83.『雷忍』壱
巨大すぎる石像が都市に近づいてきている。壁よりも大きな存在だ。簡単に壁を破壊され、町ば蹂躙されてしまうだろう。
「何その、進撃〇巨人みたいな状況!? まぁ、その一体しかいないのが救いだけどさぁ。」
恐ろしい存在は無視できない。
ヴァリアントギルドに戻った。
リュウジャスが指揮を取っていた。
「良いとこに来た。今、やべぇ状況になってんだ。外でな、巨大な石像が動いてこっちに来てんだよ。」
「空から見たよ。」
そこに国の忍もやってきた。
国側もまた状況が掴めずにパニックになっているようだ。
「どうなっているか、カナリンは理解してるわよ。」
視線がカナリンに集まっていく。
「石像の封印が解かれると石像が襲ってくるのよ。で、アンチギルドは持っていた"秘宝――勾玉"の能力【スポットライト】を発動していた。ちなみにその効果は、攻撃対象が持ち主のみになる効果よ。」
その言葉を聞いて、何が起きたのか点と点が繋がった。ここに向かってくる理由を踏まえて考察すると……
①石像に向けて勾玉の【スポットライト】を発動する。
②勾玉を王に返却。現在は、王子ソフィス・ジュニアが所持。
③石像の封印が解かれる。石像は【スポットライト】の影響で、持ち主の王子目掛けて進行している。
「――ってこと?」
「そうだろうな。」
「これってさ、王子を都市から追い出せば被害を少なくできるんじゃない?」「名付けて、王子生贄作戦だねっ!」
その提案を聞いて、「馬鹿じゃねぇの? 駄目だろ!」と返された。ごもっともです。
「勾玉を投げ捨てれば効果なくなるとかないのかな?」そんな意見を思いついた。
「無理だろうな。少なくとも王子は王宮から出ることはねぇし、秘宝も手放さないだろうな。諦めろよ、それがプライドの高けぇ王族ってもんだ。」
つまり、この状況を止めるためには――
「もはや、やることは一つしかねぇなぁ。力ずくで爺の石像を破壊して、食い止める。早いし分かりやすいな。」
国の忍が「では、前線にて『雷忍』の石像の破壊をお願いします」と改めて任務を通達した。
「もちろんだ。だが、やることがある。本当に強ぇ奴を集めてくれ。生半可な奴だとすぐ無駄死にだ。強ぇ奴だけ寄越せ。それを沢山寄越せ。」
なんかリュウジャスさん、意外と無茶ぶりのようなことを言ってない?
ガタンっ!
ギルドにドラヴァスが入ってきた。息を荒らげている。そして、険しい顔を浮かべている。それがイレギュラーを示していた。
「兄貴! お爺の石像が都市に向けて進行してる。早く倒さないと都市が大変なことになる!」
「んなこと知ってるよ。強さなら嫌な程、分かる。俺らだけじゃ足りねぇ、最強部隊でぶっ倒しにいくぞ!」
騒然とした状況。ギルドの中が慌ただしい。
「おい、イッスー。俺様の代わりにこいつらまとめて、都民の避難を手伝わせろ。ナギサとジュリネパーティーは借りてく。質問はあんか?」
「椅子だけになイっス! 全力で取りかかるから、心配しなくていいですからね。」
「おう。そっちは任せたぜ。」
私達はリュウジャスに着いていくことに。
「パルパルのこと頼んだ!」と私はピューリにこの子のことをお願いした。
そして、ギルドを後にした。
北側の門から都に逃げてきた人が入ってくる。北側に住む人々はパニックとなり、一時的に南側や地下への避難を試みている。
カリッジギルドの人達が避難がスムーズになるように動いている。そこにヴァリアントギルドも加わった。
「助かるで、ほんまに。」
そう言うアテナにリュウジャスは、
「てめぇは俺らと一緒に来い」と無理やりアテナを討伐チームに連れ込んだ。
「仕方ない。ヌユ、後はお願いしてもいいか?」
「大丈夫です。任せて下さい。」
イッスーとヌユが協力して指示を出していた。
私達は敵のいる方向に向かいながら、敵の情報を話すドラヴァスやリュウジャスに耳を傾けた。
「『雷忍』のデイルタは俺らのおじいちゃんだ。石像になる前まではよく稽古をつけて貰った。」
「能力は"デイダラボッチ"だ。単純な巨大な生物で、底の見えねぇ体力が特徴だぁ。まず巨大なだけでパワーも攻撃範囲もやばくなるってもんだ。身体的最強と言っても過言じゃねぇ。」
「神の矢は使っても意味ないだろうな。お爺は余分な追加効果なんか纏わない。デイダラボッチの単純なポテンシャルだけだ!」
一つ前の時代において最強の人間として名を挙げた五人。その内の一人が『雷忍』のデイルタ。先程言われたように、フィジカル最強らしい。
そうこうしている内に北門へと辿り着く。
門を出てから敵を見ると、何とも巨大で何と壮大なものか。砦で見た石像が言い表せない程の巨大化を果たしている。
ほんと……デカすぎんだろ。
高層ビル以上の大きさのある石像はゆっくりと前へと移動している。こんなものが壁に突撃したら、壁は一瞬で粉々だろう……。都市の被害が計り知れない。
ここで食い止めるために、倒すしかない。
◆
集まったのは十二人。
近接タイプのハロミト、アテナ。
近中遠パワーアタッカーのマユダ、ドラヴァス、リュウジャス(壁役も兼ねる)。
中距離援護タイプの私、ルイラン。
近中オールラウンダーのルイレン、桃太郎。
中距離砲台役もしくは壁役のフェルナ。
サポーターのカナリン、ナギサ。
敵対するは"デイダラボッチ"となった雷忍。
「さっさとケリつけてやる。」
リュウジャスとドラヴァスが前へと出た。
【龍】――【ドラゴン】
龍と竜が現れる。空へと駆け上がりながら、一気に頭付近の高さまで上がった。
ビートなリズムが響いていく。
二つのリュウが放つ炎。しかし、全く効いていない。
ゴゴゴゴゴゴ。
振り下ろされる拳。まるで建物が落下してくるかのよう。圧倒的な範囲と威力。地面に当たると衝撃で地震のように揺れる。
武器【ルーレット】
五――ボーラ。
ルイレンが召喚する先端に鉄球のついた鎖。
さらに、自らに対し――
戦闘【ルーレット】
黒の六――効果:武器の巨大化。
振り下ろした腕を上っていき、途中で前へと跳ぶ。そして、巨大化した鉄球を腹へとぶつけた。
【フェニックス!】
フェルナがフェニックスに変身した。
「フル【フレイム】!」
フェニックスの放つ炎が直撃する。
【まさかり】マユダが斧を取り出した。
【自分自身】【重火器】【重力】いつものように私も重火器を取り出して振り回す。
足に向かって振る攻撃。だけど、鋼鉄の山に向かって攻撃してるみたいでダメージを与えられない。それどころか攻撃を加えた私の方が手がジンジンするというダメージ。
再び振り下ろされる拳。
それをハロミトが剣で止めた。
「めっちゃ軽いっすね。当たってないように思えたっすよ。」
あべこべの効果で威力が逆になっているので、実際の威力は相当なものなのだろうと予想できた。
石像の手に向かってアテナが斧を振り下ろす。
"フォワード・パス"
ルイランが棘のついたヨーヨーを石像の腕に直撃させる。
桃太郎が石像の腕に向かって剣を振るう。猿が如意棒で突く。
しかし、どれも効いていない。
ガシッ。石像は雲を掴んだ。
【電気!】
雲は雷雲に変わる。
――"電雷!"
雲を持ったまま地面に向かって拳が振り下ろされた。地面にぶつかった雷雲が破裂して、周りに稲妻を走らせる。
目の前が真っ白になった――。




