86.さよならヴァリアント
ヴァリアントギルドの地下――。
私はブーメランを立てかけた。
「ほんとにいいのかよ。貰ってっても何も問題ねぇんだぜ。」
「うん。ヴァリアントギルドを引退するのに、引退した身の私が持ってるのも良くないと思うからさ。」
「何も問題ねぇって言ってんだがなぁ。」
「大丈夫。私自身、そう思って心苦しくなるから、戻した方が私的にもいいの。」
「そういうもんかぁ?」
秘宝――栄光の回転鉄具を返却した。
これから私は主忍の下で修行することになった。そのためにヴァリアントギルドから引退という形となったのだ。
私はリュウジャスと共に地下を出た。
「おい、こっちこいや。」
そのまま彼に連れて来られたのは受付だった。
「てめぇらの最後、付き合って貰うぜ。ヴァリアントギルド恒例、退組者の謎解きスタンプラリーだ!」
「謎解き……スタンプラリー?」
「ああ。てめぇらに特別にメッセージを送りてぇ奴が十人いんだよ。んで、そいつらで七つの謎解きを作った。それを解けたら、最後この宝箱をやるよ。」
机の上に置かれる宝箱。ダイヤルの中にダイヤルが一つあるツーダイヤル式だ。
「まずは紙をやる。そして、最初のメッセージを送らせて貰うぜ。」
私、ハロミト、マユダ、フェルナ、そしてパルパルとカナリンは彼の話を聞く。
『てめぇらのお陰でヴァリアントギルドは"三大ギルド対抗覇戦"も"最強秘宝決定戦"も大活躍をおさめた。感謝に尽きる。世話になったな。』
そして、彼は息を吐いた。
『これがギルマスとしての言葉だ。こっからは俺様の言葉だ。てめぇらとの時間は短いのに長いように感じたんだわ。最高だったぜ。いつでも待ってる。また、来いよ!』
彼は少し微笑みかけていたのが分かった。
「じゃ、これがメッセージカードだ。この七つの丸ん中にメッセージを貰え。」
メッセージが書かれたカードの中には何も書かれていない大きな丸が七つある。その真ん中には三角形があり、その中にリュウジャスの言葉が書いてあった。
「これが謎の七つだ。じゃあ、こっから謎解き開始だ! ……間違えた。謎解きスタートだ!」
なぜ言い直したのかは分からないが、ひとまず謎解きが始まった。
◆◆◆
~七つの謎解きスタンプラリー~
① 使用人→《魔法》→商人
自由 →《魔法》→十
※ 美容院→《魔法》→『?』
「どういうことなのかな……。」
② 三角形がある。その三角形の上に『サ』、左下に『イ』、右下に『ヒ』がそれぞれ置かれている。
※ これが示す店に行け!
「地図に当てはめるとかっすか? うーん、分からないっす。」
③ 北は春。東は夏の時、冬に行け!
「これってさー、下級地域の地図に当てはめればいけそうだよねー。」
④ 『口』の絵の中に『目』の絵が置かれている。よく見ると、目の上側には『縦二本線』が書かれていた。
※ 『口』の絵の中に『玉』の絵が置かれた絵→『都市』の絵。
※『口』の絵の中に『十字架』の絵が置かれた絵→『田んぼ』の絵。
※ この絵が示す建物に行け!
「難しい……。」
⑤ 『穴』の絵→『×』
※ 『穴』の絵(『×』から『0』へ)→『ポール』の絵。『ポール』の絵(『0』から『II』)→『玉』の絵。
※ この時、『ベッド』の絵(『II』から『0』+『II』から『×』)→『?』
「つまり、『?』に当てはまる言葉を考えればいいんだろうけど……。どういう法則なんだろう。」
⑥ 『?』『玉』「王」「口」『用』『犬』『氷』
※ 『+1』『-3』「+1」「-1」『+1』『+1-1』『+1』
※ 上と下が連動する時、『?』に当てはまる店へ行け!
「括弧とカギ括弧で違いがある? 括弧は「王」と「+1」が青色で、「口」と「-1」が赤色で書かれている。なんか法則がありそうなんだけどなぁ。」
⑦ 『S』から『G』が繋がる時、『S』の位置へ行け!
「これは分かったかも。」
「マジっすか?」
「うん。けど、これは最後じゃないといけない問題だから、後回し!」
◆◆◆
謎解きスタンプラリーが始まった。
① 使用人→《魔法》→商人
自由 →《魔法》→十
※ 美容院→《魔法》→『?』
「まずはこれを解かなきゃいけないみたいね。」
これには法則がありそうだ。
しようにん、が、しょうにん。
じゆう、が、じゅう。
びよういん、は……。
「普通に考えれば、病院だよね。」
「どうしてっすか?」
「《魔法》を通すと二つ目の文字が小っちゃくなるの。だから、びよういん、は、びょういん。ってこと。」
私達は病院へと向かった。
病院のすぐ近くの路側で、ピューリが壁に背もたれでいた。
スタンプラリーの丸の中に、オレンジ色のペンでメッセージがそれぞれ書かれた。
『俺からの言葉は、そうだな……。たった十日の修行が昨日のことのように思える。だけど、それなりに時間は経ってるもんなんだよな。いつかまた会ったら、飲みに行こうぜ。』
前向きな表情でペンを指で回していた。
『そういや、主忍の下で修行するんだろ? じゃあ、俺の師匠のチェイスにもお世話になるな。師匠は甘くねぇから、気張って頑張れよ!』
彼は被っていたハットを抑えて目元を隠した。
私も別れの挨拶を伝えた。
――――――。
② 三角形がある。その三角形の上に『サ』、左下に『イ』、右下に『ヒ』がそれぞれ置かれている。
※ これが示す店に行け!
「どういうことなんだろう。サ、イ、ヒ?」
サイヒ、歳費? ヒサイ、被災?
ダメだ、全く分からない。
「多分、分かったかも……。」
フェルナがそう言う。私達は彼女に耳を傾ける。
「遠くから見たら『花』の漢字に見えたような気がして……。」
あー、なるほど。
サが草冠。イとヒで化の文字。合わせると花という字になる。つまり、
「花屋ってことっすかね。」
早速花屋に向かった。
オーーーン三きょうだいが待ち伏せていた。
『最初はお互い敵対心を持って戦ったっけな。けど、今じゃ俺らはお前らが大切だ。』
『あたし達が強くなることを願って追放してあげる。』
『追放だー。追放だー。』
赤色のペンで書かれたメッセージ。
貰った後、私達は追放劇という茶番に付き合うことになった。……外でやらないで。恥ずかしい!
――――――。
③ 北は春。東は夏の時、冬に行け!
「これは余裕っすね。」
「けど、ここまでちゃんとこの世界を見てこなきゃ解けない問題ね。」
「北には年中春の桜が吹雪く町――春町。東には俺の故郷、常夏のイーストブルーがあるっす。そして、いつも冬の村と言えば――」
「南の土島ね。アルカナギルドのある村。」
南門の前にはプルリューが立っていた。
プルリューから緑色のメッセージを貰った。
『少しでも皆さんと一緒の時間を過ごして楽しかったです。また会えることを願っています。』
彼は優しく手を振っていた。
――――――。
④ 『口』の絵の中に『目』の絵が置かれている。よく見ると、目の上側には『縦二本線』が書かれていた。
※ 『口』の絵の中に『玉』の絵が置かれた絵→『都市』の絵。
※『口』の絵の中に『十字架』の絵が置かれた絵→『田んぼ』の絵。
※ この絵が示す建物に行け!
「難しすぎないっすか?」
私達はベンチに座ってゆっくりと考えることにした。
「カナリンは解けたわよ。」
手を挙げたのはカナリンだった。
「カナリン、こういうの得意だもの。西大山にいた時はこういう謎解きを沢山やったのを思い出すわ。西大山って謎解き問題の産地だから。」
カナリンはペンで問題用紙に文字を書いていった。
「『口』の漢字の中に『玉』を書くと『国』になるわよね。『十字』を書けば『田』(田んぼの田)になるわね。」
「じゃあ、『口』の中に『目』を書いて……。いや、存在しなくないっ!?」
「それが厄介だったのよ。けど、目を片仮名『メ』として置き換えたら解けたわ。」
口の中に『メ』を置いた。とすると、この縦二本線は点々を示して、漢字にすると『図』ということか……。
「図……? いや、解けたけど、まずどこよ。」
「図書館じゃない?」
図書館に行ってみると、そこにはイッスーがいた。
「アイスるみんな、よく来たね。」
青色のメッセージを貰った。
『死なない限り、いつかまた会えるかも知れない。永遠の別れじゃないんですから、悲しむような別れは必要ないと思うんです。僕からは、また会いましょうとだけ伝えます。――本当にまた会って、今度は共に旅するかもしれませんからね。』
――――――。
⑤ 『穴』の絵→『×』
※ 『穴』の絵(『×』から『0』へ)→『ポール』の絵。『ポール』の絵(『0』から『II』)→『玉』の絵。
※ この時、『ベッド』の絵(『II』から『0』+『II』から『×』)→『?』
「穴はバツで、そのバツがゼロになるとポールになる。ポール?」
カナリンは解けたみたい。けど、教えてくれない。西大山で身につけた謎解きスキルを早く披露して欲しい。
穴……ホール。あっ、ホール。玉はボール。
分かったかも!
「『ホ』ールの文字はバツで。『ホ』にゼロ……じゃなくて丸をつけると、『ポ』ール。二本線に変えると『ボ』ール。」
「じゃあ、『ベ』ッドは……二本線で、それを丸に変えて、ペッド。ドの濁点をなくして……『ペ』ットっすか。」
「あー、ペットショップだね!」マユダも気づけたみたいだ。
ペットショップの近くにアナココがいた。
彼から黄色のメッセージを貰った。
『初めて会った時は、竜牙兵のクエストだったかな。リーダーは死にかけるし、ベルルは裏切るし、散々な目に遭わなかったよね。見苦しいところを見せて本当に申し訳ない。』
いえいえいえ……。
『短い間だったけど、濃い時間を貰った気がするよ。だから、ありがとう。大切な思い出として一生覚えておくね。』
なんか……ちょっと重た過ぎない?
――――――。
⑥ 『?』『玉』「王」「口」『用』『犬』『氷』
※ 『+1』『-3』「+1」「-1」『+1』『+1-1』『+1』
※ 上と下が連動する時、『?』に当てはまる店へ行け!
「これが一番難しいかもっ!」
「ほんとになんなんすかね!」
「五つのカギカッコと、青色のカッコ、赤色のカッコ。どっかで見たような気がするんだけどなー。」
西大山で脳を鍛え終えてるカナリンはとっくに解けたらしい。「『氷』で分かったわよ。」
じゃあ、氷……が一番のヒントになるのかな?
けど、分からない!
その時、フェルナに豆電球の偶像が光った。
「分かったかも知れない。」
「本当に?」
「これって、曜日じゃない? 多分。」
曜日……。
あー、そういうことね。完全に理解した。
「『水』曜に『+1』加えて『氷』。カナリンはそれで他にも当てはめたの。普通のカッコに色がついてたのもヒントになったわ。」
つまり、『金』曜から画数を『-3』して『玉』になる。『土』曜から画数を『+1』して『王』。そして、土日は祝日だからカッコの種類が違う。カレンダー見れば土曜と日曜で色が違う。だから、青と赤で色分けしてるんだ。
『火』曜が横線『+1』して点々『-1』すると『犬』になる。だから、『+1-1』なのか。
「じゃあ、『?』は『木』曜日から『+1』して……『本』?」
「あー。本屋。」
私達は本屋へと向かった。
そこにはダイセナが待っていた。こういうのに参加するようなキャラじゃないと思っていたから意外だ。
『仕方ないから、参加しただけだ。』
藍色のメッセージ。最も量が少なく適当だった。
私達はその場を去ろうとする。
『これだけは伝えておく。人生、何が起きるか分かんねぇ。仲間に後ろから毒矢で貫かれて二度と戦えなくなる奴もいるんだ。ほんと、分かんねぇよな。』
その言葉が少しだけ私達の足を止めさせた。
『まっ、これだけは約束だ。――死ぬなよ。』
その言葉をしっかりと受け取った。
ツンデレのような冷たさの中に温かさがあるのをとても感じた。
――――――。
⑦ 『S』から『G』が繋がる時、『S』の位置へ行け!
「お嬢様。これ、分かるっていってたっすよね。」
「うん。リュウジャスさんがわざわざ受付に呼んで、そして、わざわざ開始をスタートと言い直してたから、それでピンと来たんだよね。」
「……。ごめんっす。分からないっす。」
「スタート……つまり『S』ってこと。もちろんゴールが『G』ね。①から⑥が全部解けて、最後の⑦を解く時に『S』スタートの場所に行けばいいってことだと思うんだよ。」
つまり……
「じゃあ、ゴールはギルドの――」
「受付ってこと!」
ヴァリアントギルド――。
「正解です。最後に私からメッセージを送らせて貰います。」
ヴァイオレットの色のメッセージを貰った。
『思い出が蘇りますね。一緒に雷忍を倒した後、王宮に招かれて――』
そこから思い出話が広がっていった。
数十分後……。
『カナリンさんとは長く旅しましたよね。あの時は確か――』
さらに数十分後……。
『――じゃあ、主忍との修行頑張って下さいね。今までありがとうございました』で結ばれた。
そこに、リュウジャスが来た。
「ついに、終わったみてぇだな。じゃあ、最後にこれを開けたら終わりだ。こん中には、俺らからの品が入ってる。」
ダイヤルが大小二つ重なってある宝箱が机の上に置かれた。
「ヒントはこの謎解きスタンプラリーの中にある。上手く見つけてくれや。適当に回しても大が十二通り、小十二通り、合わせると壱四四通りもある。無闇矢鱈に回しゃ、日がくれるぜ!」
つまり、最後の謎解きだ。
ヒントは謎解きスタンプラリーの中にある。その中にある違和感を見つけなければ。
一つ、気になったことがあった。
メッセージがみんな違う色で書かれていたことだ。
オレンジ、赤、緑、青、黄、藍色、ヴァイオレット。
「やっぱり藍色と赤紫色があるのがおかしいよね。」
この配色は……虹だ!
けど、
「『虹』って分かっても、ダイヤルは二つあるし……。『七』と……もう一つなんだろう。」
カチャッ。
「空いたよっ!」とマユダ。
「えっ、空いたの! なんで?」
「なんで、って、お母さんが『二時』って言ったから、二時のダイヤルに合わせただけだよ。」
「『虹』のダイヤル? いや、ごめん。分からない……。」
ダイヤルを見た。納得した。虹と二時で言葉をかけているのか。
「謎解き終了だ。そん中はてめぇらへのプレゼントだ。受け取っとけ。」
赤色のポーチが入っていた。一目でヴァリアントギルドイメージだと分かる意匠が施されている。その中には沢山の薬など回復用品が詰まっていた。
持ち運びやすいようにポーチにしたのだろう。けど、カナリンがいるから持ち運ぶことはないけど。
その下に何やら一枚の硬めの紙があった。
またもやスタンプラリーだ。今度は五つの穴埋めとなっている。
「それは国から渡してくれって頼まれたもんだよ。主忍の修行を一つこなすと、スタンプ一つ。五人全員のスタンプを溜めりゃ、終了だとよ。」
そうか。今度は主忍との修行のスタンプラリーが始まるのか。
国の代表とも言われる五人の実力者――主忍。
ルイレン――。
ツェリ――。
ドラヴァス――。
チェイス――。
桃太郎――。
どんな修行が待っているんだろう。
期待と不安を胸に閉じ込め、ヴァリアントギルドのみんなの声に押されて、次なるステージへ向けて歩き出す。
外は明るい日差しが指していた。




