92.ツェリとの対決
シャドウの主忍ツェリとの勝負。
秘宝の力で夜の空間となった真っ平らなエリアが戦うフィールド。
午前十一時――夜。
【発火!】
暗い風景の中で燃える黄金の剣がよく見える。
「速攻で来るか。面白い。ならば、召喚。来いっ! 究極的破壊の斧。三日月斧――【ツルハシ】!」
黄色に塗りたくられた月の形のツルハシが召喚された。
剣とツルハシが衝突する。
集中――。
変身――"悪魔化"!
悪魔にできる特殊な能力は四つ――。
まずは一つ目を使う!
瞬間移動――。
パッと瞬間移動して、真後ろに潜り込み、黒く染まる腕で穿つ!
「黒鉄に輝き、さざめく漆黒の【翼】――!」
スッ。空に飛ばれて攻撃が空振った。
「なかなかやる。だが、すぐに終わっても面白くなかろう。狂宴は始まったばっかりだ。」
瞬間移動は空中には使えない。
なら――悪魔の力、二つ目。
右手に力を込めて、回転を利用しながら放つ。
斬撃――!
「"下弦の混沌状態"。」
斬撃がツルハシで切り裂かれるて相殺された。
ツェリがあまりにも《攻撃的超常》を極めすぎていて、攻撃力に無駄がなくて強力。私の斬撃も結構、強力だと思うんだけどな……。
「究極が封印されし丸柱――【土】!」
電柱みたいな土の塊が出てきて、そこに彼女は立った。その立ち姿が美しい。
もう一度斬撃を当てる!
斬……
「白銀に輝く聖なる――【剣】【追尾】」
空中に体力の魔法陣が現れた。そこから私達を狙って軽量化された小さな刺す用の剣が私達向かって飛び出てきた。
避けるしかない――。
このまま逃げるしかない――。
追尾は魔法陣から現れてから一回のみ。そこから直進しかしないので、走り続ければ、剣は避けられる。
けど、動きながらじゃ瞬間移動も斬撃も使えない。
【羽ばたく!】
ハロミトが白い翼をつけて飛んだ。空中を優雅に飛びながら剣を避け続けている。そして、敵を斬る隙を窺っている。
地上にいても何にもできないなら……
悪魔の力、三つ目、
飛行――!
背中に悪魔の力を流し込むと翼が生える。そして、自由に羽ばたかせられる。
剣を避けながら彼女の方に近づいていく。
「さぁ、ここからどうするか見ものだね。」
瞬間移動も斬撃も使えないけど、四つめの力は使用できる。
悪魔の力、四つめ――
超パワー!
左腕に悪魔の力を流し込む。腕が熊みたいな大きさに変化する。見た目は真っ黒。おぞましい悪魔の腕だ。
右腕は斬撃。左腕は悪魔の腕。
悪魔の腕は岩をも砕く!
【発射!】
ハロミトが空中を押し蹴ってダッシュしてきた。
私の攻撃と技がリンクする。
「ハイドレンジア斬り!」炎の剣で斬り裂く一閃。
「"ジキル・インパクト!"」強烈な一撃必殺殴打。
必殺技のコンビネーション――
"二重・刃&格闘"
ツェリもまた必殺技を繰り出す。ツルハシを思いっきり回して、月のような残像を作り出してから斬りにかかる。
「満月一閃――月葬!」
私達の攻撃と彼女のツルハシによる攻撃が衝突した。
勢いが殺された。――相殺。
お互い地面に降り立つ。
「ふっ。素晴らしい。妾一の必殺技を破壊するとは。これ以上の戦いは不毛だな。妾の敗けだ。」
悪魔化を解いた。
どっと疲労感が襲ってきた。
「それにしても、ジキルとはいい必殺技名だ。妾の血肉が踊り騒いでおる。」
悪魔化――。なんか漫画とかテレビとかで悪魔の力を宿す人は、もう一人の誰かを中に宿しているような気がする。そして、もし私の人格が悪魔に奪われる時があれば、その状態をハイドと命名した。
一方で、私の意識がある状態で悪魔の力を使う時はジキルと命名した。
もちろん、由来はジキルとハイドから。
ただ、戦って分かったことだけど、多分、私の中にもう一人の誰かなんて存在しない。微塵にも感じることはなかった。
そのことを踏まえると、ツェリを痛い人だと笑うことはできないな……人のこと言えないな、なんて思った。
「さぁ、受け取れ。妾からの供物じゃ――。」
◆◆
〇主忍修行④――ツェリ
……必殺技習得及び悪魔化顕現常態化習得、他。
◆◆
シャドウの町から永久の町にかけての道は高速道路か下道の道路かのどちらかを選べる。
「懐かしいな……。ここでみんなと一緒にレースしたっけ。」
「懐かしいっすね。」
その時は、私とハロミト、カナリン、パルパル、ボーニー、に加えてカゲトという執事でレースを行ったっけ……。
今回はレースなどやらずに先を進んだ。
◆
永久の町――。
「馬鹿兄貴なら、どっかのベンチでボーっとしてるんじゃない?」
ルイランと遭遇し、一緒に主忍のルイレンを探してくれることになった。
幾つかのベンチを探すも見つからない。
「どこにいるんだろ……。」
そう私が言うと、
「もしかしたら無限回廊に入ってたりして……」とフェルナ。
「そんな訳ないだろ。主忍としての立場もあるんだし。もしそうだったら、あたいが扱く!」とルイラン。
「なんか仲良さそうだねー」とマユダ。
「パルルー」とパルパル。
「……探していけば見つかるよ。きっと……」とルイレン。
「そうでござるな。町は限られているでござるしな」とボーニー。
「じゃあ、頑張ってルイレンさんを探すっすよ」とハロミト。
「まっ、早く見つけ出すわよ」とカナリン。
そして、私達はルイレンを探しに歩いていく。
どこかのベンチにいるはずだ!
……。
「待って! ルイレン、ここにいない!?」
振り向くと私達の後ろに着いてきていた。
「いるなら、いるって言ってよ。絶対、今の時間必要なかったからね!」
ひとまず座れそうな場所まで移動することにした。
公園のベンチに腰掛ける。
「……。……。」
「あの……ルイレンさん? 起きてます?」
「……。あっ、寝てた。」
あまりのマイペースさに調子が狂う……。
一方で近くではカナリンとルイランが口喧嘩に発展してる。
……はぁ。なぜかため息がでた。
「……俺の試練は"実践"。無限回廊で実力試し……。」
「無限回廊……?」
ボーニーが代わりに説明していく。
「無限回廊は世界でも上澄みの中の上澄みが力試しで冒険するダンジョンでござる。別名『百日ダンジョン』と呼ばれていて、計百層の魔族が犇めくダンジョンになっているのでござる。ちなみに、奥に行けば行くほど魔族も強くなっていき、九十層になれば拙者でも厳しい戦いを強いられるでござるな。百層を自力で超えるとすごいお宝が待っているらしいでござるよ。」
そんな厳しい場所が修行の場になるのか……。
私達はルイランと別れて無限回廊へと向かった。
永久の町から北側に長く長く続く洞窟がある。
その場の名は、無限回廊――。
中に入ると少しだけ薄暗い洞窟が広がっていた。
洞窟内には、七色に光り輝く鉱石が剥き出しになっている。
「虹鉱石でござる。これがダンジョンを明るく照らしてくれるのでござるよ。ちなみに、虹鉱石は岩から外れると光を失って粉々に砕けて消えるから、持ち帰ることはできないのでござるよ。」
何とも便利な鉱石だ。
横を見るとおじさんが立っている。その後ろには川が流れていた。
「あれは……何?」
「リタイアの急流でござる。十層事に休憩地点があるのでござるが、そこからこの川にダイブすることができるのでござる。ダイブすれば、出入口のここに運ばれるんだ。ちなみに、あまりに激しくて能力を無効化する不思議な力が働いているから、川を逆流なんか考えても無駄でござるよ。」
正々堂々と突破しないといけないということだろう。
「じゃあ、行くよ――。」
ルイレンを筆頭に、私、ハロミト、マユダ、フェルナ。パルパル、カナリン、ボーニーが着いていく。
上澄みの上澄みが挑む無限回廊。
最後の試練が始まった――。




