84.『雷忍』弐
ららららららーら♪
美しい鳴き声が聞こえる。
意識を取り戻した。どうやら気絶していたらしい。
夜鶯鳥になったナギサのお陰で何とか前線復帰できる。
重火器が駄目なら、ブーメランの総ダメージで攻撃。何度も石像の足をすり抜けていく。
カチッ。
総ダメージ!
「嘘でしょ。硬すぎでしょ。」
ハロミトの剣攻撃。頭上では二匹のリュウによる衝撃波。雷忍が蹌踉めいた。
「生半可な攻撃は効かないけど、威力のある攻撃ならちゃんと喰らうってことか。」
ヨーヨーが振り回される。しかし、全く攻撃が効いていない。ルイランの焦る姿が目に見える。
【デコピン!】空中で行われるデコピンが凄まじい突風を引き起こした。
リュウが二匹落ちてきた。二人ともまだ戦えそうだ。それに巻き込まれたルイランがそれなりのダメージを負った。
【回復!】
カナリンのヒールによって、ルイランが回復した。
「地雷お願いしていい? やりたいことがあるんよ。」
アテナからの提案に私は頷いた。
【地雷】ランダムに地雷が巻かれた。
【上がれ!】【集まれ!】【与える!】
アテナが私の置いた地雷を地面に引き上げ、それを一つにまとめて、石像の足へとぶつけさせた。
「ダメージは確実に与えてるんやけどな。効いてへんように見えるわ。」
傷がついてるのが分かる。だけど、建物が殴られて凹んだところで崩壊しないのと同じで、この攻撃は些細なことに思えた。
この攻撃が無理だと悟ったのか、彼女はそのまま攻撃しに進んでいった。
「あー。ムカつく。みんなは何とかダメージを与えてんのに。何にも役に立てねぇ、あたしがほんとっムカつく。」ルイランが苛立ちを爆発させていた。
両手が地面に下ろされる。
石像は地面の中に腕を忍ばせた。
【泥岩!】
腕を引き上げると巨大な泥岩が持ち上げられた。それを粉々に砕き潰す。その時に落下した岩石が私達を襲う。
「あーもう。せめて岩ぐらいなんとかしたるから、お前らで何とかしろ!」
ルイランはヨーヨーを巧みに使って岩の軌道を変えて、落ちてくる岩石からみんなを守った。他にもルイレンがボーラを使って同じようにみんなを岩石から守った。
「このままやっても埒が明かねぇよな。なぁ、ジュリネ。てめぇ、"中堅"だろ? こん時、どうすんだ?」
突然、リュウジャスから振られる問い。
あまりに唐突で驚いて思考が停止しかけたけど、何とか頭を働かせる。
「一撃必殺を同時に当てます。」
「動いて技が定まらねぇよ!」
「両足を狙って動きを止めて……。前の頭と背中を同時に一撃必殺で攻撃したら折れたりしないかな……。」
正直確信はない。そんな考えしか思い浮かばない。
そこに犬に乗って颯爽と移動する桃太郎が近づいた。
「てごうする! ワシがオヌシの指示を伝える。一気に終わらすぞな!」
用意してくれた時間と機会。このチャンスはきっと一度きりしかない。今の案を具体的な指示に変える。
「強力な技が放てる三つの班に別れる。足、背中、顔。まず足を狙う。動きを止めたら背中と顔を同時に狙う! それぞれ一撃にかける!」
それを聞いた龍が頷いた。
「よしっ。俺ァ、ドラヴァスと一緒に爺の頭をぶん殴る。災害として不名誉な歴史を刻む前にねじ伏せてやるよ。」
「兄貴、アレをやるんだな。出し惜しみ不要って訳だな!」
龍と竜が再び空を飛んでいった。
「マユダ。必殺技を背中に放てる?」
「無理。必殺技さー、ゆるやかに落ちて進ませるぐらいしかできないからさっ。まぁ、足狙うぐらいしかできないよー。」
「分かった。マユダは足、お願い!」
「おっけー。」
【マグマ!】【まとまれ!】【丸まれ!】
マユダの背後にはマグマが集まっていった。
「桃太郎さんはルイレンさんとアテナさん、カナリンちゃんをここに呼ぶ。フェルナとナギサさん、ハロミトの三人で壁役。伝え終えたらマユダのサポートをお願い。」
「じきいく!」
桃太郎は狼に乗って進んでいった。
【電気!】――"電雷!"
雷雲を掴んで振り下ろす攻撃。
【不死鳥!】
【夜鶯鳥!】
不死鳥に乗ったハロミトが振り下ろされる拳に剣を当てた。勢いが止まる。
雷雲に向かって不死鳥が突撃した。雷雲は消える。不死鳥は持ち前の回復力で無事のようだ。
夜鶯鳥の囀りがハロミトを回復させていく。
「……。どうすればいい?」
ルイレンが到着。すぐにアテナとカナリンも到着した。
「アテナさんは私と一緒に今から斧を強くします。それが終わったら、ルイレンさんはアテナさんを背中まで飛ばして欲しいの。カナリンはアテナさんに攻撃バフをお願い。」
「ごめんな。ちょっと理解が追いつかないんやよ。」
理解できていないアテナに「斧を出して」と伝えた。
ブーメランのダイヤルを回してから、斧に向かって攻撃する。が、全てすり抜ける。
「このブーメランは今はすり抜けて、後でその分のダメージを与えるの。」だからこそ、キックバックの時間を短縮できて、沢山のダメージを重ねられる。
カチッ。斧がブーメランによる総ダメにより、大ダメージを受けた。
「なるほどな。斧はダメージを受けた分だけ力を蓄積するもんな。こりゃ、最強の攻撃力になったんやないか。」
眩く光りだす斧。斧の効果で最大級の一撃必殺技が使える状態だ。
狼に乗っているマユダは横を向きながら、持っている鉞を石像方面に振り下ろした。
空中で密集するマグマの塊がゆっくりと石像の足元付近に向かって進んでいく。
「太陽支配・黒点衝撃!!」
足に直撃する太陽のような攻撃。それが足を破壊する。
石像のバランスが崩れた。片膝を着いて動けなくなった。
今だ!
ルイレンがボーラを振り回す。ボーラはアテナの足元に絡まっていた。振り回されるアテナ。
「……。行け。」
そして、投げられるアテナ。石像の背中に向かって進んでいく。
【火力!】カナリンのバフでアテナの攻撃力が上昇。
石像の背中に強烈な閃光が現れた。
そして、石像の頭付近では、リュウジャスが龍から生身となり、ドラヴァスが竜から生身となっていた。
【隆起】――【ドーピング】
右腕が気持ち悪いほどに筋肉ムキムキになったリュウジャスと、左腕が以下同文のドラヴァス。二人の筋肉の腕が同時に顔を襲った。
後ろに倒れていく石像。
いつの間にか巨大な石像の姿は消えていた。
落ちていく二人を空中で受け止めるフェニックスと夜鶯鳥。無事、みんなが地上に降り立った。
「とりあえず、やったか?」
その時だった――。
砂煙が消えた頃に現れる人間の等身大の石像。デイダラボッチとなった状態が解けただけでまだやられていた訳ではなかったみたいだ。
「ちっ。っぱ、タフすぎんな、爺はよぉ。」
満身創痍の私達。しかし、石像もまた満身創痍。
【悪魔――!】
石像が悪魔の姿に包まれた。
闇が石像の周りへと集まっていく。
凄まじい力のオーラが放たれていった。
「なんだよ。あの姿ァ。こんな状態、生まれて見た事もない。」
「同じだ。」
ドラヴァスの動揺に、リュウジャスも同様だと伝えていた。
圧倒的な存在感がその場を支配していた。




