95.黒天喜面、壱
「あははっ。楽しいねっ!」
斧と重火器がぶつかり合う。重火器が少しずつ凹んでいく。
「ちっとも楽しくなんかないわよ!」
大振り。それで大きく後ろに避けた所を狙って……
【磁力!】
重火器を放つ。
「【魔法】フレイム!」
炎を纏った斧が重火器を一刀両断した。
【重火器!】
近寄る攻撃を再び重火器で防ぐ。
「じゃあ、これはどうかな!」
【マリオネット!】
大量の人形が部屋に現れていく。
その不気味な人形が私へとのそのそと襲ってくる。
「《操人形喜劇場"――!》」
近くの敵を薙ぎ払う!
吹き飛ばされた人形がまるで糸に引っ張られるように立ち上がる。
数が多いし、打撃じゃ倒しきれない。
体を掴まれる。何とか切り抜けた。
――そこに斧での攻撃。重火器で何とか防げた。
重火器じゃ人形を捌けない。銃や十手も捌けないし、マユダ相手に防御不可だったり火力不足だったりする。
仕方ない――。タイムリミットのある変身しかない。
集中――。
悪魔化!
「来たね。悪魔化っ! そうこなくっちゃ!」
瞬間移動――!
部屋の片隅に移動。
そして、右腕に力を溜めて――
斬撃――!
人形達を縦半分に一刀両断。マユダにはジャンプで躱された。
「【魔法】サンダー!」
斧から電撃が飛ぶ。
左腕の悪魔化した腕でガードしたけど、体全身に麻痺が襲う。
そこに向かって飛びかかってくるマユダ。
瞬間移動――。
何とか攻撃を先回りして回避。
【魔法陣!】
足元に現れる魔法陣。私はその上に立っている。
【マグネット!】
「全てを引き込む陽の磁力――。」
体がマユダの方へと引き寄せられる。引き寄せられる私に向けて斧を振りかぶりかけている。
地面から離れて動いているから瞬間移動も斬撃も使えない。腕は痺れている。なら――
飛行――!
引き寄せられる勢いに抗って飛んでいく。
「へぇ。魔法陣の効果範囲から抜け出すなんてやるじゃん。」
必死な私とは真逆の余裕さを見せてきた。
けど、それも今のうち。ようやく麻痺が治った。
壁を蹴り飛ばして突撃しに行く。
悪魔の腕――!
「【魔法】フレイム!」
炎の斧と悪魔の腕が衝突した。お互いに大きく吹き飛ばされる。
私は石像のある部屋へと飛ばされてしまった。
【マグマ!】【まとまれ!】【丸くなれ!】
崩れ出す天井。マユダの頭上に現れる巨大な太陽のような存在。空高くそびえるそれが魔王城を忌々しく照らす。
ゆっくりと力を溜めているのが見える。
斬撃――!
しかし、最低限の動きで避けられた。
「僕も全ての力を出し切って、限界を超える。これが限界を超えることで長い発動時間を短縮した必殺技だよ。」
太陽のようなものが私達の方向へとゆっくりと向かってきた。
「このまま魔王の石像と一緒に燃やしてあげるね!」
とてもゆっくりとした攻撃なので、避けることは可能。けど、そうしたら魔王の石像に衝突して、魔王が復活する。
つまり、この太陽を何とかするしかない。
「太陽支配・黒点衝撃!」
斬撃――!
やはり、切り裂けない。
なら、悪魔の腕で……。いや、これの威力相手じゃ何ともならない。
どうすれば……。
「回転の力を使えば。行けるかも。」
集中。
精神を研ぎ澄まして回転のエネルギーを把握する。そこに攻撃を重ねる。
《攻撃的超常》――悪魔の腕。
「"ジキル・インパクト――!"」
悪魔の黒い力で太陽を何とか受け止めきれることができている。けど、若干押し込まれている。
重い――。
このままじゃ押し込まれるどころか、力負けして巻き込まれる……。
マユダが限界を超えるんなら……
「私だって限界を超えてみせる!」
右腕にも力が混じっていく。
《攻撃的超常》――斬撃!
小さな太陽を真っ二つに斬り裂いた。
左右の半球が魔王城を破壊しながら進んでいった。
ひとまず魔王復活だけは一時的に阻止できた。
疲労感とダメージが半端ない。
斧が回転しながら飛んできた。
【マグネット】
その斧に向かってマユダも追従して飛んできた。若干斧よりか速度がある。
私の頭上付近で斧を掴むマユダ。そのまま私に向かって斧を振り下ろす。
悪魔の腕でガード。斜めに向かって吹き飛ばされる。
このままマユダを自由にさせていたら先に魔王復活に動くかも知れない。ここで何とか私が引き止めなきゃ。
悪魔化解除――。
【自分自身】【磁力!】
マユダを引き寄せる。
引き寄せられたマユダと共に魔王城の端へと落下していく。
【重力】
何とか屋根へと無事に着地できた。
「【魔法】ブリザード!」
屋根への攻撃。屋根が粉砕した。
魔王城の内部に落下。自分自身への変身状態だったから何とか無事に済んだ。
けど――もうこの変身も解ける。
もう一つの変身、悪魔化にはクールタイムが必要。
つまり、生身でマユダとやり合わなきゃいけない。
無理だ――やり合う武器がない。
いや、弱音吐いてる場合じゃない。何とかするしかない。
そうだ。こういう時こそ、修行の効果を見せる時。
《回避的超常》
神経をゆっくりと研ぎ澄ます。
第六感を信じるしかない。そのために氣をしっかりと感じていくのみ。
振られる斧。それを気配の察知のみで何とか紙一重で躱していく。
上手く後ろに下がりながら、距離を置きながら避けられるための余裕の幅を作っておく。
すっ――。
空振りする攻撃。
「すっごいね。全部避けるじゃん! ほんと楽しいね。」
楽しくなんかない。
今はただ、心を無にして避けることだけに集中する。
避けて、後ろに下がって、避けて――。
このまま行けば……。
トンッ。むき出しの岩肌に当たった。行き止まりだ。やばい、既に息止まりかけた状態だ。
「あはははは。追い詰めちゃったよ。もう逃げれないんじゃないっ!」
斧が思いっきり振られた。
そう、逃げ場はもうない。
「終わりだねっ! さよなら!」
悪魔化――!
けど、終わりじゃない。クールダウンタイムは終了した。残り僅かの時間だけなら、悪魔化できる。
「そうこなくっちゃ!」マユダの笑みは止まらない。
悪魔の腕と斧が激しくぶつかり合った。
瞬間移動――!
そして、斬撃――!
マユダは斬撃を斧で霧散させた。
変身時間も残り僅か。そろそろ決めなきゃいけない。
「ようやく力が溜まったよ。この技、時間がかかるんだよねー。」
【魔改造!】
斧の形が変形する。おどろおどろしいような、どこか機械っぽさの残る黒と赤色で塗られた大きな斧となった。
この技は系統の違う《言霊系》だから発動が遅かったのだろう。だから、次は多分、使えない。ならば、ここで破壊するのみ。
「次で終わりにするよ。」
【マグマ】×「【魔法】フレイム!」
「太陽支配・流炎柱!」
まるでプロミネンスのような炎を纏う斧。
《攻撃的超常》×「"ジキル・インパクト――!"」
その炎が放たれる前に渾身の攻撃を斧へとぶつけた。
凄まじい破裂音と、時空を歪ませるぐらいの亀裂を引き起こしていく。
想像を絶する衝撃波がそこに現れた――。




