80.迷子のパルパル
準決勝――。
勝ち上がった王子ソフィス・ジュニアとジェノムが対峙した。
「第一試合において、民衆の賄賂に対する拒絶反応を感じていなかったのでしょうか。私には野心も保身もございません。ただ、使命感があるのみ。――賄賂には興味が湧きませんねぇ。」
再び賄賂の話が暴露された。
怒り出す王子。
試合が始まると共に、間髪入れずに襲っていくも、地面から現れる塔にすぐさま貫かれて消えた。
◆◆
準決勝、その一(第五試合――)
×王子ソフィス・ジュニア
〇ジェノム(圧勝)
◆◆
次は私の出番だ。
フィールドに降り立つ。
相手は……。
「あれ? ルイレンが来ないんだけど……。」
いくら立ってもこないルイレンにちょっと心配になりそう。またボーっとしてるのかな……。このままじゃ不戦勝になっちゃうよ。早く来ないと!
すると、アナウンスが入った。
『ただいまルイレン氏より連絡が入りました。先日の桃太郎氏との戦いにて秘宝――七支刀の能力を出し切り、能力の復活には最低でも一ヶ月以上はかかるとのことです。そのことを受け、辞退の申告をされたことをお伝えし、我々は辞退を受け入れたことを表明します。』
……あれ? 何もしずに勝ってた?
◆◆
準決勝、その二(第六試合――)
〇ジュリネ(不戦勝)
×ルイレン(秘宝が使えないため辞退)
◆◆
『尚、本日の試合はこれで終了となります。決勝戦は明日――』
会場にはブーイングの嵐が舞っていた。
――――――。
会場を出てハロミト達と合流した。
「やばいっす! パルパルがどっかいったっす!」
人混みの中、パルパルが迷子になった。
「いや、なんで!?」
「リボンに何か大切なものが結んであったっぽいよねー。だって、それが落ちて風に飛ばされた瞬間、逃げ出しちゃったもん。」
「とりあえず見つけないと。けど、どこに行ったかは分かる?」
……。手がかりはなさそうだった。
「もしかしたらうちの力で何とか見つかるかも。」
【不死鳥!】
不死鳥に変身したフェルナ。空からの探索を行う。
「私達は三つに別れよう!」
私、ハロミト、マユダの三人で手分けして探すことに。
だいぶ人混みが落ち着いた道に出た。周りは屋台が出ている。
周りを見渡しても名前を呼んでも見つからないし出てきてくれない。
一体どこに行ったのだろうか。
ナーロッパ(ヨーロッパっぽいけどヨーロッパじゃない独特な創作都市)の街並みは見晴らしもよい平坦な道のお陰で見やすいものの、土地が広大すぎてパルパルが見つかる気配がしない。
裏路地にいるのかな……。
入り組む道に入る。
「今、迷子のペットを捜索中なのねぇ。お金をくれたら占って上げてもいいわよ。」
影に塗れて、壁に背もたれている一人の中年女性――占い師のウメノだ。
アルカナギルドで、ジェノムの仲間……。
「アルカナギルドはアンチギルドと協力関係だと知れ渡ってしまって肩身が狭くなってねぇ。今や離籍者も絶えないわ。あたしも堂々と占いを生業にできなくなったのよ。」
「アンチギルドは私の敵よ。大切な仲間を攫ってるんだから。アンチギルドの協力者のあんたなんかに占って貰わなくて結構。」
「けどね、勘違いしないで。アルカナギルドも一枚岩とはいかないのよ。あたしみたいな中立者もいる。歴史を求める人はアンチギルド派だけど、神秘を求めるあたしはアンチギルドなんてどうでもいい。ただ金次第で誰でも平等に占ってあげるだけよ。」
どうしても見つからないパルパルかプライドか。パルパルが見つから方が大切だ。
私はお金を支払ってパルパルのいる場所を占ってもらった。まぁ、迷ったけど仕方ない。
【占い――!】
「じゃあ、教えてあげるわね。」
――――――。
屋根が真っ平らな建物が連なるエリア。その屋根の上にパルパルがいるのが見えた。
「どうやって屋根を登ろう……。」
ひたすらに歩くパルパル。落ちそうで怖い。
「お嬢さん、何か困りことかい。」
酒に酔っ払いかけているおじいさん。カリッジギルドのズーモスだ。
「あそこにペットのパルパルがいて、連れ戻したいんですけど――」
「なるほど、じゃあ、ワシに任せぃ!」
そこに二人が近づく。
「僕達も手伝いますよ。町の困り事を解消するのが僕達の役目ですから。」
彼らのサブマス、ヌユが優しく微笑んだ。
「金はどれぐらいですか?」
「お金なんかいりません。困った時はお互い様ですから。」
【ヌンチャク!】
彼はヌンチャクを取り出した。そして、どこまでも伸びる鎖を利用して、屋根付近のでっぱりにヌンチャクを絡ませた。
「僕に捕まって下さい。」
彼に捕まって、屋根へと飛び移る。
【ズワイガニ!】
ズーモスが人を一人乗せて、壁を横歩き……横ダッシュしながら登ってきた。怖っ!
「パルパルっ!」
パルパルを呼んでも反応がない。空を飛んでいる一枚の紙? を追いかけるので夢中で、他が見えていない。
「このままじゃ、落ちちゃう。まずいね。」
急いで追いかける。
やばい。落ちる――
「ここは俺に任せな。筋肉があれば何でもできるのさ。」
【ムキムキ!】
ズワイガニに乗ってきたムトーが、思いっきり筋肉の力でパルパルに追いついた。
パルパルよりも先に落ちる。
【無重力――!】
ふわふわと落ちていくムトー。その上にパルパルが落下した。
「すまないな。俺の筋肉ベッドは硬いんだ。少し我慢してくれな!」
無事に床に着地したみたいだ。
パルパルは飛んでいく紙に向かって歩き始めた。
「もしかしたら、あの飛んでる紙を取りたくて歩いてるのかもしれませんね。ということは、あの紙を僕達で先に取れば、どこかに行くこともないかもしれません。」
ヌユさんの名推理。
じゃあ、飛ばされていく紙をまず取ろう。
ヌンチャクを引っ掛けて、そのまま鎖を出し続けることで降りていく。ズワイガニは不思議な横歩きで勝手に降りた。
すぐにパルパルの元へと近寄り、抱き上げる。しかし、パルパルは暴れて紙の方に無理やりでも行こうとする。
そんな時、見たことある三人が通りかかった。
「おっ、こんなとこで何してんだ?」
「あっ、オーーーン三きょうだい。ちょうどいい所に!」
「ごめん。あの飛んでる紙を取って欲しいの!」
彼らは任せろとサムズグッドサインを出した。
オヘンシンが【大鷲】になって紙に近づく。その上に乗るオコトが【落ちろ!】で紙を地面に落とす。最後に、地面で待っていたオゲンが【檻】を繰り出して風で飛ばされないようにした。
「これで一件落着ですかね。」
「本当にありがとうございます!」
カリッジギルドのヌユ、ムトー、ズーモスと手を振りあいながら別れていった。
「三人もありがと。助かったよ。」
「どうってことよ!」
さて、ひらひらと舞っていた紙を手に取った。紙ではなくてフィルムだった。
私の"自撮り"の能力で取った写真だ。
「懐かしいな……。」
パルパルが家族となった時に、屋敷で撮った集合写真だ。
私は真ん中でパルパルを持ち上げていた。横にはその時の執事カゲトがいる。そして、ハロミトとカナリンがいる。
「カナリン――。」
大切な大切な仲間のカナリン。今はアンチギルドに奪われてしまっている。そして、約束にて私が『最強秘宝決定戦』で優勝すれば返して貰うことになっている。
ついに、明日は決勝戦。勝てば、カナリンを取り返せる。――絶対に負けられない戦いだ。
「パルぅ!」
笑顔を浮かべるパルパル。「次は無くさないようにね」と言いながら、写真を丁寧に畳んでパルパルの装飾品の中へと入れた。
「見つかったんだね。」
「良かった。」
マユダとフェルナが戻ってきた。
私達はギルド近くの宿屋へと戻った。
――。
「あれ? ハロミトは?」
ちなみに、ハロミトは夜が開けるまでずっとパルパルを探していたらしい。




