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『詩忍にくちなし』~文字で戦う世界のお嬢様と勇者執事~  作者: ふるなゆ☆


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56.夜鶯鳥《ナイチンゲール》の奇跡

 焼け野原となる丸みを帯びたエリア。周りにいた骸骨騎士が消えていく。


 一難去った――。だけど……


「早く回復させないと、命がヤバイっ。早くギルドに戻らないとっ!」


 ダイセナの様態が急変し、荒い息遣いで倒れている。


「俺は走れねぇ。アナココ、運んでくれないか?」

 しかし、「俺ももう体力が……」と答える。


 だったら――「私がいく。私なら、早く行ける自信がある!」


「頼める……のか?」


「うん。任せて!」


「分かった。リーダーを頼むっ!」


 頼まれた。ここからはしっかりと約束を果たすしかない。


【重力――!】


 ダイセナを背負い、その重さを限りなくゼロにした。これで普通に走れる状態になる。


「大丈夫。すぐに着くからね。」


 正直に言うと、この女のことは好きじゃない。だけど、見捨てるなんてできる訳ない。私は私ができることを全うする。


 ひたすら走った。


 砦の近くの村落に辿り着いた。そこにいるギルドの人。



「一刻を争う状態だ。急いでギルドに戻ろう。ダイセナさんを床に置いて!」


 指示通りに床に寝転がらせた。


【プテラノドン】


 彼はプテラノドンに変わった。そして、足で私の体をぎゅっと(つか)む。そして、ダイセナももう片方の足で掴む。


 へ……?


「全速力で行くよ!」


 パサパサッ。

 ピュンッ!


 勢いよく速く空を進んで行く。凄く酔いそう。到着したら吐く自身がある。


 ああああああ――。



 ――――――



 たどり着いた。ギルドの外の地面に彼女は置かれた。プテラノドンは人へと変わり、すぐにギルドに入り、受付を担当したギルド嬢を連れてきた。


「ナギサさん。こんな状況です。危険な状態です!」


「見れば分かります。すぐに始めます。」


 何をするのだろうか……。とりあえず無事を祈ろう。



夜鶯鳥(ナイチンゲール)



 青っぽいような色の鳥となった。

 鳥の(さえず)り。

 心が安らぐ一時(ひととき)。なぜかさっきまでの焦燥(しょうそう)が消えていく感覚がある。


「夜鶯鳥の鳴き声には死神を消し去る力があるといいます。僕達はそれを夜鶯鳥の奇跡と呼んでいるんです。」


 ギルド嬢のナギサが人の姿へと戻った。


「私にやれることのことはやりました……。一命は取り留めましたが……。」


「……が?」


「後遺症が残るかもしれません。すみません。」


「謝らないでください。助かっただけでも、ありがたいことなんですから。」



 彼女は雲が少しかかる青い空を見上げていた。


「もし私にカナリンさんのような"回復"の力があれば……。後遺症もなかったでしょうに」という独り言を空に向かって呟いていた。


 その言葉を聴き逃しはしなかった。


「カナリンさんを知っているんですか?」


 私がその名前について(たず)ねると、彼女はとても驚いていた。


「えっ。ジュリネさんも知っているのですか?」


「うん。最近まで一緒に暮らしてたから……。」


 

「そうですか。良かった。生き延びていたのですね。ある日まで二人で旅をしていたんです。けど、石像が突如動き出し、私達は襲われ、離れ離れになってしまいました。亡くなってしまったのだと思い込んでいたので、無事が聞けてとても嬉しいです。」


「ごめん。無事かどうか分からないの。アンチギルドに(さら)われちゃってさ。取り戻すには三大ギルド対抗覇戦で優勝しなきゃいけないみたいで……。」


「覇戦ですか。そのためにギルドに入られたのですね。なら、いずれ私とも戦うことになりますね。楽しみに待ってます。」



 ナギサは眠っているダイセナを連れてギルドの中へと入っていった。


 空を見上げると青空に大きな雲がかかっていた。





 ダイセナは夢の中にいるらしい。

 私達はギルドの中にいた。小さな木の机と椅子に座ってジュースを飲んでいた。


「お前ら、ダイセナの事はあんま気にすんな。これはうちらの問題で、見習いのお前らに非は無いんだからな。それに、あいつだって、気にされる方が(しゃく)(さわ)るだろうからな。」


 ピューリがアルミのグラスを片手に近くへと座った。中に入った飲み物を飲んでいく。


「それと、お前らは今日から"Dランク"――半人前に昇格だ。精々(せいぜい)頑張れよ。」


 彼の向ける眼差しはどこか優しい感じがした。



 何やら少し騒がしい。少し近づいて見てみると、三人の男女が一人の倒れた男の子を嘲笑うように見ていた。


「お前はもうパーティーにはいらねぇ。」

「ここにいても何にも役に立たないんだから、追放されて当然よねぇ。」

「そうだそうだー。」


 周りにいる人は「追放だっ。追放」と楽しそうに騒いでいる。


「ほら、どっか行けよ。」


 まるでイジメにも見える光景。胸糞悪い。


「やめるっす!」


 ハロミトが割り込む。私もそれに(ともな)って割り込んだ。


「なんだ、てめぇら。」


「勝手に追放するなんて、この子が可哀想じゃないっすか!」


「勝手に顔を突っ込んでくるなよ! これはなぁ、俺らのことで、てめぇらには関係ないだろ!」「せっかくのムードが台無しじゃなぁい。」「そーだそーだー。」


 ムカつく三人衆だ。よく見ると、三人とも同じような顔をしている。家族か何かか?


「ムカつくなー。本当ならギルド内バトルでボコボコにしてやるが、てめぇらどうせ"Fラン"か"Eラン"だろ? 良かったなぁ、バトル制度があって。」


「バトル制度……?」


「知らないのぉ? ギルド内バトルはねぇ、ランク差が二つ以上違うパーティーとは戦ってはいけないって決まりなのぉ。」

「良かったなぁ。俺らは"Cラン"。俺らとは差がありすぎて戦っちゃいけないんだ。だって、てめぇらがボコボコにやられて可哀想だからぁ。」


 そこにピューリがやって来た。


「出来るぜ。ギルド内バトル。」


 その言葉に周りが静まり返った。


「今朝、こいつらは"Dランク"に昇格したんだ。飛び級制度を利用してな――。」


「ということは、駆け出しじゃなく見習いだったってことか。ちょうどいい。俺らとの格の差を見せてやるぜぃ。やるよな? バトル!」


「分かったわ。受けて立つ!」


「じゃあ、手続きするから、日程は受付で聞いとけ。そうだ。特別にハンデやるよ! 何が欲しい?」


「ハンデなんていらな――」


 そこでピューリが割り込む。「せっかくくれる言うてるんだ。貰っとけ。」


「じゃあ、貰うわ……。」


「それでどんなハンデが欲しい?」



 正直、ハンデ欲しいと思ってもないから聞かれても困る。そんな私達に助け舟が出される。


「お前らの情報でいいか? 俺がこいつらにお前らについて知ってることを伝える。それでいいか?」


「いいハンデじゃないか。じゃあ、バトル楽しみにしてるぜっ!」



 私達はこの胸糞悪い三人と戦うことになった。


「ねぇ、大丈夫?」


「大丈夫です。なんか僕のことを思って……。なんかすみません。」


 もう立ち直っている少年。その姿を見て、ちょっと胸を()で下ろす。





 ギルド内バトル――。

 勝てばランクアップの可能性があり、負ければランクダウンの可能性がある。もし三大ギルド対抗覇戦に出たければ絶対に負けられないバトルだ。


 場所はバトルコロッセオ!

 死んでもリスポーンの力により生き返る安心安全のバトル施設。


 

 敵チームの拠点を破壊するか、敵を全滅させることが勝利条件。



 このバトルのフィールドは――広めの砂漠。真っ平らの地形。テント型の塊が私達の近くと、遠くにある彼らの拠点にそれぞれ一つずつ。それを破壊すればいいみたい。



「最初のギルドのバトルだね。気を引き()めて行こっか。」


「頑張るっす!」「えいえいおー!」


 絶対に負けられない。こんな所で止まっていられないから。


 

 さぁ、バトル開始――。

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