79.主忍 対 主忍
闘技場に立つ二人の姿。
「久しぶりじゃなぁ。今日はお互い本気で戦おうか。」桃太郎が軽く跳ねて体を慣らしている。
「……そうだね。」ルイレンは少し眠そうだ。手には七支刀を持っている。
お互い主忍という実力者同士。勝った方が私と戦うこととなる。
試合のゴングが響いた――。
◆◆
第四試合。
〇桃太郎将軍
……秘宝――伝説の如意棒【伸び縮み】
〇ルイレン
……秘宝――七支刀【七つの力】
◆◆
【門!】
壁が門に変わる。その門から三匹の動物が出てきた。――犬と猿と雉だ。猿は如意棒を持っていた。
戦闘【ルーレット!】
フィールドの真ん中に現れたルーレット。零から三十六までの数字、色は赤と黒が並んでいる。鉄の玉がルーレット版を回っていき、ポケットへと入っていく。
黒の十五――。
効果は……
「ほう、視野が三百六十度になるか。空から俯瞰してるみてーだ。」
二人を包む不思議な靄。お互い同じ視野の拡大効果を受けているのだろう。
『さぁ、試合はお互い準備はできたみたいだ! さぁ、どっちが先に動く~!?』
「……。先は僕が行こうか。」
"木使用――森林の木刃"
七支刀が大木に変わる。まるで刃のような鋭い枝が素早く伸びていく。いつの間にか、桃太郎を囲んでいた。
『ルイレン! さっそく、大技だぁ!!』
斜めから襲う鋭い枝。
それを前を向きながら避ける。
さらに後ろの方から幾つもの木が襲っていく。
またもや後ろを振り返ることなく躱したり、剣でいなしたりしていく。
まるで後ろからの攻撃が見えているようだ。全て見切る桃太郎には攻撃が効かない。
「……。もらった……。」
いつの間にかルイレンの近くへと来ていた桃太郎。後ろに気を取られすぎて前に出てきていたことに気づくのが遅れていた。そこに向かって七支刀が振られる。
"火使用――焔の火剣"
【モーション!】
前方を襲う強烈な炎。
しかし、ありえないような空中での身の動きで炎を躱す。
あの技を見てると、『人の心とかないんか』とか言ってそうな人が頭に浮かぶ。
『おおっと、始まって早々、激しい対決となったぁ!』
七支刀の分裂した刃が二つ消えている。あの剣が放てる能力は残り五つみたいだ。
【燃えよ!】
桃太郎の刀が炎に包まれた。
七支刀と炎の刀がぶつかり合う。
そこに彼の背後から猿が如意棒を振り回した。それを見ることなくさっとしゃがんで避けるルイレン。彼もまた後ろからの攻撃が見えているようだ。
ルイレンが走り出す。
それを追う犬と猿と桃太郎。七支刀を振り回しながら、攻撃を防いでいく。
「早うケリをつけちゃるよ。そして、おめぇは早ういんどかれー。」
「……?」
『桃太郎語録で、帰っておきなさい、はインドカレーというらしいぞ。この場合は、煽ってるぞ!』
「……。そういうことか……。その言葉、そのままそっくり返す。」
"月使用――重力の月輪"
カキンッ!
刀と刀がぶつかり合う。その後、七支刀が軽く肩に当たった。
その時、桃太郎は膝をついて動けなくなった。
『どうしたんだ? 桃太郎の動きが止まったぞ! 何が起きているんだ?』
七支刀が上に投げられる。
「ごめん……。邪魔。」
ルイレンは飛びかかってきた犬を蹴り上げた。犬が七支刀に触れると、いきなり急落下し、桃太郎同様に地面に這いつくばった。
彼を襲う如意棒。全身で受け止めるルイレン。落ちてきた七支刀をキャッチして如意棒に触れると如意棒が落下した。
「これで……終わり。」
"水使用――海の水矛"
目の前に現れるまるで水でできた矛。それが段々と膨らんでいく。
バギュゥン!
『大、爆発がおきたぁ!!』
前方を襲う強烈な水の爆発。これを喰らえば一溜りもないだろう。
ルイレンの目の前には誰もいなくなっていた。
『勝者はルイレ――』
「危なかった。"潜る"が遅けりゃあ、もう少しで直撃する所じゃった。犬がやられてしもうたな。やり返すのみ!」
『桃太郎。"潜る"の能力で攻撃を回避していたぁ!』
刀を投げる桃太郎。
それを避けるルイレン。
彼の背後で猿が刀をキャッチ。そのまま切り裂きに行く。
後ろを見て、七支刀を振り回し、刀を空高くに飛ばした。
猿は背中につけた如意棒を手に取って攻撃を加える。
【戻れ!】
空に飛んだ刀が桃太郎の手元へと戻った。
如意棒を避けた所に刀が襲う。
何とかそれを避けるも……突撃してきた雉にぶつかり、ダメージを受けて横に軽く飛ばされた。
『これが桃太郎将軍の、コンビネーションアタァックだぁ!!』
桃太郎に猿に雉。犬がやられても、相当な強さを誇っている。
戦闘【ルーレット!】
どこからともなく現れたルーレット。ボールがポケットの中へと入る。二人に靄がかかる。
赤の三十――。その効果は……ジャンプ不可。
苦い表情を浮かべた桃太郎が、少しだけしゃがんだ。そして、ポーズを取る。
「残念……。俺が一枚上手……。」
"日使用――時空の日輪"
瞬間移動。パッと桃太郎の後ろに現れるルイレンは回転しながら斬りに行く。
如意棒が伸びて桃太郎を襲った。
その如意棒攻撃で吹き飛ばされた彼は、ルイレンの振るう刀攻撃は当たることなく終えた。
ルイレンは地面に七支刀を突き刺す。
"土使用――大地の土太刀"
地面から土の刀がまるで棘の如く突き刺すように辺り一面に現れた。猿はその土の刀に貫かれて消えた。
桃太郎は雉に空へと運ばれて何とか助かっていた。しかし、空高くは飛べないようで、棘ギリギリの所を飛んでいた。
土の刀が三本伸び始めた。それらが桃太郎を襲いに行く。
「やべーな。こりゃあ。」
雉に掴みながら、壁を伝って走っていく。伸びてくる土の刀を走りながら避けていく。
そして、土の刀の側面を器用に足の踏み場にして、跳んで進む。
【燃えろ!】
ある程度距離をつめて、燃える刀を投げた。
それを避けるために後ろに跳んで逃げるルイレン。それと同時に土の刀は全て消えた。
七支刀の横についていた刃が消えていた。ルイレンの使える刀の能力も残り一つという事だ。
『激しすぎる戦いも、もうすぐ決着かぁ!』
「そうだな。最後にしちゃるか。やいとー据えちゃる。」
ついに、桃太郎はポーズを取った。手で何やら鳥の形を作った。
【モンスター!】
雉に不思議な力が漲っていく。
巨大化する雉。禍々しいオーラを放っている。
「行くぞっ!」
雉に掴まれた桃太郎。雉は空を早く飛ぶ。壁の周りを飛ぶも残像しか見えない。
今度は空高くへと飛んでいった。
「喰らえっ!」
雉と共に桃太郎が真下へと落下していく。
"金使用――宝玉の金刀"
金色に光る巨大な大太刀へと変貌する七支刀。それが頭上の雉と桃太郎を斬り裂きに行く。
「俺の……勝ち。」
斬り裂かれ消えていく雉と桃太郎。
「悔しいが……負けじゃな。」
雉も桃太郎も、消えていった。
『ついに決着っ! この激しい戦いを制したのは永久の町の主忍、ルイレンだぁ!!』
あれほど激しい戦いをしていたと言うのに、フィールドに立つルイレンはボーっとしている。
この圧倒的な強さの戦いを見せられ、その次が私だと思うと、戦慄する。
試合は明日――。
「けど、負けられないよね。」
「大丈夫っす。根性があれば何とかなるっすよ。」
私はモニターを眺めていた。
◆
大会二日目――
準決勝の日。




