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『詩忍にくちなし』~文字で戦う世界のお嬢様と勇者執事~  作者: ふるなゆ☆


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93.ルイレンと無限回廊

 梯子を降りると、そこに広がる空間が一層となるみたいだ。


 進んで行くと、スライムが現れた。


「……無視する。」


 奥に行くと降りる梯子があり、そこから二層へど進む。


 今度はスライムの他に、ヒョッコという戦えないヒヨコみたいな魔族が現れた。


「……無視。」


 それらを通り過ぎていく。


 十層――。ゴブリン達が現れる。ゴブリンは一応戦える強さを持っている。


「……無視。」


 梯子を降りたり、登ったりしながら進んだ先には小さなスペース。端には勢いが凄まじい川がある。


 今のところ何もしていない。

 まぁ、敵も弱いし、修行にもならないのだろう。



 次へと進む。


 武器【ルーレット】


 一――双剣。



 あまりにも早い攻撃。二本の剣が一瞬にして魔族らを斬り裂いていく。――私達の番はない。


「……。こんな下層、戦うだけ無駄……。」


 途中で他の探検者達に遭遇したり、宝などを発見したりしたが無視して先へ先へすたすたと進む。



 弱い敵は無視され、まあまあ強い敵はルイレンの二刀流に瞬殺されていく。

 梯子を降りて登って繰り返しながら確実に奥へと進んでいる。



 何もしないで四十層まで来てしまった。

 相変わらず横を見ると一本の川がリタイアできるとひたすら待っている。



「……ここで今日は休み。」


「普通は何日もかけて来る階層なんだけど……でござる。」


 

 一日目は移動で終わった。

 十層超えることにある何も無いエリアにカナリンの隠れ家を作り、一夜を過ごした。


 

 ガーゴイルやハーピー、はたまたオーガ、トロールなど強力な魔族も現れるが、今日もまたルイレンの一人舞台。

 二日目も移動で終わった。現在、五十層後の何も無い一時休憩エリアにて一時、暖を取る。丁度半分の地点だからか、一番大きな休憩地点に思えた。


「明日から本番……。」ここまでは単なる移動だと言う。



 

 その日、リビングでみんなでゲームをすることになった。ゲームの内容は人狼だった。

 市民三人。騎士一人。占い師一人。人狼二人。パルパルは応援。



 私は占い師か……。


「俺は騎士っすよ!」ハロミト。

「……俺は村人だった。」ルイレン。

「カナリンも村人だったわよ。」カナリン。

 

「私は占い師だった。フェルナは?」

「ふふふ。うちは村人。」フェルナ。

「拙者は秘密でござる!」ボーニー。

「僕は騎士だったよ!」マユダ。


 誰かが嘘をついている。特に、ハロミトとマユダのどちらかは嘘つきだ。なぜなら騎士は一人のみ。


「どっちか私を守ってくれない?」


「もちろんっすよ。それが執事として、いや、騎士としての役目っすから!」



 夜――ハロミトが殺された。


 占いでマユダの正体を見透す。


「占いで見たんだけど、マユダは人狼だった。」 


「えー。僕は騎士だよー。せっかく守ってあげたのにー。」


 多分、守ったのはハロミトだ。だから、二キルじゃなくて一キルで済んだんだ。


「ねーねー。僕じゃなくて、(カナリン)が怪しくなーい?」


「えっ? なんでよ!」


「待って。その前にさ、気になったんだけど、まず、ボーニーの役職は何なの?」


「秘密でござる!」


「怪しすぎない!?」


 夕方――ボーニー追放。

 夜――私、ルイレン死亡。


  

 人狼チーム、勝利――!



 楽しい時間はあっという間に過ぎていった。





 三日目――。


 五十一層からの敵は一気に、相当強くなっていた。


 現れる敵の質が高い。



 ドラゴンとコウモリが融合した見た目のワイバーンが現れる。周りには骸骨――魔族スケルトンが湧いて出てきている。


「……今までの修行の成果、見せて。」


「拙者もパルパルと共に見せて貰うでござるよ!」


 私達パーティーのバトルだ。

 敵はなかなか強いけど、一気に崩せるはずだ。


「フェルナ。大砲役お願い!」


「了解!」



【フェニックス!】



 フェニックスに変身するフェルナ。


「エル【ファイア】!」


 遠くから炎を放っていく。


「ハロミトは横から遊撃。」


「活躍して見せるっすよ!」



 直接攻撃しに行くハロミトが敵に穴――隙を作っていく。


「私とマユダで中距離サポート。機会を見て直接殴るよ!」


「おっけー。」


 悪魔化! 斬撃!


(まさかり)】投げる!



 敵はみるみる減っていく。

 特に、フェルナの乱発する攻撃で大まかな数が減る。ハロミトが群れに穴を開け、私とマユダでハロミトをサポートしつつも、空いた敵を各個撃破していく。


 ワイバーンが凄まじい攻撃を放とうと口に力を溜めている。



「僕に任せて!」



【マグマ!】×「【魔法】ブリザード!」


 

「"太陽支配(プロミネンス)磁気壁(オーロラ)"」



 オーロラの壁が現れた。

 放たれる炎がオーロラによって消し去った。


 今度は体当たりしてくるワイバーン。しかし、オーロラに当たるとビリビリするダメージを受けていた。


「防御だけじゃないんだー。突撃すればダメージも受けるんだよー。」


 そこに向かって――悪魔の斬撃!


 ワイバーンは消滅した。



「……お見事。」



 敵が押し切れる相手なら、この手法が一番いい。


 前衛ハロミトが遊撃。

 そして、中間地点で私とマユダで削る。

 後方からフェルナが魔法砲台で乱れ打つ。


 それだけで一気に敵を殲滅(せんめつ)できる。



 とりあえず、ここから数層はこの戦法で行けそうだ。


 ――――――。


 六十層で一時的に一夜を過ごす。

 四日目へと突入。





 六十九層――。


 頭が二つある巨大な犬の魔族――オルトロス。周りには巨大な犬なのに人間の長い黒髪のキメラ。ヘビと鳥とトカゲがごっちゃ混ぜになったバジリスク。バジリスクよりも小さいコカトリス。それらが集団で襲ってきた。


 これは流石に今までのイケイケ戦法は使えない。



「フェルナは(タンク)役。マユダは前線を人形で止めつつ後衛へ! フィニッシュ頼むよ!」



【不死鳥!】



 不死鳥となるフェルナが前衛へ。敵の攻撃を自身へと集めていく。

 ダメージは不死鳥の力ですぐに回復していく。


【マリオネット!】


「《操人形(マリオネット)喜劇場(・サーカス)"――!》」


 大量の人形が敵の侵攻を止めていく。これで何とか時間を稼ぐ。



「ハロミトは遊撃!」


 ハロミトが横から攻撃していく。敵が強い程に強くなる剣のお陰で、敵に風穴を開けられる。


【自分自身】【重火器】


 私は重火器で敵の邪魔をして、ハロミトを援護。



【マグマ】【まとまれ】【丸くなれ!】



 後衛ではマユダが一撃必殺の必殺技を溜めている。


 やはり、敵は硬い。それでいて攻撃力もそこそこある。特に、オルトロスは何しても無傷。このままじゃ倒しきれない……けど、問題ない。



「みんな! 準備できたよ!」


「よしっ。フェルナ、ハロミト。撤退!」



 後は、フィニッシャーのマユダがトドメを刺す。


太陽支配(プロミネンス)黒点衝撃(ブラックネス)!」


 太陽のような攻撃が敵を粉砕した。


「ハロミト! 私達で残党狩り。」


 私とハロミトで倒しきれなかった敵に追い討ちをかけて倒した。



 敵が強い時はこの戦法だ。

 前衛にてフェルナが壁役、ハロミトが遊撃。

 私が中堅として場を上手くコントロールしながら、

 後衛にてマユダがトドメを刺す。


 けれども、流石に何回も使える戦法じゃない。

 限界との勝負だ……これ。

 


 ――――――。



 七十層後のスペース。


「キツイ……。」


 敵の質が高くなっていくのに、量も増えてきている。


「……。九十層で終わりにしよう。……それと俺もサポートする。」


 ルーレットの効果でパワーアップしてくれるそうだ。しかし、半分の確率でパワーダウンするらしい。……ギャンブルすぎるでしょ。


「カナリンはあたし自身にかかったマイナス効果を敵に"肩代(かたか)わり"させることができるわよ!」


 カナリンの能力でマイナス効果付与を無効化しつつ、敵一匹に効果を移せる。ルーレットは私達に対しては不安が残る能力でも、カナリンには最高の能力だ。


 そこで、ルーレットの対象は班に分けて発動することになった。



①班 ―― 私、マユダ、カナリン。

②班 ―― ハロミト、ボーニー、カナリン。

③班 ―― ルイレン、フェルナ、カナリン。



 とりあえず、このサポートを利用して目標の九十層を目指すのみだ。



「百層クリアは難しそうでござるな。」


「……そうだね。」


 ここに挑む猛者達はやっぱり相応な戦士だと思った。百層クリアできる人なんているのだろうか。


 そんなことをハロミトが「いるんすかね、百層クリアできる人」と代わりに呟いていた。



 それに、ボーニーが答える。



「昔は指で数える程は百層クリアしたらしく、その人たちによって百層クリアした人が誰かなのか、クリア時にデータを王宮へと送るシステムを作りあげたらしいでござる。まぁ、歴史の教科書の話でござるけどな。」


 なるほど。つまり、百層突破すると知らされるシステムがあるのか。嘘は通用しないという訳だ。


「現在においては、一人しか百層クリアしてないでござるな……。うむ。」


「えっ!? クリアしてる人がいるの? それもパーティーじゃなくて、一人で!?」


 私達四人パーティーでも七十層からギリギリの戦いを強いられていて、八十層なんて厳しい戦い。九十層なんて夢のまた夢にさえ思えてくる。


「そうでござるよ。それ故に一躍有名人なのでござる。有名人すぎて、主忍にまでなったでござるしな!」


 ん? 主忍――?

 今まで五人の主忍と全員と会ってきた。その中の一人が無限回廊唯一の突破者だってこと?


「な、ルイレン!」


 ……。


「……。あっ、ボーっとしてた。何か話してた……?」


「いや、ルイレンが無限回廊唯一の突破者という話をしてたでござるのだが……。」


「あー。……うん。そうだね……。」


 相変わらずの態度。苦笑いを浮かべるしかない。


「ちなみに、百層突破すると宝の部屋にたどり着くらしいでござる。一方通行で、正攻法で百層突破するしかないでいう噂だ。」


 無限回廊という長い長いクエストの果てには宝がある。どんなに大変でも挑みたい人も出てくるだろうなと思った。


 

 私達はここで休むことにした。





 五日目。

 八十層エリア。


 

 何とか八十四層まで来た。

 

 流石に同じ戦法で戦うのも厳しくなってきた。


 敵はマンティコア。周りにはキメラやバジリスクが沢山いる。



「……そろそろ使うよ。丸一番、いい?」



 私とハロミト、そしてカナリンは頷いた。


 ルイレンは能力を使用する。



 戦闘【ルーレット】――!



 ルーレットが回り始めた。とりあえず、黒来い!


 カラン。カラン。ボールが黒のポケットに入った。


 黒の三十五――効果:テレポート。



「……まずい!」ルイレンは焦った表情をしていた。



「えっ?」



 ――。



 目の前の様子が突然変わった。

 いつの間にか、私達はどこか別の場所へと飛ばされてしまったみたいだ。


 ここは……どこ?


 後ろを振り向くと勢いよく風が向かってくる通路があった。その先には行けそうにもない。


「ここから先は宝の部屋だよ。まあ、一方通行だから僕達は行けないけどね。」


 宝の部屋……。つまり、ここは無限回廊の百層を突破した後の場所ってこと? そして、私達はなぜかそこに飛ばされてきた、と。


「ねぇねぇ、面白い所にいけるんだよー。」


 そう言って、マユダが先に進んでしまう。


「ちょっ、待って。」


 仕方なく追いかける。


 横を見ると川の源流があった。ここから無限回廊の入り口に戻れるのだろう。


 とりあえずマユダを追いかける私とカナリン。


 洞窟の外に繋がる道。

 その先は人口の光で照らされた建物の中だった。


 ステンドガラスが散りばめられた荘厳な通路。まるで王宮の中にさえ見える。


 何……ここ? 少し悍ましい雰囲気がするんだけど。


「どこ、ここ?」


「ここは魔王城だよ!」


「魔王城っ!?」



 まさか、主忍のミッションをクリアするために無限回廊を挑んでいただけなのに、私が最後の目的とする魔王討伐――その魔王がいるとされる魔王城に来てしまうなんて……。



 恐ろしい場所に、私とマユダ、カナリンという少数勢力で来てしまった……。



 なのに、マユダがはしゃぎながら進んでいく。



 気づけば、戻る道を忘れてしまった。



 やばい――。

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