91.天道虫(てんとう虫)
ハロミト、フェルナ、ボーニーの中にアンチギルドの内通者が……いる?
嘘だ! 信じたくない。
そう言えば、ヘイムの存在があった。
「ねぇ、フェルナ……。ヘイムじゃないことを証明して欲しいんだけど。」
変身能力があるヘイムが成り代わっている可能性がある。本物が怪盗の手段でどこかで手首縛られて動けないでいる可能性だってある。
「まぁ、いいけど。」
【フェニックス!】
現れるフェニックス。ヘイムは変身能力だけで技のコピーは使えないと聞いている。つまり、それが本物ということを証明していた。
ハロミトは今も尚、剣を半分にしているので、本物だ。ボーニーもずっと棒人間でいるので本物だ。
ヘイムである線が消えた。
「じゃあ、偶然、ドラヴァスの話を聞いてしまった線とかないのかな?」
どうしても信じたくはなかった。無理だと思っていても、違う線を信じたかった。
「俺はこの三人しかいない時を見計らって話たんだ。他の人間なんていなかった。」
もはや本当に三人の中にいるのかもしれない。覚悟を決めなきゃいけないみたいだ。
突然、ハロミトが手を動かして空中を空振るよった。
「おい。何のつもりだ?」
「いや、てんとう虫を見つけたんで、捕まえただけっす。最近よく見かけるんすけど、全然捕まらなかったんすよね。」
ハロミトはつぼみのように両手を膨らませて、てんとう虫を手の中に閉じていた。
少しだけ開きみんなに見せる。
「ナナホシテントウっすよ。珍しくないっすか? 幸運の証らしいっすよ。」
こんな時に何をやっているんだか……。
私にとってはてんとう虫は不吉な予兆にさえ思える。てんとう虫を見つけた日を振り返ると、初めてヘイムと会った日や危険な宗教と戦った日が思い浮かばれた。
あっ――!
「分かったかも。犯人!」
てんとう虫が空を飛ぼうとしている。
どうして私がアンチギルドと遭遇する日にてんとう虫が現れるのか。それも今見てるてんとう虫はなぜか普通の虫に見えなかった。そう、
「犯人は――てんとう虫だ!」
みんなが、えっ? という表情をしている。
飛び立つてんとう虫。
【自分自身】【重力!】
近くに重い圧力をかけててんとう虫を地面に落とした。
"能力解除"
てんとう虫が人の姿に変わった。そこにいたのはアンチギルドの幹部ティナだった。
カナリンの作ってくれた隠れ家の中で保管されていたはずの神の矢が盗まれたのは私と一緒にてんとう虫の姿で侵入したからだ。フェルナのてんとう虫騒ぎでてんとう虫がいたのは確認済。つまり、潜んでいた可能性がある。
三人が疑われた時もてんとう虫の姿でいたと考えれば合点がいく。
「仲間を疑う羽目になって心が傷んだんだけど。許せないわ……。」
ゴキッ。近くでドラヴァスが骨を鳴らしていた。「疑ってすまないな。代わりに、俺が責任取って倒してくる。」
【ドラゴン】
巨大なドラゴンに変身するドラヴァス。
「抑えてろよ……。貴様は逃がさん。ここらで精算――させる罪。思わず散々。思わす魂胆。絶対に許さん! 喰らえよ、炎!」
繰り出される炎。
【テレポート!】
瞬間移動でその場から離れるティナ。炎は空振った。
「残念。バレちゃったね。同じ手はどうせ使えないから、次会う時はいつになるのか分からないね。ひとまず……」
「貴様に今日の帰りはナシ! 食い散らかしてやるよ、その足。最後に貴様はここで死!」
突撃するドラゴン。
「じゃあね――。」
【テレポート】
逃げられてしまった。
虚しい空気が漂っていった。
空は未だに曇天が続いていた。
――――――。
「悪いな。疑ってしまった。」
「仕方ないっす。俺らもてんとう虫に気付けなかったんすから。」
「とりあえず、てんとう虫には気をつけよう。」
とりあえず、裏切り者がいなくて良かった。あの占いもてんとう虫のことを仲間として捉えていたのかな。
そう考えると、気持ちが楽になった。
どこかホッとしている自分がいる。
私達は次の町へと向かった。
◆
砂漠地帯を進んでいると車が私達の横を通っていった。
さらに進むと途中でコンクリートの道が現れる。続いて高速道路が登場した。
数台、車が高速道路を利用しているのが遠目で見える。
「まぁ、車はないもんね……。」
「こういう時に車って便利なんだね。」
「そう言えば、フェルナはどうやって車なしで移動してたの? 徒歩?」
「普通にフェニックスだよ。みんな、乗る?」
【不死鳥!】
フェルナが不死鳥になった。私達を乗せて進む。
風が心地よい。
「ってかさ、こんなことできるなら、初めから飛んでいった方が良かったんじゃない? 岡山大河町からラストウェスタンまでとか、絶対歩く必要なかったでしょ。」
「あっ、ほんとだ……。」
今頃気づいたんかい……。
空を駆け抜けていたらあっという間に目的の町に着いた。
◆
シャドウの町――。
別名、闇に塗れる漆黒の町。
その実態は黒塗りの建物が建ち並び、金ピカ銀ピカの物体が置かれている何とも言えない町。
役所――主忍の部屋。
そこに優雅に座る主忍のツェリ。
「待ちくたびれたよ。妾が四つめの主忍――漆黒のツェリだ。覚悟をしておくといい。」
彼女に連れて行かれたのは町の外れの空き地のような場所だった。
そこに置かれた人形。
「妾の試練は"必殺技"の習得だ。」
「必殺……技?」
「その通り。そこの勇者は妾と共に必殺技を探していくぞ。そして、そこの女戦士は悪魔化の習得をしてもらう。変身練習と維持、そして技の発動だ。」
理解がしやすい。つまり、悪魔の力を自由に使えるようになればいいんだ。
――――――。
始まった練習はほぼ自主練習のようなものだった。
集中――。目を瞑り、力を全身で解放する。
目の前に置かれた鏡には真っ黒い存在と共存する私の姿。言うなれば、半身半魔――。
能力が切れた。維持が難しい。
少し大きめの丸い石がある。その上には小さな石がある。それを持っているイメージ。力を動かす=前へと体を動かすと石を落としそうになる。落としたら力が途絶える。
長く持っていると疲れてきて大きな石を置きたくなる。置いたり落としたらもちろん途絶える。
ドラヴァスの下で基礎を鍛えきて良かったと今すごく思っている。
キツイ鍛錬をつまなければ、ほんの一瞬で能力が切れてしまう。けど、今は戦闘で使える程には維持できそうな感覚だ。後は維持するコツを掴むだけだ。
悪魔化維持――。今なら成功する気がした。
その時、空では大きな白い翼をつけたハロミトが呑気に楽しく飛んでいた。これまた黒い翼を生やしたツェリと共に両手を前に出しながら飛んでいた。
飛び方、アンパンマンかっ!
ってか、ちょっ、なにしてんの!
集中が途切れた。せっかく悪魔化したのに終わってしまった。
二人が下りてきた。
「翼で羽ばたけることを言ったら、これを貰ったっす。」
そう言えば、ヴァリアントギルドの椅子との対決でこの町が販売してる翼で飛んでいた。
「勇者に黒色の――"漆黒のインフィニティな翼"は似合わない。それ故、職人に白色の――"純白のジ・エンドエンジェルの翼"を作って貰った。どうだ。似合ってると思わないか。」
白色の翼が、天使っぽさを醸し出す。悪魔化した私と一緒にいればお互い雰囲気が良く見えるような色合いになりそうだ。
しかし、純白の――何とかの翼は……ネームセンスが足りない気が……。もっといい名前なかった?
【羽ばたく!】
背中につけた翼で空を翔けるハロミト。
【発火!】
黄金に輝く剣が炎を纏っていく。
人形に向かって進んでいく。
【発射!】
空中を蹴り飛ばし進み――人形に向かって剣を振る。
「ハイドレンジア斬りっす!」
「妾が命名した"寛容の紫陽花"を採用するのはいいが、"斬り"をつけるのはどうかと思うぞ。――センス的な問題でな。」
いや、白い翼に"純白のジ・エンドエンジェルの翼"なんて名前をつける人に言われたくないと思うんですけど!
「汝も悪魔化が成功した暁には、必殺技名をつけるぞ。」
「えっ? わざわざ?」
「必殺技をつけるのは理にかなっている。まずどの技かナンバリングするのに役に立つ。何よりカッコイイ。」
「……。」こういう時、なんて言えばいいのだろうか。
「やはり、カッコイイのに尽きるな。という訳で、必殺技も考えるぞ。」
え……めんどっ!
何やかんや命名することになった。
◆
数日後――。
ハロミトは必殺技を手に入れ、私もある程度は悪魔化を維持できるようになった。
「では、汝らに最後の試練を与えよう。妾と勝負だ。――さぁ、下僕共、帳を下ろせ!」
私達の周りの空間に帳が下ろされた。
これによる夜の空間になる。
「覚悟はよろしいか!」
主忍と戦うことになった――。
彼女は確かな強さを持っている。敵に不足なし。新たな力を存分に使うだけだ!




