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『詩忍にくちなし』~文字で戦う世界のお嬢様と勇者執事~  作者: ふるなゆ☆


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98.上級地域の地図

 敵はバジリスク四体――。

 

 バジリスクは私達に向かって炎の玉を繰り出した。それをハロミトが剣を引き抜き切り裂く。そして、走り出す。


【発火!】


 剣が燃え始める。


【発射!】


 素早い強襲で一体を一刀両断。一瞬にして倒すことに成功した。



 集中――。


 悪魔化(ジキル)――!



 悪魔の力を(まと)う。そして、


 瞬間移動――!


 敵の背後へと瞬間移動して、左手に力を集める。


 悪魔の腕!


 少しだけ跳んで上から思いっきり大きくなった腕で叩き潰す。二体目も倒した。


 バジリスクは空を飛び出した。

 空中から炎を放ってくる。



【搬送!】



 カナリンの隠れ家から能力によって背中につける用の白い翼が搬送――瞬間移動してきた。それをハロミトは着用した。


 空を飛びながら炎の玉を器用に避けていく。


「トドメっすよ。ハイドレンジア斬りっす。」


 三体目のバジリスクを切り裂き倒した。



 私は右腕に悪魔の力を溜めていく。

 溜まった。回転を意識して放つ。


 斬撃――!


 放たれた斬撃が空中を飛んでいきバジリスクを斬り裂いた。



 四体の魔族を倒しきった。



「お二人のとも私が不在の間に……相当お強くなられましたね。感服でございます。」



 優しく微笑みかけられた。



「以前のお二人ならば、あの魔族は仕留められなかったことでしょう。」


「いやいや、流石にギリギリかも知れないけど倒せてたでしょ」と否定した。


 しかし、カゲトはその否定を覆した。


「まずお嬢様は重火器で防御と中距離攻撃を行いますが倒しきれないでしょう。勇者様は攻撃を仕掛けに行くも空に逃げられてしまい。空中からの攻撃に手を焼いたことでしょう。機転を効かせてお嬢様の磁力で勇者様を飛ばして攻撃し、一体は倒すことができたと思われますが、残り三体は倒しきれず困り果てた……と思います。」


 ずっと封印されてたから、以前の私達が昨日のことのように鮮明。だからこそ、きっとカゲトの言う結果は正しい気がした。


 ポジティブに捉えよう――。


 以前までは倒しきれなかった魔族を、私達は今や軽々と倒し切れるようになったのだ。



「修行の成果っすね。」



 ハロミトはそう言うけど、それだけじゃないと思う。カゲトが封印されてから色々なことがあったから、私達は強くなれた。私はそう思う。



「これなら上級地域に進んでも問題なさそうですね。」



 彼の口から出たその言葉は、私達を実力者と認めた証だ。素直にありがたく受け止めた。



 ――――――。



 春町。桜が吹雪く常春の町。

 その外れに屋敷がある。しかし、半焼していて住むに耐えない場所とかしていた。



「まずは家を建て直すところから始めないといけませんね。」


 大工が力を合わせて家の柱や外組を作っていく。僅か三日で家は完成……した?


 中に入ると最低限の柱や床、壁などしかない。二階はあるのに階段は存在しないし、部屋のスペースは確保されてるのに部屋は存在しない。正直、こんなものでは暮らしていけない。



「絶対、これ不良でしょ!」


「安心してください。問題ありません。」


「いやいや、問題しかないから!」



 カナリンが自慢げな顔を浮かべる。


「普通は問題しかないけど、カナリンにかかれば余裕なのよ!」



【改装!】【絡繰!】



 あっという間に家の内装が出来上がった。


 今度はカゲトが前へと出ていく。



【家具!】



 カーペット、テーブル、タンス、他家具は全部カゲトにより召喚された。



「足りないものは購入致しましょう。カナリンさん、お願いします。」


「もちろん!」【買い物!】


 カナリンの力で足りないアイテムや内装が出来上がった。


 たった二人の力で屋敷は元へと戻ってしまった。……すごい。



 久しぶりのこの世界における私の部屋。懐かしい記憶が蘇っていく。


 私には帰るべき場所がある。


 今はまだこの世界にいます――。


 私はゆっくりとふかふかのベッドに横になった。





「これから本格的に魔王討伐の旅が始まります。一番の難関はこれから進むことになる"上級地域"となります。」



 地図が広げられた。

 そこには広大な自然が広がっている。



「上級地域は言わば、人にとっての危険地帯。踏み入れれば自殺と見()され、国の救援や救助は一切貰えません。」


「そんなに恐ろしい場所なんだ……。」


「都市の周りの下級地域、主忍が滞在する中級地域、その二つを合併しても引けを取らない程の大きさを誇ります。」


 都市とその周辺、修行で私達が巡った地域。それを合わせたのと同じ広さとは、どれだけ広大なのだろうか。想像できない。


「一方で、町及び村は三つしかございません。」


「嘘でしょ。少なくない?」


 下級地域には五つ、中級地域にも五つの町か村がある。それと同等の広さがあるなら計十個の町及び村があってもおかしくないのに、たったの三つ!?


「町村の人達は基本、外にはでません。また、上級地域への冒険者は必ず町村を拠点として日帰りで行動します。」


「どうして?」


「町村は魔族に対する対策が講じられておりますが、それ以外の地域は野晒しとなっております。そこで野宿でもすればそれなりに強力な魔族に襲われるでしょう。非常に痛手でございますし、おちおちと睡眠もできないことでしょう。」


「寝れないんすか? 最悪じゃないっすか。」


「ええ。ですから、普通は町村を拠点に日帰りで行動できる場所にしかいけないのです。故に、魔王城へ到達することすら難しいのですが……我々は問題ございません。」


「えっ? どうして?」


「私達にはカナリンさんが同席していますから。」



 それを聞いて、なるほど、と頷いた。


「"隠れ家"を利用するのね。」


「はい。隠れ家なら町村でなくても寝泊まり可能ですから。例え昼間でも回復に当てたい日があれば、その場に滞在することも可能。魔王討伐の旅はカナリンさんの存在が必須とも言えますね。」


 カナリンの存在が神々しく見えてきた。



「魔王討伐には残り二つの石像を破壊しなければ、魔王は倒せないと言われていますが、その石像の一つ『風忍』につきましては、秘境及び魔境のどこかにいると思われます。」


「秘境――?」


「えぇ。上級地域は人が出歩かない土地故に、秘境とされる神秘的な場所が幾つかございます。ちなみに、パルパルの住処もそのうちの一つでございます。」


「パルぅ!」



 カゲトは「さて――」と地図に指を指した。



「ここから町村について説明致します。まずは中級地域の岡山大河町から、『幸せの道』と呼ばれる山道を超えると上級地域となります。」


「幸せの道!? めっちゃ最高な場所っすね。」


「幸運なのは、上級地域から中級地域に進む人でございます。死と隣り合わせの地域から、安全な楽園地域へと行ける道――つまり、最高の幸せへの片道、ということでございます。私達はその逆でございますから、言うなれば不幸せの道という方があっているでしょう。」


「マジっすか……。」



「この道を超えると《ラグン》という海の村があります。月に数回、満潮になると村に海ゾンビの大群が襲ってきます。また、海に入ると海ゾンビに襲われます。海ゾンビに殺されると、海ゾンビにされてしまいますので気をつけていきましょう。」


「何それ、怖っ!」


「北に進むと広大な土地が広がっております。途中で東へと曲がると《ハイヒロ》という町があります。上級地域で一番大きい町でございます。上級地域冒険者は基本的にこの町を拠点にすることが多いです。」


 言葉では行くのが簡単そうに見えるけど、地図を見ると、ラグンから相当離れている。行くのは相当時間がかかりそうだ。

 カゲトの話からして冒険者はきっとラグンから一日かけて、二日もかけずにハイヒロに到着するのだろう。相当な実力者しかそんな芸当はできないと思う。


「そこから北西方向にずっと進むと魔王城があります。」


 実は無限回廊と繋がっていて、マユダとカナリンと共に一度来た場所だ。


「一方で、そこから東へと進み、突き当たりを南に下ると《最果ての村》がございます。」



 上級地域の形としては、"ラグン"、海を挟んで"最果ての村"がある。北に行くと海に終わりがあり、巨大な森が広がっていく。その中央に"ハイヒロ"があった。

 つまり、町村としては南にラグン、中央にハイヒロ、東の果てに最果ての村――三点を結ぶような形。


 まとめると――



《上級地域》


〇ラグン――海ゾンビが出る村

〇ハイヒロ――上級地域一の町

〇最果ての村――最後の村


〇魔王城――最終目的地



 

「なかなか、ハードな旅になりそうね。」


「お嬢様。ハードでは言い足りませんよ。ベリーストロングハードでございます。つまり、冗談では済まされない危険度を誇ります。」



 そんな危険な旅か。

 けど、行くしかない。今の私達ならきっと――。



 私は握り拳をぎゅっと握った。

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