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『詩忍にくちなし』~文字で戦う世界のお嬢様と勇者執事~  作者: ふるなゆ☆


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97.カゲトの復活

「見つけたっ!」


【不死鳥!】


 フェルナがどこからともなくやってきて、私を掴んで城を飛んでいく。近くにはルイレンとボーニー、そしてカナリンがいた。



 洞窟へと戻り、川の中に投げ込まれる。

 逆らえない川と風の勢いに流されて、一瞬にして遠い遠い場所にある無限回廊の出入口へとたどり着いた。



 そこにはハロミトとパルパルが待っていた。



 全員にさっき起きたことを全て伝えた。


 疲れがどっときて、もう涙が出るのか怒りが込み上げるのか自分でも分からなくなってしまった。



 無限回廊を出る。そこには町の住人が(たか)っていて、何やら祝うムードを醸し出している。


「無限回廊を五日でクリアするなんて前人未到だ。凄すぎる。」「それも三人だけですって。まぁ、一人だけの踏破があるから凄くなく思えるけど、三人だけでもすっごいことよ。」


 人々の噂話が聞こえ始める。


「それで誰がクリアしたんだい?」「主忍のルイレンさんと元主忍のフェルナさん、後、忍刀(しのびがたな)のボーニーさんらしいわよ。」「おいおい。無限回廊唯一の突破者と、同等の強さを持ってる元主忍に、今や最強の筆頭のボーニーさんだろ。そりゃやべぇなぁ。」「フェルナ様もルイレン様も永久の町の希望だ。ボーニー様も最近はこの町に住まれていらっしゃった。これは永久の町の凄さを知らしめるためのルイレン様の策略なんだ。きっと!」


 あまりのお祭りムードに体がついていかない。

 その場にルイレン、フェルナ、ボーニーの三人が残って、私達は一足先にカナリンの隠れ家へと向かった。



「俺はほんとまだまだっす。テレポートしたお嬢様を追うことになったっすけど、足手まといだからパルパルと一緒に戦線離脱する羽目になったんす。」



 ハロミトはハロミトで悔し涙を浮かべていた。


 私はベッドの上に寝転び、右手で目元を隠した。


 目の前を真っ暗闇にして、今日のことを振り返っていく。立ち直れそうで立ち直れない。あと一歩で立ち直れるのにな……。


 脳裏に浮かぶマユダの姿。掴もうとしても雲散霧消する。


 そうこうしているうちに、時間は勝手に過ぎていった。





 数日経った。

 失った喪失感は大きいものがあるけれども、いつまでも後ろを向いてちゃいけない。そう思うと何とか前を向けた。


 ルイレンがベンチでボーっと座っていた。


 ハッと我に返ると、表情一つ変えずに私達の持っているスタンプラリーカードの最後の一つを埋めた。



◆◆


〇主忍修行⑤――ルイレン

 ……実践形式修行。

 注、マユダの裏切りと離脱。


◆◆



 主忍との修行スタンプラリーが終わりを告げた。


 何れ魔王討伐の旅にでなければいけない。しかし、今はそんな気分ではなかった。



 私はベンチの椅子に腰掛けた。


 珈琲(こーひー)でも飲もう。

 私は苦い味で体を覆っていった。



「話は聞きましたよ。お嬢様は、確かに戦いの実力面にて強くなられた……と。しかし、本当の強さは心・技・体。一つも欠けてはなりません。お嬢様は心を強く持たねばなりません。」


 私の背後から聞こえる男の人の声。

 とても懐かしい声がした。


 振り向くと、そこにはカゲトがいた。


「お久しぶりでございます。お嬢様のお陰で永らえることができました。これにて完全復活でございます。」


 出鱈目(でたらめ)な強さを誇る石像との戦いで、弱い私を(かば)って封印されたカゲト。そのカゲトが今目の前にいる。


 涙が溢れてくる。――止まらない。


「最初の言葉じゃないでしょ。それ……。」


 珈琲なんてものは置いて、本能のままに彼へと近づいて頭を彼の胸へと近づかせる。彼は私を優しく対応してくれた。


「まったく……。お嬢様としてみっともないですよ。……今日だけですからね。」



 少し時間が経つ。

「もっと早くに来れていれば。お守りできず申し訳ない」そんなことを伝えてきた。

「カゲトは気にしないで」と返した。


 そこに慌ただしくやってくるルイラン。


「おい。大変だ! カゲトが封印から解かれた……ぞ、って、なんでここにいるの!?」


 ひとまずその場を離れて深呼吸。普段の様相を見せる。

 

 ルイランがとても驚いている。


「あちらにいるのは私めの影分身でおられます。私めが本物のカゲトでございます。」


 喪失したピースが、埋まっていった。



 カゲトの周りに集まり出す仲間たち。



 懐かしい記憶を共有していく――。



 ――――――。


 そういえば、カゲトがいなくなってから色んなことがあったな……。


 ハロミトがカゲトの代わりに執事をやり出すと言い出した。


 アンチギルドが私達を襲って、パルパルとカナリンを奪っていった。返して欲しければ三大ギルド対抗覇戦に出ろと伝えてきた。


 マユダが仲間になった。私とハロミトとマユダの三人でヴァリアントギルドに入って、それなりに奮闘した。

 途中でフェルナが仲間入りしたけど、ギルマスパーティーには負けてしまった。

 それでも私だけはナギサの代わりとして覇戦に出られることになった。



 覇戦で優勝してパルパルを取り戻し、すぐさま開かれた最強秘宝決定戦で優勝してカナリンを取り戻した。そして、アンチギルドの陰謀で『雷忍』の石像が強襲。その場に居合わせた先鋭戦力で力を合わせて倒すことに成功した。



 最強秘宝決定戦の賞品として神の矢を手に入れた私は五人の主忍の元で修行することになった。最後の修行は無限回廊で行われて手違いで魔王城へと飛ばされた私とカナリンとマユダ。


 マユダが正体を明かして、戦う羽目になった。最後は私を庇って落石の餌食となってしまった。



 ――――――。



 もし私が強ければマユダも助けられたのかな……。いや、結果がどうであれ、『あの時こーしてれば』なんて言ったところで無駄だ。


 もう過ぎ去った時間は戻らない。


 別れは悲しい。けど、立ち止まってしまうのはよくない。私は以前、カゲトとの別れを経験して前へ歩くことを胸に誓った。


 

 出会いと別れ――。



 マユダとの別れと共にカゲトとの再開があった。


 どれだけ悲しくても私は――前に進む。


 そう私の中で約束しているから。





 私達は屋敷のある春町へと向かって永久の町を南下することにした。


 迷いの森――。


 看板通りに進まないと迷ってしまう広大な森。


 

 そこに、魔族が襲いかかる。



 バジリスクの魔族だった。ヘビと鳥とトカゲがごっちゃ混ぜになった魔族だ。

 そして、それは四頭もいる。


「そこそこ強い魔族ですね。ここは私が。」


 そう言って前に出ようとするカゲト。


 そんなカゲトよりも前に出る。


「ここは私が!」「いや、俺がやるっす。」


 私だけじゃなくてハロミトも前に出ていた。ハロミトが剣を引き抜く。


 カゲトには強くなったことを伝えなきゃ。

 

 だから――

「ここは私達がやる。」「俺らがやるっすよ。」

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