一度、銃を出して構えるには時間がかかりすぎるし、同じようにハロミトが相手の視線を遮ってその間に攻撃準備する方法は使えない。
なら、残り残弾五つにかけるしかない。
ダン! ダン! ダン!
敵も動くから急所に当てられない。
オコトが檻に触った。
「兄ぃ、今のうちに逃げてっ!」
【自動】
鉄格子の鉄一本一本が浮き出して、そして私達を狙ってきた。殺傷力はないけど、攻撃を邪魔してくる。相当厄介だ。
ダンッ!
攻撃が来る前に放つ一撃は外した。
鉄が私だけを狙ってくる!
それをハロミトが全身で盾になって防いでくれた。
苦し紛れの最後の一発――。
ダンっ!
「くそっ!」
急所を貫いた。オゲンがその場から消えた。
鉄格子もその場から消えた。
【銃――!】
銃をパッと消して、再び銃弾の入った銃を召喚した。
「種が分かればこっちのもんよ。そこの金髪君はさっきの攻撃でまともに動けない。そして、あんたは銃をちゃんと構えないと撃てない。」
彼女はゆっくりと動き出した。
ハロミトの後頭部に向かって銃口を向ける。
「無駄よ。そうやって人の陰に隠れて銃を撃つ準備をしてるんじゃなぁい?」
図星だ。
なら……
私は銃で軽くハロミトの背中を叩いた。
よしっ!
私はそのまま、敵に向かって走り出す。
「これなら、どう?」
敵に向かっての体当たり。普通に横に避けられる。そこに向かって手を掲げた。
「パァン。」
何も持ってない手のひらを見せたところで何も起きない。
「何のつもり?」
【磁力!】
しかし、何も起こらない。
「何にも通用しないからって自棄糞にでもなったの? それとも能力切れ? どちらにしろ、終わりねぇ。」
「そう?」
カチッ。パァン!
銃はハロミトが持っている。というのも、私が背中をついた時に彼が銃を手に取っていたからだ。
放たれた銃弾。
【遅くなれ!】
銃弾の進むスピードがゆっくりとなった。私でも見えるぐらいの遅さだ。
サッ、と銃弾は避けられた。
「残念だったねぇ。」
「油断大敵――。それが敗因じゃない?」
「何その強がり。」
放たれた銃弾は、軌道を九十度変えて彼女の頭を貫いた。
「どういうこと?」
「そういうこと。」
彼女は転送されて消えた。そのまま銃弾は私の手のひらへと向かっていき、手のひらを貫いた。「痛っ!」
磁力で軌道を変えたんだ。そのためにハロミトは少し外側に向けてこっち側に避けやすい所に撃ってくれた。実際にこっち側に避けてくれて助かった。
残るは一人。大鷲になって空を駆け巡っている。
「お母さんっ。お兄ちゃんっ。大技放つから巻き込まれないように逃げてねっ!」
そんな言葉が響いた。
嫌な予感がする。
【マグマ――!】
マグマが現れた。それらが私達側の方へとゆっくりと進んでいく。
「【魔法】フレイム!」
斧に付与される炎とマグマが合わさる。
"マグマ"×"魔法"(フレイム)――。
「太陽支配・流炎柱!」
炎の柱が現れ、大鷲を巻き込んで勢いよく進む。まるで太陽のプロミネンスみたいに。
そのまま弧を描くように落ちていく。
それが私達の元へとやってきた。
「やばいやばいやばいって!」
何とか炎の柱から逃げきれた。
これで私達の勝利となった。
ギルド内バトル――初勝利だ。
爽やかな汗が流れた気になった。
だけど、スタートラインに立ったばかりだ。これは初陣に過ぎない。




